拡張家族(chosen family)との日々 ー続・100人で子育てをすることにしました。
こんにちは。
岸 志帆莉です。
以前、「100人で子育てをすることにしました。」という記事を公開しました。
とても多くの方にご覧いただき、感想や激励のお言葉をいただきました。
あれから約8ヶ月が経ち、私たち家族の状況も少しずつ変わってきました。今日はご報告も兼ねて、その後の日々をつづりたいと思います。
100人で子育てをすることにしたわけ
そもそも100人で子育てをすることにしたのは夫の転勤がきっかけでした。昨年4月に夫が海外へ赴任し、3歳と0歳の息子たちをひとりで育てる日々がはじまりました。それは控えめにいっても壮絶な日々でした。毎秒ごとに散らかる部屋、エンドレスに発生する家事。日中は子育て、夜は授乳、すきま時間に仕事の原稿……。まともに睡眠もとれない日々のなか、疲労が蓄積していき、体にも影響が出てくるようになりました。
「このままでは、母子三人で共倒れしてしまう……」
そんな危機感から、少しずつ周りを頼りはじめてみることにしました。
100人での子育てへの道のり
まずは体の負担を軽減するため、家事を頼ってみることにしました。家事代行サービスを活用し、多いときは週に一度のペースで掃除や洗濯等をお願いしました。結果、体の負担が軽減されただけでなく、素敵なサポーターさんたちとの出会いにより心に潤いが戻りはじめました。
また子育ての不安や孤独を解消すべく、地域とのつながりを深めていきました。幼稚園の保護者さんたちと積極的に交流したり、児童館や子育て支援センターに通ったり。町内会や地域のイベントにも積極的に参加しました。そうするうちに顔見知りが増え、街を歩けば必ず誰かが声をかけてくれるようになりました。
夏休みには少し遠出して旅行へも行きました。千葉・館山にあるLiving AnywhereCommons(LAC)というシェアレジデンスに宿泊し、他の宿泊者の方々と交流してきました。親子のすてきな夏の思い出ができました。
さらにとにかく家に人を招くようにしました。義母や友人はもちろん、ベビーシッターさんや見守りボランティアさんなど、たくさんの方々に来ていただきました。子育ての負担軽減という意味合いもありますが、なにより私自身の孤独が緩和されたのが貴重なことでした。
そんなある日ふと振り返ると、これまでお世話になった方の数が100人を超えていることに気づきました。その道のりを振り返り、感謝と備忘録を兼ねて書き残したのが冒頭の記事です。
100人で子育てをしてみてよかったこと
約一年ほど100人で子育てをしてみて、よかったことはたくさんあります。心と体の負担軽減はもちろん、一生ものの出会いや思い出ができました。「将来あんな風になりたい」と思える素敵な方々が地域にたくさんできました。なにより子どもがすごく楽しそうでした。長男が毎朝ニヤニヤしながら「今日は誰が来るの~?」と尋ねてくるのが日課になりました。
それらのよかったことを振り返ると、次の3つに集約されました。
・「拡張家族(chosen family)」と出会えた
まず、新しい家族の形を模索できたのは私にとって大きなことでした。人々の生き方が多様化するにつれ、家族のあり方も多様化しているように感じます。最近、「拡張家族」とか「chosen family(自分で選んだ家族)」という言葉が聞かれます。Chosen familyとはもともとLGBTの方々の間で育まれてきた文化で、血縁や法的な関係はなくとも、絆をもとに支え合いながら暮らす人々のことだそうです。つまり自ら選んだ人たち同士でつくる新しい「家族」のかたちです。
この一年を通して、自分の行動ひとつで「家族」を増やしていけることを知りました。この一年間に岸家の子育てを支えてくださった皆さまは、すべて私にとってのchosen familyです。
・親子にとって宝物となる出会いや思い出ができた
Chosen familyとの日々は、私たち親子にとってかけがえのない時間となりました。見守りボランティアさんと一緒に児童館に遊びに行ったこと。家事サポーターさんが息子と遊んでくださったこと。クリーニング店のおじさんがいつも子どもたちの手を握ってくれたこと……。ささやかな日々の思い出ですが、私のなかでひだまりのような記憶となり、ずっと残っていく気がしています。子どもたちにとってもそうであればいいなと思います。
・この街が大好きになった
もともと好きで住みはじめた街ですが、chosen familyとの出会いにより心から愛着を持てる場所になりました。街を歩けば必ず知った顔に出会えて、他愛もない言葉を交わせること。子どもたちを気にかけてくれる人がいること。本当に貴重でありがたいことだと感じます。
知り合いが増えるにつれ、馴染みの場所も増えていきました。あれはA君パパの居酒屋さん、あそこはB君ママのお弁当屋さん、あそこはCちゃんのおじいちゃんの楽器屋さん……。街のいたるところに馴染みの場所ができて、この街への愛がさらに深まりました。生まれ故郷に加え、心のふるさとができたような感覚です。家族だけでなく故郷も自分で作れるということを知りました。
100人で子育てをしてみて難しかったこと
一方、100人で子育てをしてみて難しかったことも多少あります。良かったことに比べたら本当に一握りですが、ご参考までに書き残しておきます。
