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誰かの記憶の中の自分

日曜日の昼下がり。
昼ごはんは夫の作ってくれたトマトパスタだった。満腹になった夫は、寝室で昼寝をしている。私は眠くないのでリビングで過ごしている。

ひと月以上、体調が優れない。
夕方になると毎日、37度少しの微熱が出て、体が火照り、だるくて動けなくなる。バイトに出勤できないことが続き、店長に相談して、今月いっぱいは休むことになった。来月の収入が少なくなるので不安だ。

暑かったり寒かったりで、自律神経がおかしくなっているのだろうなと思う。調子が悪いので、普段は三週間に一度ほどのメンタルクリニックに毎週通っている。いろいろな薬が出ているが、あまり良くならない。

秋は毎年体や心のバランスを崩すので、そんなに気にしてはいないけれど、バイトに行けないのは普通に困るし、二ヶ月近く毎日体調が悪いのは不便なことである。

高円寺にアール座読書館というカフェがあり、そこは静かで、一人で使える机と椅子があり、飲み物の種類が豊富で、居心地がいい。
心身の具合の悪いときはいつもアール座に行きたいなと思うのだが、具合が悪いゆえに、電車に乗って高円寺まで行くことができない。ままならないものだ。

私の体調が悪いことを知った友達が、「しんどいときはゲームで異世界転生するに限るぞ」と言って、ポケモンLEGENSアルセウスを貸してくれた。Switchのゲームソフトである。ここ数日は暇があればそれをプレイしている。楽しい。没頭できる。体調が悪いのも忘れられる。

アルセウスは四年前、ちょうど私が声優養成所の体験コースに通っていた頃に発売されたゲームだ。その頃よく話していた養成所のクラスメイトが「アルセウス楽しすぎる、声の練習全然できてない」と言っていたのを覚えている。
私が、ポケモンはダイヤモンド(小学生の頃のDSソフトである)しかやったことがないと言うと、「アルセウスはダイパ(ダイヤモンド・パール)世代のポケモンが出てくるから楽しいと思うよ!」と言われた。

私はその後養成所を辞めてしまったので、彼とはもう連絡を取っていないし、どこで何をしているのかもまったく知らない。まさか今になって、そのとき話題に上ったゲームをプレイすることになるとは思わなかった。

もう連絡を取っていない、何年も会っていない、名前も思い出せない人との詳細な記憶をこんなふうに思い出したとき、私も誰かの記憶の中で、ふとしたときに思い出されているのだろうかと、なんとなく不思議に思う。
四年前どころか、小学校や幼稚園の頃のことまで思い出すこともあるのだから、きっと私の覚えてもいない記憶が、誰かの頭の中にあるのだろう。
できれば、あまり恥ずかしい内容でないといいなと思ったりする。

今までの数々の人間関係の失敗はなくならないけれど、いま仲の良い人、これから出会う人が、後々に思い出してくれる自分との記憶が、少しでも楽しいもの、良いもの、明るいものであればいいなと、そんなことを思う。

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