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←前回/0.波多君 1.再会 九月のはじめ、大学前通りに面した居酒屋うまし家の店内は、深…
2.酔っぱらい きのう、九月に入って最初の定休日。 七月にオープンしたばかりの姉妹店、…
3.で?「した」 彩夏のアパートでシングルベッドの両端にそれぞれもたれ、缶ビール片手にく…
4.家の中は 十月になり、学校が始まった。 大学祭に向けて学生の集団があちこちにたむろし…
5.夕風に揺れる 「出かけてくるね」 裏庭に向かって声をかけると、父と目が合った。 「い…
6.アイスクリームはキープで コンビニでガリガリ君とハーゲンダッツを買い、ヒロセさんの車に乗りこんだ。 ココナッツの香り。なんとなく、気持ちが夏に引き戻される。 「アイス、いっぱい買いましたね」 「ああ、うん。実はさ、千尋ちゃん」 なぜかヒロセさんの声は申し訳なさそうで、わたしは不思議に思って首をかしげた。 「店長、来てるんだよね、今。ついでに、奏とボーズも」 ヒロセさんは言いにくそうに頭をかいた。 「そうなんですか」わたしの落胆は声にあらわれる。 「
7.愛は痛いもんだ 店長と一緒にヒロセさんのマンションを出て、そっとスマホを確認すると、…
8.友達とかプライバシーとか 彩夏の部屋にいた”友達”は、切れ長の目をした、中性的な顔つ…
9.離婚届は 「圭、何時に出る?」 「何時でも」 圭はのそっと立ち上がり、緩慢な動作で身…
10.学祭前夜に 十月、最後の金曜日。街路樹はすでに色づきはじめていた。 近づく冬から逃…
11.左手の傷を隠す 深夜の国道を、海岸に向かって車を走らせた。大学からほど近い場所で、彩…
12.そんな時代じゃないから 大学祭一日目。 目を覚ますと、外は気持のよい秋晴れだった。…
13.アウティング? 大学の正門に着いたときには、どんよりした雲が空一面に広がっていた。 スマホを見るとまだ約束まで三十分ほど時間がある。仕方なく一人でブラブラしようと考えていたら、後ろから「千尋ちゃん」と呼ばれた。 「……美月さん?」 「なに?」 「雰囲気違うから」 「そうね」と彼女は微笑んだ。 いつもは黒髪をゴムで束ね、グレーのパンツに白シャツ、ニットカーディガン。目の前の美月さんはカラフルな刺繍がされたブラウスに、大胆な配色のロングスカートをはいていた