テレカルディアスーパーデートと期限切れポートラVCのテストと魚屋のおやっさんとの思い出
子供の頃の愛用機で20年以上前に最後に使ったあとは納戸の奥で眠ってた35mmと70mmの二焦点切り替え式カメラ1987年製フジフィルム「テレカルディアスーパーデート」(Fujifilm Tele Cardia Super Date)を取り出して、5本だけ残してあった色味彩度が大好物の2010年に使用期限が切れたコダック・ポートラ400VC(Kodak Portra 400 VC expired 2010)とともにまだ使えるかまだ写るかを自宅周辺でテスト。
このフィルムは保管状態が良くなったからコダック正規ラボで現像時に+2段増感。ネガが上がってきたら本スキャンする前にまずはコンタクトを自宅で作成して「あの時」を俯瞰する、といういつものルーティーン開始。さぁ、どうかなぁ。
いやぁ、良い。
ちゃんと写ってた、そしてちゃんと動いてた。
このカメラは撮影後に巻き戻すのを忘れて「フタ開けて全コマ感光しちゃったよ。。」なんてミスが起きないようにしてくれる親切丁寧カメラ。
カメラにフィルムを装填するとパトローネからカメラ本体に一端最後まで自動で巻き上げてスタート。撮影するたびに自動でパトローネへ巻き戻してくれる。最終コマを撮影すると全てがパトローネに収まり完了。まぁ便利。
だから最後のコマ#36が11/9の最初の撮影、そして#2が翌11/10の最後の撮影という順序。この仕様のカメラは巻き上げ忘れのミスが起こらない代わりに感光済み部分も含めた最初の最初の「撮れたかどうだかお楽しみ!」なご褒美コマの「ゼロコマ」撮影ができないデメリットがある。これは「ゼロコマの会」??会長の自分としては、「つまらんカメラ」ということになっちゃう。
そして、なぜこの古いコンパクトフィルムカメラを取り出したかというと、#32〜#35に写る近所の「カメラ仲間」だった魚屋「魚七」のおやっさんにこのカメラを譲るため。まだちゃんと使えるかのテストだった。
「最近はもう昔のように大きなカメラや三脚を持って撮り歩けなくなったよ」というのを聞いて「それなら俺のカメラ上げるからさ、足腰のためにも散歩に出て、そのついでに昔のように好きなものを撮り続けてよ」と、このカメラ、予備電池、フィルム数本、そしてこのカメラで撮ったおやっさんの写真とついでにおやっさんが撮ってくれた自分の写真を一緒にプレゼント。
その後おやっさんに「カメラどう?」と聞くと、「ありがとう。でもズームのないシンプルなやつも欲しいなぁ」なんていうから、ジャスティン・ビーバーよりぜんぜんイケてる1982年製コニカ C35 MFD「ジャスピンスーパー」も納戸から取り出してプレゼント。「自分にはこれの方が似合ってるねぇ」なんて。このカメラいじってるとき、まぁニコニコしてたなぁ。
そしてこの撮影から1年とちょっと。
おやっさんは亡くなってしまった。
店の前を通るといつも「ちょっとおいで」と自分の財布ではなかなか買えない最高に旨い魚やしらすに明太子、そして「これはこども達に」とお菓子を手渡してくれた。悲しかったなぁ。おやっさんが長年愛用してた魚の干し台、流し台やまな板をお母さんから譲り受けて今でも大切に使ってます。ありがとう。
ちなみにこの「魚七」さんは、松坂慶子や朝丘雪路ら昭和の名女優が主演を務めた映画やドラマの舞台に何度も使われた鎌倉の名所・名店だった。最後にここを提供したのは我が家もちょっとだけ登場した2017年のNHKドラマ『ツバキ文具店 〜鎌倉代書屋物語〜』。主演は多部未華子さん、魚屋のお母さん役は大島蓉子さん、おやっさん役は江良潤さん。
またひとつ、鎌倉の歴史に幕が下りてしまった時だった。
この二つのカメラで何枚かは撮ってたみたい。手を合わせに行ったときお母さんに「現像出しに行こうか?」というと、「ありがとう。でもね、なんかまだできないのよ。なんとなくね。いづれ… ほんと、ありがとうね」と。
自分ではなく、カメラをぶら下げてるおやっさんの姿を心の中で見ながら話していたお母さんのあの時の表情が忘れられない。とても愛に溢れてた。
期限切れフィルムでの撮影
期限切れフィルムを使って撮影するときは、もちろん管理状態にもよるけど、期限が10年過ぎるごとに1段上げて撮影すればほぼ大丈夫。
例えば撮影時に「ここは適正露出1/250か、それなら一段明るく1/125で切っておこう」と肌感で毎回一段上げて撮影してもよし。でもまぁそれは面倒だから愛用するライカMPのような露出計内蔵カメラや、AE:自動露出機能が付いてるカメラなら、ISO感度400のフィルムの場合はそれより一段感度の低いISO200のフィルムを装填してると設定(ダイヤルを400→200など)しておけば、毎回「勝手に一段明るく撮影」してくれる。
そして本来より倍以上の明るさを取り込む事で感度の落ちてる期限切れフィルムでもほぼ適正の「像を得る」ことができる。もし数段上げて撮影することを忘れてしまってた場合は、現像時に「+1〜+2段増感処理してください」と頼めばまだ救えることも。
このポートラVCはかなり保存状態が悪かった気がしたから2段増感。そしてスキャンはフラットに、まず青紫に寄った色かぶりの原画からグレーを取って(ほぼ白とグレーと黒が出るようにカラーバランスを整える)から、いつも通り仕上げ、最後に、退色を補色するために、「自然な彩度」を強めに上げて暖色を戻す、そして「彩度」を若干だけあげることで緑系がパステル・ビビットにならない程度に全体が「本来の色濃度」まで復活する、という感じで完成。いつもどおり個々のコマ毎にちまちま補正したりせずに「撮ったまま」を楽しむ。
自由にいじれる今の時代だからこそ、これもある意味「フィルムの醍醐味」として楽しむ。これは、覆い焼きや焼き込みという暗室作業へのリスペクトも込めてデジタルでは「やり過ぎないように」という意味を込めて。
最後に、1987年製の富士フィルムのコンパクトカメラ「テレカルディアスーパーデート」と2010年に期限が切れたカラーネガフィルム「コダック・ポートラ400VC」で撮影したこのコンタクトシートから数点と、その時ファインダーをiPhoneで覗きながら取った動画を一緒に載せます。
標準と望遠レンズをサクッと切り替えてサクサクッと撮れる楽しいカメラ、中古で見つけたら是非お持ち帰りしてみて。
ということで。
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