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江國香織「こうばしい日々」

最近読んだ本の中で、ほっこりとする本です。

江國香織さんの世界観はずっと好きで、
読んでいてあたたかな気持ちになる。
でもそれはハッピーエンドだからとかではなくて、
主人公たちの言葉で綴られた世界観だからなのだと思います。

押し付けるのではなくて、
そっとそこにあるような。
窓から入ってくる日差しのような、そんな感じです。

今回のこの本に収録されている「こうばしい日々」も「綿菓子」もどちらも好き。
2作品とも、少年、少女から見える澄んだ世界観と、でも彼ら彼女らたちも感じるほろ苦い感情が描かれている。

そして彼らの周りにいる登場人物たちも魅力的です。私が好きなのは、綿菓子に出てくる次の台詞。
主人公の女の子のおばあちゃんの台詞です。

「人はね、誰かに愛されたら、その愛に報いるだけの生き方をしなくちゃいけないのよ」
江國香織「綿菓子」新潮文庫133頁

今、自分の周りにいてくれる人たちの顔がちらほら浮かんでは、その人たちからの愛を改めて刻むように、このページをめくりました。

幼少期や思春期特有の、世の中に対する純粋な疑問は勝手に自分で消してしまう気がします。順応しないと!と思い込んでしまって、
生きていて窮屈。
でもこの本を読んでいると、
「そうそう、そんなことを疑問に思っていたんだよね」って感じました。

心にじんわりと沁み込んでいく、素敵な台詞が、この本にはいくつも散りばめられています。
ささやかな、ギフトのような一冊。
冬の寒い中で、温かい飲み物や美味しいお菓子をお供にして読んでみてほしいです。

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