村上春樹『風の歌を聴け』

村上春樹の作品を読むのは、これが初めてだ。

『ノルウェイの森』『海辺のカフカ』といった有名どころではなく、この本を読むことにしたのは、20代の約10年間を日記風に綴った村上春樹本人が投影されている作品と聞いて、興味を持ったから。かの文豪はどんな20代を過ごしたのだろう。あと半分近くある20代を生きる上でヒントになるかも。そんな気持ちで手に取った。


感想は、一言で言うと、お洒落で伏線回収がすっきり。

語り口はどこかノスタルジックで、ウィットに富んでいる。気軽な日常の中で見え隠れする同世代の死が印象的だった。

伏線については、読んでのお楽しみ。秘密にしておこう。

主人公の「ぼく」が彼女らの死をどう考えたかははっきり書かれていないけれど、生きたり、死んだりということはささやかなことで、そういう巡り合わせを繰り返しながら時間は過ぎていく。躰を通り過ぎていく出来事の数々こそが「風」であり、リズムを持っている。そのリズムが人生の彩りで、それに耳を傾けて生きようというメッセージだと感じた。

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