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キャラクター語り:サラセン【小説:Tristan le Roux/赤髪のトリスタン】

アレクサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)の未邦訳小説「Tristan le Roux/赤髪のトリスタン」を底本にしています。

あらすじ:
若く美しいカルナック城主オリヴィエは、従者トリスタンとともに狼に襲われている騎士を助けた。彼はフランス王シャルル七世に仕えるリッシュモン大元帥の使者で、二人に「オルレアン包囲戦への参戦」を求める。オリヴィエは二つ返事で快諾するが、トリスタンには出生の秘密と大いなる野望があった。
ジル・ド・レ伯爵と悪霊サラセンに導かれ、トリスタンはジャンヌ・ダルクを破滅させる陰謀に巻き込まれていく——。

【完結】神がかりのジャンヌ・ダルクと悪魔憑きのトリスタン・ル・ルー | 歴史・時代小説 | 小説投稿サイトのアルファポリス

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神がかりのジャンヌ・ダルクと悪魔憑きのトリスタン・ル・ルー(Tristan le Roux/赤髪のトリスタン)

訳者あとがき:キャラクター語り

 翻訳者だって「ひとりの読者」としてネタバレ感想書きたい!
 そんな主旨で、好き勝手に語ります。
 ここからは、各章の「登場人物紹介」ページの順番にならって、私が思ったことを書いていきます。

サラセン

異教徒サラセン人(イスラム教徒やアラブ人のこと)。
西暦752年、ポワティエ平原の戦いで戦死し、当時のカルナック伯爵とともに墓に埋められた。トリスタンが巨石をひらいて封印を解き、悪霊として復活。
生前と変わりない姿を保っているが、鎖帷子は緑色に変色し、首と胸に致命傷となった傷がある。
トリスタンが銀の角笛を吹くと召喚される。

サラセンのイメージ(@shinno3) 

【※小説投稿サイト・アルファポリスでも公開中:神がかりのジャンヌ・ダルクと悪魔憑きのトリスタン・ル・ルー


サラセンについて:ネタバレあり

異教の神が悪魔とされた時代。
異教徒は、改悛すべき悪または未開人だったのでしょう。

サラセンの場合、異教徒=悪役に見せかけて、実は個人的な恨みでトリスタンに取り憑いているにすぎない。

生前、カルナック伯爵(レオン・ド・カルナック)と一騎討ちし、一太刀も傷つけられずに敗北して戦死。捕らわれて生き埋めにされるときも取り乱すことなく、最後まで高潔で、死後も、人知れず英霊となってサラセンを封じています。

封印を解かれた直後、サラセンが「ジャンヌを堕落させて異教の神に捧げる」と言っていたのはブラフですね。

本当の目的は、トリスタンのコンプレックスに付け込んで「レオン・ド・カルナックの子孫(トリスタン含む)を破滅させる」こと。

しかし、当のサラセンこそ、レオン・ド・カルナックに対するコンプレックスをこじらせているように見えます。

最終章で再び墓に封じられた時、トリスタンの猛攻にあれほど抵抗していたのに、墓の地下でサラセンとレオン・ド・カルナックが「剣を捨てて手を握り、さらに互いの背中に腕を回して、朝まで抱擁していた」のを見て、トリスタンとオリヴィエ以上の深すぎる愛憎を感じました。

第一印象はドSなのに、終盤でイメージが反転。
不思議と「格落ち」感や嫌悪感はなく、愛すべき悪役の座に収まりました。
レオン・ド・カルナックに「ちゃんと捕まえておいてね」と伝えたい。

サラセンの容姿について。
原作では美醜について書かれてませんが、現代人の感性としましては、黒髪・褐色肌のアラブ系イケメンだといいなーと思います。トリスタンとの組み合わせ、またはレオン・ド・カルナックと並んだときに映える容姿だといい。



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小説後半について

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【マガジン:アレクサンドル・デュマ・フィス未邦訳小説「赤髪のトリスタン」

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【URL:神がかりのジャンヌ・ダルクと悪魔憑きのトリスタン・ル・ルー


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