まずたくさんの方々に関わっていただくので、スケジュール管理には注意が必要です。私は毎週のように来客や外出の予定を入れていたので、それらを間違いなく管理するには工夫や慣れが必要でした。一度家事サポーターさんの来訪日を間違えて予定に入れていてヒヤッとしたこともあります。マッチングサービスのなかにはアポイントメント管理やリマインダー機能がついているものもあるので、そういうサービスを活用するのもいいかもしれません。
また、いい意味でプライベートは少なくなります。とくに日中は人の出入りが多く、シェアハウスみたいな感じになっていきます。私は過去に本物のシェアハウスに暮らしていたことがあるので抵抗はありませんでしたが、人によってはストレスを感じるかもしれません。ただ夜は家族だけなので、しっかりとプライベートを確保できます。さらにシェアハウスと違って自分の家なので、人の出入りもすべて自分自身でコントロールできます。自分たちが心地よいと思える範囲で無理なくやっていくのがおすすめです。あと人の出入りがある以上、セキュリティ対策はしっかり取る必要があります。
100人→150人で子育てをすることにしました
ちなみに100人で子育てをするなかで、ひとつの興味深い説と出会いました。オックスフォード大学のロビン・ダンバー教授によれば、人間は最大150人くらいまでなら安定した社会を築けるとのこと。これが事実なら、私のchosen familyも150人まで拡大できるのだろうか?という仮説が湧いてきました。もちろん人数が多ければいいというものではありません。でも子育て世代の孤立が問題化するなかで、ひとつの限界に挑戦することでなにかの希望が生まれるかもしれない。そんな思いから密かに「150人による子育てチャレンジ」を行ってきました。
結果、150人での子育てを無事達成することができたので、ここにご報告します。そして感謝と敬意を込めて、岸家の子育てに関わってくださった皆さまを改めてここに挙げさせていただきます。
これまで岸家の子育てに関わってくださった皆さま(順不同)
●長男の幼稚園の先生方
●長男の幼稚園の保護者の皆さま
●長男が二歳まで通った保育園の先生方
●近所の子育て支援センターの皆さま
●近所の児童館の皆さま
●ホームスタートこうとうのコーディネーターの皆さま、およびビジターのKさん
●江東区こどもプラザの皆さま
●タスカジのYさん
●ポピンズシッターのMさん
●カナリア諸島出身のベビーシッターのCさん
●江東区シルバー人材センターのKさん
●銀座三越キッズスクウェアの皆さま
●マンションの管理人さん
●同じマンションに住むHさん(+ワンちゃん2匹)
●マンションの上階に住むEさん
●近所のクリーニング店のおじさん
●近所の公衆トイレのお掃除のおじさん
●近所の八百屋の皆さん
●木場公園プレーパークの皆さま
●近所の子ども食堂の皆さま
●元ルームメイトの親友まゆみちゃん
●インド人の親友Swapna
●LivingAnywhere Commons館山で出会った皆さま
●ママズスマイル月島の皆さま
●近所の小児科の先生と看護師さん
●近所の床屋のおじさん
●近所のコンビニの皆さま
●フィリピン出身ハウスキーパーのAさん
●KOTOハッピー子育てトレーニングの先生方および受講生仲間の皆さま
●おいしい料理を作りに来てくれた友人のKちゃん
●地域の郵便配達員さん
●Eテレ「おかあさんといっしょ」のお兄さんお姉さんたち、サボさん、ワンワン、コッシーetc…
●いつも遠くから支えてくれている友人たち
●夫、祖父母、義弟、その他親戚……
これだけ多くのすてきな出会いに恵まれ、感謝の気持ちで胸がいっぱいです。普段支えてくださっている皆さま、そしてこの記事を読んでくださる皆さまに、この場を借りて深く御礼申し上げます。
Chosen familyのおかげで、嵐のような日々の中でもなんとか希望を保つことができました。すばらしい出会いに恵まれた奇跡の連続のような一年を、私は生涯忘れません。本当にありがとうございました。
今後の展望
Chosen familyの皆さまへの感謝を胸に、この春住み慣れた東京を離れ、中国へやってきました。これからしばらくここ中国で暮らしていくことになります。
いま思うことは、日本で出会ったchosen familyとの絆をこれからもずっと大切にしたいということ。そして新たな地でも、また新たなchosen familyを築いていきたいということです。14億人が暮らすこの大陸のどこかに、まだ見ぬ100人のchosen familyがいるはずだと思っています。それらの人々との出会いを求め、また一歩ずつ踏み出していきます。
これを読んでくださっている方のなかにも、子育てに不安や孤独を感じる方がいるかもしれません。しかし以前もお伝えしたとおり、いまあなたを支えている人の数が少なかったとしても、まったく問題ではありません。それはむしろ希望です。この先、それだけ多くのすてきな出会いがきっとあなたを待っているということですから。あなたの心だけは決してひとりにしないでください。
皆さまにも、多くのすてきなchosen familyとの出会いがありますように。
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