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科学とキリスト教は矛盾しない ~三田一郎著『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』

 2018年の出版当時から、ずっと気になっていた本書をやっと読んだ。

 著者は物理学者で、カトリックの助祭でもある。あるときから、自身が科学者であることと、キリスト教の神を信じていることは矛盾していない、ということを、一般の人に向けてどう説明したらよいかを考え続け、本書が生まれたという。

「はじめに」のなかに、以下の文章がある。
〈実は科学者のなかには、神の存在を信じている人が少なくありません。みなさんも名前をご存じの高名な科学者の多くが、神や信仰について熱い思いを語ってきています。〉

 紀元前5世紀のピタゴラスに始まり、コペルニクス、ガリレオ・ガリレイ、ニュートン、アインシュタイン、ルメートルやディラック、そしてホーキングまで。著者は歴史をたどりながら、それぞれの科学者の仕事(業績)と信仰的なスタンスを紹介していく。

 有名なガリレオ裁判の内実も、かなり詳しく書かれている。当時のカトリックとプロテスタント、それぞれの過ちにも触れ、350年後に教皇がガリレオに謝罪した話も。現在のカトリック教会が、進化論と聖書は矛盾しないと考えていることも語られる。
 つまり、「自然科学的結論と一致するように、聖書の章句の真の意味を見出す」という読み方をすればよい、と。
(プロテスタントは教派が細かく分かれてしまい、考え方はそれぞれなので、一概には語れない。本書でも深入りはしていない)

 自分が持っている科学の知識をおさらいする意味で読んでも、面白かった。ただし、相対性理論あたりまではなんとか頭がついていったけれど、量子力学になると私には難しくて、さーっと目を通すのが精いっぱいだった。
 でも諦めずに進んでいくと、1911年のソルベイ会議の裏話が出てきて、ここまで読んでよかったと思った。
 ド・ブロイ、シュレーディンガー、ハイゼンベルク、パウリ、ディラックなど、量子力学をになう若手研究者が一堂に会したというソルベイ会議。その折に、ホテルのラウンジで、彼らのうちの幾人かが、科学と神について真剣に語り合った。その模様を、ハイゼンベルクが書き留めていたものを、著者が邦訳し、8ページにわたって掲載している。
 とても興味深い内容で、貴重な資料だと思った。

 全体を通して印象に残ったのは、その時代の最先端の科学によって、天体や宇宙の神秘に迫っていくと、〝これはもう何者かが設計したとしか思えない。世界の設計者がいるはずだ〟という心境に到達してしまう、そういう科学者がひとりやふたりじゃないんだな、ということ。
 そして、私はそういう感覚を持てる人が好きだ。


 ちなみに私自身と、私がいま所属しているプロテスタント教派の考え方については、↓こちらの記事にもちらっと書いています。どうぞご覧ください。


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