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本に聞く。知りたいことを祈り、ぱっとページを開いたら ~魂の名言集『聖なる知恵の言葉』

 悩みがあり、それが抽象的で誰かに相談しても解決できない内容だった場合、私はしばしば本に聞いてみる。
 その悩みについて、教えてもらいたい、知りたいと思ってることをまず祈り、それからぱっとページを開いて、そこにある言葉を読んでみる。すると案外、ヒントをもらえたりする。

 私はクリスチャンだから、いつもは聖書に聞くことが多いのだけれど、先日はこちらの本に聞いてみた。
 スーザン・ヘイワード編『聖なる知恵の言葉』。

 巻頭の「この本の使い方」という部分に以下の記述があり、なるほど、まさにこういう使い方をする前提で編まれた本なのか、と共感した。

 この本は、あなたが問題にぶつかったり、何かを決めるために助言が必要な時に使う本です。
 まず、その問題をはっきりと心の中に描き、瞑想をして心を静めます。
 その状態になると、潜在意識と直感力が使えるようになります。
 そこで助言を得ようと心で願いながら、この本を適当に開きます。その時最初にあなたの目に入った言葉が、今のあなたに最も必要な言葉です。

スーザン・ヘイワード編『聖なる知恵の書』

 古今東西の知恵の言葉が、1ページにひとつずつ掲載されている形式の本である。
 頭から順に読んでいくのもいいけれど、そのときどき、抱えている悩みや問題を思い浮かべてランダムにページを開いてみる、という使い方はこの本のあり方に適していると思う。

 ちょうど心に引っかかっていることがあったので、やってみた。
 最初に開いたページにあったのは、この言葉。

過去はすでに死んだものであり、
そして未来は頭の中の想像にすぎない。
幸せは永遠の中にのみ存在する。
永遠の今という瞬間の中だけに。
――――ケン・ケイエス・ジュニア

スーザン・ヘイワード編『聖なる知恵の書』

 言われてみれば、過去のことと未来のことで悩んでいたから、この言葉のとおり「いま」という瞬間の幸せに集中しよう、そう自分に言い聞かせた。
 すると少し楽になった。
 そのとき、ふと「ここを開いて」と言わんばかりに開き癖のついているページがあるのに気がついて、素直に開いてみることに。
 大好きなタゴールの、でも私の知らない言葉が掲載されていた(もしかしたら前に読んだことのある言葉かもしれないが、記憶には残っていなかった)。

人生にも眠りの時がある。何も行動しない時期だ。(略)人生のリズムの中では、その休みは、再び新しい人生を生きるために、不可欠なことだ。(略)もう疲れることをするのは止め、すべての冒険をあきらめて、休息とゆるやかな回復のために時間を使わなければならなくなる。
――――タゴール

スーザン・ヘイワード編『聖なる知恵の書』

 まさしくいまの私がその状態。 
 これぞ必要な言葉だった。
 くすぶっていた悩みへの、鮮やかな回答のようでもある。
 胸の奥が震えつつ、「つい焦りそうになるけれど、いまの私はこれでいいんだな」と安心した。

 ちなみにその後何回か、開き癖の部分をまた開けてみたのだけれど、そこは別のページだった。タゴールのページの開き癖は、不思議なことにもうなくなってしまったらしい。
 一度きりの偶然。だからこそ、この言葉に出合えたのは必然だったと、信じられる気がした。

 
 もう一冊、聞いてみたいと思える本があり、ひさしぶりに手に取った。
 晴佐久昌英『おさなごのように 天の父に甘える七十七の祈り』。

 晴佐久神父が考案された77種の祈りの言葉が、ひと見開きにひとつを基本として掲載されている。どの祈りも平易な言葉で紡がれており、さまざまな場面で人の心に寄り添う内容だ。

 いまの自分がどんなふうに神さまに祈ったらいいのか、教えてもらいたかった。すがるような思いで、ぱっと開いた。

 そのページに出ていたのは、「恐れているときの祈り」。

恐れているときの祈り

天の父よ
恐れにとらわれて心がすくんでいます
この恐れから解放してください
体のことが不安です
仕事のことが心配です
人間関係を恐れています
どうかこの恐れを取り除いて
あなたの愛を信じさせてください
わたしの恐れはわたしが生み出しているものです
あなたの愛のみ業(わざ)に信頼して
不安に打ち勝ち
心配をしずめ
だれとでも安らかに交わることができるように
弱いわたしに
祝福と希望をお与えください

晴佐久昌英『おさなごのように 天の父に甘える七十七の祈り』

 これもまた、私の心境にぴったりだった。
 心の中にあったものをそのまま言葉にかえてもらえたみたいで、読むだけで祈りを唱えたのと同じような感覚を得ることができた。
 悩みの迷路に入っているとき、自分の悩みのあれこれを適切な祈りの言葉にまとめるのは、私には難しい。この本の、このページの、この祈りはジャストタイミングでそんな私を助けてくれた。
 心の内を言葉にして神さまに祈ることができ、おかげで救われた。

 祈りのちから。
 言葉というものの不思議なちから。
 本という存在。
 偶然の顔をした必然。

 すべてに感謝です。


◇見出しのイラストは、みんなのフォトギャラリーから
chona_illustさんの作品を使わせていただきました。
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