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「戦略」とは人間臭いものではないのか? #会社という迷宮

ども、しのジャッキーです。企業内新規事業担当者のコミュニティー「IntraStar(イントラスター)」のオンライン忘年会で、某氏から教えてもらった書籍が経営企画の端っこのほうで仕事している身として、かなーり刺さるものだったので、少しずつ気づきを言語化したいと思います。

「会社」観や「経営」観の矮小化

著者である石井 光太郎氏は、1986年に経営コンサルティング会社、コーポレイトディレクション(CDI)の設立参画以降、30年以上にわたって、経営にかかわるコンサルティングに従事してきた中で、感じていたことを緒言の中でこのように語っています。

「会社」観や「経営」観というものが酷く陳腐に矮小化されてしまいつつある現代においては、経営者自身の脳内において、自ら自分のあり方を委縮させているように、私には見えて仕方ない。しからば、私がクライアントから学ばせていただいてきた「会社」という存在の人間的・社会的な重さと肥沃な可能性、「経営」の地に足がついた奥行きの深さを伝えることは、現代そして、これからの経営者の方々にとって、意味なきことではないだろう。
~中略~
「会社」観や「経営」観の矮小化に加担し続けてきたコンサルタントにとって、それは責務であろうと思っている。

会社という迷宮/石井 光太郎」より

私は、著者がとらえる『「会社」観や「経営」観の矮小化』とはどのようなものなのか、非常に興味がわきました。そして、実際に、読みまさに迷宮に入り込んだような気持ちになりました。それと同時に、確かにそうだ、と思う部分も同様に、たくさんありました。

「迷宮」の経営辞典

本書の構成は、『「迷宮」の経営辞典』という形をとっています。以下の14の聞きなれたビジネス用語の本質を著者が解説していきます。

  1. 戦略

  2. 市場

  3. 価値

  4. 利益

  5. 成長

  6. 会社

  7. 統治

  8. 組織

  9. 改革

  10. M&A

  11. 開発

  12. 人材

  13. コンサルタント

  14. 信義

そして、最後に、永岡英則氏の解説がある。著者と同じCDIに所属したことがある一方で、事業者側でCFOとしてIPOや、大手企業とのお経営統合や代表取締役などまさに、本書でエールを送る経営者側の立場としての本書をどのように受け止めたのかが書かれており、これまた読み応えがありました。

「迷宮」の経営辞典1:戦略

今回の記事では、本書で1番最初にあげられる「戦略」について、私に突き刺さったのが以下です。

極論すれば「戦略」とは、そもそも説明できないものなのである。説明できないからこそ(わかりにくいからこそ)「戦略」であるといってもよい。わかりやすい「戦略」などというのは、言語矛盾なのである。

会社という迷宮/石井 光太郎」より

ズキューン!

よく、戦略をわかりやすく、と。もっとシンプルにと、言われる。本当にそうだろうか?といつも思っていた。戦略とは、複雑なものを組織が深く理解し、行動できるようになったときに発揮されるものではないのか?ともやもやと思っていた。

ズバっと言い当てられたような感じがして、元気が出てきました。

殴り書きのもつパワー

前提知識がなくてもわかるように説明してくれ、と言われることもある。これは、経営層に言われるというよりも、その前段のシーンで求められることが多い。専門的なレベルでの知識がなくても理解できるような浅いレイヤーの戦略に矮小化してどうするのか、と思う。

それでも、シンプルに表現できるまで、贅肉をそぎ落とす過程を通して、確かに、戦略がシャープになっていく、と感じる部分もあった。一方で、そこでそぎ落とされていったものは本当に贅肉だったのだろうか?と思うこともあった。

新事業開発の仕事につきたてのころに、師匠から言われた言葉で、今も心に残っているいくつかの中に、以下がある。

ホワイトボードに殴り書きしたものが、きれいなスライドにしちゃうと消えてなくなってしまうものがたくさんある。熱気やパワーがなくなるんだよ。

戦略をシンプルなものにそぎ落とされてしまうものは、熱気やパワーなのではないかと思います。それは、なんとも言えないのですが、人間臭さなのだと思います。もしくは獣臭さなのかもしれません。

一見して非合理

書籍「ストーリーとしての競争戦略/楠木 建」の中で、優れた戦略とはストーリーがあるが、それは最初から完成されたものがあるわけではないとし、長期的に優位性が持続するストーリーには「一見して非合理」に見える部分があるとしています。

ちなみに、経営理論では、この一見して非合理はRBV(リソース・ベースト・ビュー)ということを気づいてハッとして書いた記事が以下です。ポイントは、模倣困難性を高める多層的強化ループです。

それは、戦略コンセプトと戦略ストーリーの原型をもとに、どうにかこれを現実のものとしたいという「想い」が一見して非合理なつながりを生み出し、強いストーリーを作り出していくと、私は理解しました。

パーパスで組織が一体になっている状態

ちょっと話が飛んでしまうかもしれないのですが、経営というのはパーパスで組織が一体になっている状態を作り出す、ということなのではないか、と思いました。

昨年(2022年)、「ワイズ・カンパニー/野中 郁次郎、竹内 弘高」という書籍ととことん向き合いました。組織の知識創造とは、文脈・目的・価値観(善)のようなもやもやとしたものに沿った行動の積み重ねで創造されるといいます。それを理論化したものがSECIモデルです。

なんとも言語化が難しいんだけど、こうしたい、という「想い」が組織の中で共有され(共同化)され、それを繰り返すうちに、だんだん上手に言語化できるようになり(表出化)され、それらがつながりだして体系化される(連結化)。そして、それらをさらに実践を続けると、さらに工夫をしだして、高みに上がっていく(内面化)。

このSECIモデルのサイクリックなプロセスは、そのまま、「一見して非合理」をつなぎ合わせていくことなのだと思いました。この積み重ねが組織の知識として積み上げられワイズカンパニーになっていく。同時に、組織を超え、社会の公器となっていく、そういったことが上記の左側に描いた右肩上がりの矢印には込められているのだと思います。

志本経営

その矢印の向かう先や原動力は「文脈・目的・価値観(善)」です。これは、組織それぞれの独自のものであるはずです。この独自のものに沿った経営を行うことが、最近よく聞くようになったパーパス経営なのだと思います。

パーパス経営/名和 高司」の中で、パーパス経営のことを志本経営と呼ぶことを提唱されていました。「志」とは、士(さむらい)の心と書きます。それはとても人間臭いものなのではないでしょうか。

志本経営とESG, SDGs,CSVなどについて本概念に触れたときの気づきをまとめた記事が以下にあります、興味のある方はご参照ください。

おわりに

初回から、飛ばしすぎました。このペースでは、最後までいつたどり着けるんだろう。まぁ、いっか。今回は、「会社という迷宮/石井 光太郎」から「戦略」についての、個人的なもやもやの言語化を試みました。

極論すれば「戦略」とは、そもそも説明できないものなのである。説明できないからこそ(わかりにくいからこそ)「戦略」であるといってもよい。わかりやすい「戦略」などというのは、言語矛盾なのである。

会社という迷宮/石井 光太郎」より

以下の新任マネージャーの心得というマガジンにこういった記事をまとめているので、もしよかったらのぞいてみてください。本記事への「スキ」やアカウントのフォローをしてもらえると励みになります!

以上「形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標に更新していきます。よろしくお願いします。

しのジャッキーでした。
Twitter: shinojackie

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