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「利益」とは売上-費用なのか? #会社という迷宮

ども、しのジャッキーです。企業内新規事業担当者のコミュニティー「IntraStar(イントラスター)」のオンライン忘年会2022で、某氏から教えてもらった書籍が経営企画の端っこのほうで仕事している身として、かなーり刺さるものだったので、少しずつ気づきを言語化したいと思います。

「会社」観や「経営」観の矮小化

著者である石井 光太郎氏は、1986年に経営コンサルティング会社、コーポレイトディレクション(CDI)の設立参画以降、30年以上にわたって、経営にかかわるコンサルティングに従事してきた中で、感じていたことを緒言の中でこのように語っています。

「会社」観や「経営」観というものが酷く陳腐に矮小化されてしまいつつある現代においては、経営者自身の脳内において、自ら自分のあり方を委縮させているように、私には見えて仕方ない。しからば、私がクライアントから学ばせていただいてきた「会社」という存在の人間的・社会的な重さと肥沃な可能性、「経営」の地に足がついた奥行きの深さを伝えることは、現代そして、これからの経営者の方々にとって、意味なきことではないだろう。
~中略~
「会社」観や「経営」観の矮小化に加担し続けてきたコンサルタントにとって、それは責務であろうと思っている。

会社という迷宮/石井 光太郎」より

私は、著者がとらえる『「会社」観や「経営」観の矮小化』とはどのようなものなのか、非常に興味がわきました。そして、実際に、読みまさに迷宮に入り込んだような気持ちになりました。それと同時に、確かにそうだ、と思う部分も同様に、たくさんありました。

「迷宮」の経営辞典

本書の構成は、『「迷宮」の経営辞典』という形をとっています。以下の14の聞きなれたビジネス用語の本質を著者が解説していきます。

  1. 戦略 →こちらの記事をご参照

  2. 市場 →こちらの記事をご参照

  3. 価値 →こちらの記事をご参照

  4. 利益 →本記事はここです

  5. 成長

  6. 会社

  7. 統治

  8. 組織

  9. 改革

  10. M&A

  11. 開発

  12. 人材

  13. コンサルタント

  14. 信義

そして、最後に、永岡英則氏の解説がある。著者と同じCDIに所属したことがある一方で、事業者側でCFOとしてIPOや、大手企業とのお経営統合や代表取締役などまさに、本書でエールを送る経営者側の立場としての本書をどのように受け止めたのかが書かれており、これまた読み応えがありました。

「迷宮」の経営辞典4:利益

今回の記事では、本書で4番目にあげられているのが「利益」についてです。以下抜粋します。

自社がただの利益創出装置になっていないか、~中略~自社固有の「価値」を創り出すための自身の意志と構想が空虚になっていないかを自問しなければならない、それをすっ飛ばしてしまっては、一時的「利得」は得られても、「利益」はもたらされることはない。

本項目では、一つ前に挙げた「価値」で、「価値とは本来、主観的なものである」とつながった内容となっています。

売上-費用=利益なのか?

売上-費用=利益

という当たり前の式に疑問を呈するところから本項目は始まります。この式自体は当たり前だが、本来その会社が世の中に提供し貢献する価値、それを創り出そうとする意志が会社の原点であり、それが認められること、つまり「売上」が立つことが会社の第一義的「価値」であって、その事業の存在意義である。

それがはっきりとしていないままだと、どうなるか。著者は以下のように表現しています。

どこに向かって走っているかも忘れてただひたすら走る、ドッグレースのようなものである。そういう経営者の眼前には、数値目標としての「利益」が、「馬ニンジン」の如く吊るされる

個人に当てはめてみても、なんのために仕事をして、お給料をもらっているのか。考えさせられてしまいます。

意志なくば、競争相手との相対的位置関係だけ

また、競争に関しても以下のように記載をしてます。

もし、会社が自ら航海の行き先と定める独自の「価値」をもたないならば、航海の羅針盤は競争相手との相対的位置関係だけになる。
~中略~
本来は異なる目標、異なる「価値」をめざす存在であるから、参考にして学ぶ意味があるのは、やり方であって、目指す場所ではない。

この文章を読んでいて、受験のことを思ってしまいました。自分の偏差値をもとにどのあたりの学校ならいけそうか、と学校の偏差値リストとにらめっこしているのは、まさに相対的な位置関係だけを見ているようだったな、、、と。本来は、自分がどういう人間になりたいのか、どんな「価値」を生み出したいのか、それがあって、受験が必要なのか、必要だとして、どのような学校や先生に学ぶことが有益なのか、を考えるのがよいのだろうと思いました。中学受験生を持つ親としても考えさせられました。

「利益」は結果

本来、利益とは、何かをなしたことに対してもたらされる「恵み」ではないのか?という投げかけがあって、ドキっとしました。

ここ2-3の間、環境ビジネスを一つのテーマとして業務に従事しています。特に、この1年、私が特に注目しているテーマがネイチャー・ポジティブという概念です。2019年にG7で採択された「2030年自然協約」で「2030年までに自然の損失を反転させてネイチャーポジティブにする」という内容が採択されています。

人間を含む生物が生存していくための「恵み(生態系サービスといいます)」を生み出す自然資本が損なわれ続けているという問題を解決することが、カーボンニュートラル(脱炭素)と同様に喫緊の課題となっているのだ、ということが、以下にWWFのサイトにある「生物多様性の経済学:ダスグプタレビュー」を読んで衝撃を受けました。

日本語版 生物多様性の経済学:ダスグプタレビュー要約版より

ESG投資と利益

ダスグプタレビューの中に、以下の地球を自然資本をストックしている器とみたてた印象的な絵があります。

日本語版 生物多様性の経済学:ダスグプタレビュー要約版より

「売上-費用=利益」で、自然がタダで提供してくれている価値に代償を支払わないで、短期的な利得を追求してきた株主資本主義は、生物圏の再生力を損ね続け、さらに、自然資本を非効率に使い続ける経済システムを推進してしまってきていた、ということなのだと思いました。

まさに、利益ではなく、利得を追い求める相対的な競争を続けてきた人間の経済システムは、気候変動異常気象という結果を突き付けられているという構図なのでしょう。

だからこそ世界は、環境・社会・ガバナンスを意識したESG投資を推進していますし、株主資本主義から関係者を広げたステークホルダー資本主義へと進化しようとしています。

ESGについては、以下に、アナン元国連事務総長のすごさと世界の歴史のドラマに感動したことを、まとめてみたので、ご参照ください。PRI(責任投資原則)やESGってそういうことだったのかー!ってなりました。

ステークホルダー資本主義と、CSV(Creating Shared Value)についての以下の記事も参考になるかもしれません。

ネイチャーポジティブ経営

2022年12月には、生物多様性のCOP15で気候変動におけるパリ協定に値するといわれる昆明・モントリオール生物多様性枠組の採択、2023年3月末、日本では、これに連動して、10年ちょっとぶりで生物多様性国家戦略が改訂され、2023年9月末には、企業への情報開示のフレームワークをTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)がリリースする予定となっています。

ネイチャーポジティブに関する最新の情報は、2023年4月14日に発刊された以下の書籍が非常に勉強になりました。

ちなみに、情報古いが、2022年3月に、勉強していたころに、私がまとめた記事も載せておきます。

おわりに

今回は、「会社という迷宮/石井 光太郎」から「利益」についての、個人的なもやもやの言語化を試みました。

以下の新任マネージャーの心得というマガジンにこういった記事をまとめているので、もしよかったらのぞいてみてください。本記事への「スキ」やアカウントのフォローをしてもらえると励みになります!

以上「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie

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