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キャラクター語り:魔女メフレー【小説:Tristan le Roux/赤髪のトリスタン】

アレクサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)の未邦訳小説「Tristan le Roux/赤髪のトリスタン」を底本にしています。

あらすじ:
若く美しいカルナック城主オリヴィエは、従者トリスタンとともに狼に襲われている騎士を助けた。彼はフランス王シャルル七世に仕えるリッシュモン大元帥の使者で、二人に「オルレアン包囲戦への参戦」を求める。オリヴィエは二つ返事で快諾するが、トリスタンには出生の秘密と大いなる野望があった。
ジル・ド・レ伯爵と悪霊サラセンに導かれ、トリスタンはジャンヌ・ダルクを破滅させる陰謀に巻き込まれていく——。

【完結】神がかりのジャンヌ・ダルクと悪魔憑きのトリスタン・ル・ルー | 歴史・時代小説 | 小説投稿サイトのアルファポリス

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神がかりのジャンヌ・ダルクと悪魔憑きのトリスタン・ル・ルー(Tristan le Roux/赤髪のトリスタン)

訳者あとがき:キャラクター語り

 翻訳者だって「ひとりの読者」としてネタバレ感想書きたい!
 そんな主旨で、好き勝手に語ります。
 ここからは、各章の「登場人物紹介」ページの順番にならって、私が思ったことを書いていきます。

魔女メフレー

「神に呪われた魔女」としてカルナック中で知られている乞食のような老婆。
トリスタンを拾い、七歳でカルナック城に引き取られるまで育てた。
女というより、醜くて恐ろしげな暗い存在で、ぼろきれをまとったむき出しの肩が見える。ざんばらの白髪で体が覆われていなければ裸同然らしい。

魔女メフレーのイメージ(@shinno3)

【※小説投稿サイト・アルファポリスでも公開中:神がかりのジャンヌ・ダルクと悪魔憑きのトリスタン・ル・ルー


メフレーについて:ネタバレあり

前回(キャラクター語り(6)伯爵夫人)で、トリスタンと伯爵夫人はアレクサンドル・デュマ父子がモデルではないかと推測しました。

魔女メフレーは、トリスタンの出生の秘密を知る養母ですが、前回に続いて想像力をたくましくするなら、メフレーのモデルは「デュマ・フィスの実母」ではないでしょうか。

父デュマ・ペールはパリに上京したころ、同じアパートに住む隣人で縫製工を営むカトリーヌ・ロール・ラベを誘惑し、1年後に私生児(デュマ・フィス)誕生。

7年後、デュマ・ペールと女優の間に異母妹が誕生し、デュマ・フィスも息子として認知されます。

デュマ・ペールは数々の女優と関係を持ち、子供が生まれています。
華やかな女優を母に持つ異母きょうだいと比べて、デュマ・フィスの母は地味なお針子で日陰の身。

カトリーヌ・ロール・ラベ

引き離された母子の苦悩(特に母の本心)は計り知れませんが。
トリスタンとメフレーの会話に、デュマ・フィスの本心が滲み出ている気がします。例えばこんな風に——。

「復讐したい」
「誰に?」
「俺を愛さないアリスも、彼女が愛しているオリヴィエも、あの城の呪われた連中全員だ! あいつらが俺に施した慈善も哀れみもすべてが腹立たしい。赤の他人よりもはるかに憎んでいる。俺は金持ちになりたい、貴族になりたい、権力を持ちたい、俺が望んだすべてが欲しいんだッ!!」
「ひっひっひ、おまえはアリスが欲しいのか! そして、カルナック伯爵を憎んでいるのか?」
「そうだ、あの幸せそうな善人ヅラが憎くないのか!」
「みんな嫌いだよ。特に権力者は大ッ嫌いだ」

第二章〈ラヴァルの邪悪な伯爵〉編・#8 魔女メフレー(2)より


父に引き取られた後、人目を盗んで実母に会っていたのでしょうか。
トリスタンのように、父や異母きょうだいに言えない本音と激情をひそかに吐き出していたのかも。

なお、デュマ・フィスは父の名を生涯憎んだ一方で、父の最期を看取り、知り合いに丁寧な訃報を送っているようです。
父子の内心はわからずとも、お互いに「父の義務」と「息子の義務」を果たしたといえます。



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小説後半について

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【マガジン:アレクサンドル・デュマ・フィス未邦訳小説「赤髪のトリスタン」

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【URL:神がかりのジャンヌ・ダルクと悪魔憑きのトリスタン・ル・ルー


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