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兄が脳幹出血で倒れてからの日記

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高血圧の人は今すぐ通院してほしい
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#家族

2022.06.09/賽の河原

2022.06.09/賽の河原

知人の展示を観に湯河原へ向かった。物心ついてから湯河原へ初めて行ったのは、数年前に兄が仕事で作業中に、高いところから川へ落ちて湯河原の病院へ入院したときだった。お見舞いがてら遊びに行ったことも数回あるが、なぜかうまく遊べず楽しめなかった。それからずっと足が遠のいていた。

そのときの兄は幸い命に別状はなく、両足首の骨の複雑骨折で済んだ。相当痛かっただろうし、打ち所が悪ければ死んでいたし、しばらく歩

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2022.05.19/残り香

2022.05.19/残り香

昨晩の病室での母の言葉を思い出す。

「ほんとうは私たちが死ぬのが先なのよ」
「代われるものなら代わってやりたい」
「私たちのために意識がなくなってもがんばって生きてくれた」
「やさしい子だった」
「何が好きとか、具合が悪いとか、何にも言わないんだもんあの子」
「まだ魂だけでも、そこにいてくれてたりしないかなぁ」

息を引き取る直前の兄を見たとき、また一回り小さくなっていた。本当はこんな骨格をして

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2022.05.12/生きるって言い切る、尚も

2022.05.12/生きるって言い切る、尚も

深夜3時過ぎ。感覚としては11日の夜だ。突然母に起こされる。「病院から電話があったから、すぐ準備して行こう」。いよいよ来てしまったのか、と身構えながら淡々と着替える。もう何回目か分からないが、家族3人で車に乗り込みZ病院へと向かった。

病棟の警備のおじさんが「本当は、面会は1人か2人までなんだけど……」と言いながら3人で手続きを通してくれる。兄は緊急入院の数日後、ICU(集中治療室)からHCU(

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2022.05.03/きっとここから愛なんだ

2022.05.03/きっとここから愛なんだ

朝、なかなか起きれず五度寝明け、アラームのスヌーズに叩き起こされる。今日は自分のスマホから鳴る音だ。時刻は9時。ありがたいことに、今日は在宅勤務にしてもらった。

出勤の打刻前に母が部屋に訪ねてくる。父と私、それぞれにいちいち連絡するのがダルいから、LINEグループを作ってほしいのだという。ここにきて初めて、家族のグループLINEができた。人数は3人。「何か送ってみて」と母が言うので、苗字のスタン

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2022.05.02/僕らはボーナスで生きている

2022.05.02/僕らはボーナスで生きている

朝5時。兄のスマホのアラーム機能が鳴る。「ピピピピピ」という控えめな電子音に、「こんなんで毎朝起きれるのか」と心配になる。本人は高血圧なので早起きが辛くない、らしい。(あくまで家族内の憶測で本人から聞いたことはない) 私はむしろ低血圧なので、早起きが苦痛でしょうがない。その点については、羨ましいことこの上ない。

5時半。再び兄のスマホが鳴る。スヌーズ機能だ。暗証番号がわからず、とりあえずいろんな

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