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新規事業の立ち上げプロセスを10工程に徹底的に分解してみた


新規事業の立ち上げプロセスを分解

シンチャオ!

これまで、ユーザーヒアリングの具体的なやり方、新規事業立ち上げ時のタスク課題狙い目となる事業案の考え方、アイデアのネタを増やす方法筋が良く見えるアイデアの考え方新規事業おすすめ本プライシングの基礎的な考え方新規事業と人事評価などを主張してきました。

独自の理論を主張するのではなく、既に世の中で幾分検索されている/流通している考え方やノウハウと、自分が無知状態から新規事業の立ち上げを何度も経験し体系化してきた内容の"差分"を意識してコンテンツとして、新規事業の立ち上げに関する理論を主張してきました。

"新規事業"に付随するKWとKW別の記事のタイトルとコンテンツとして差分を整理していた内容

新規事業の立ち上げは、論理(セクシーな道筋)によって事業内容が変わり、論理がセクシーであれば最適なやり方で実現できます。とはいえ、どのような職務分野でも基礎となる理論(結果論から導ける体系的な知識)はあるわけで、理論がフレームワークとして存在しています。

つい先日、ノバセルがYoutube広告運用の在り方を再定義した運用支援サービスをリリースしていました。既存事業のラクスルで運用・研究されてきた成果が出るやり方を踏襲し理論化したサービスです。

理論は、常に改善・再定義され続け、「xx理論を活用したyy手法によって従来のzzz効果を削減/効率/改善/改革」というのは、普遍的に受け入れられ、大きな損失を防ぐための方法として受け入れられると考えます。

フランチャイズでは大きな金銭損失を、フレームワークは業務の失敗損失を、コンサルティングは時間損失を。

前置きが長くなりましたが、新規事業立ち上げにおいてもセクシーな論理とセクシーな理論を掛け合わせる事で、事業の成功確度の向上に加え、事業の失敗確度を下げ、失敗しても質が高い失敗をできると考えるので、本記事では、新規事業立ち上げにおける理論を纏めました。

立ち上げプロセス.0.アイデアの発想

新規事業のアイデア立案は、①既存事業の何らかの資産を活用した周辺/隣接領域への参入、②新たな領域やビジネスモデルで立ち上げる、2つの切り口があります。

1.既存事業の周辺市場/隣接市場への参入

1については、既存事業のどんな資産を既に存在するどの市場へ参入し(参照:資料a)、どれくらいまでの事業規模を目指すのかを具現化していきます。

資料a:既存事業を軸にした市場拡大の考え方

M&Aで既存事業の周辺市場に拡大した事例にはなりますが、最近、連続的に年商5億円以下程のWeb/IT関連の会社を買収しているエフコード社の成長戦略がそれに該当すると考えます。

エフコード社のIR資料より引用

<記事挿入>上場企業のM&Aの成長戦略をxx社調べてみた

具体的に何を基準に考えていくかですが、下記の様なマトリクスで既存事業を整理してみると事業の方向性が定まりやすいです。詳細についてはこちらの記事で解説しています。

成果報酬型の広告運用事業を主軸に事業案の位置付けを整理

2.新たな領域やビジネスモデルで立ち上げる

先ほど資料の右上部分に該当する考え方です。既存の事業資産を活用するよりかは、新規事業や事業開発に強く機動力が高い人が中心となって、ホームランとはいかずとも、2ベースヒットや3ベースヒットを狙うような事業になります。

この手法で新規事業の立ち上げは、アイデアをゼロから見つける必要があります。アイデアのネタの探し方や、筋が良さそうに見えるアイデアの切り口の考え方はこちらの記事で詳細に纏めていますが、アイデアに必要な要素としては、下記の3つに集約できます。

・既にお金を払っている人が存在している(=代替手段が存在する)
・何にお金を払っているかが明確である
・お金を払っている人の総数が、求める事業規模サイズに十分な量である

B2BでもB2Cでも既にある月内予算の消化先を代替するのが鉄則です。また、何にお金を払っているかよくわからない領域は財及び財を提供する主体物(組織/人間)に何らかの神格化された"ブランド"がお墨付きなので、非常に難しい。

よって、何に対してお金を払っているかが明確な領域で且つ代替手段の切り口(IT化で低価格/めっちゃ寄り添う/コンテンツが凄いなど)が通用する事業を選定します。

立ち上げプロセス.0.1.需要調査

アイデアの発想ができたら、需要の調査を行います。需要調査では、何を調査する事がアイデアの筋の良さを測れる情報となるのかを明確にする下記画像の様な"問い"が必要です。そして問いを解くために調査します。

需要調査で重要と考える3つの分類の問い

市場や競合情報を調査する中で、市場は大きいが事業者規模は少ないや、競合が強く寡占市場であるが競合が実現できないやり方で顧客のリプレイスを狙える、といった仮説が出てきたら事業チャンスです。

例えば、リブセンスが求人広告サイトを立ち上げた際にリクルートが組織/事業の構造上実現できない成果報酬型モデルで参入した事例など、競合と戦わずして参入するケースも多いです。競争せずして戦うニッチ戦略については、下記記事でまとめています。

一方で顧客となる人への”ユーザーインタビュー”を通じて、顧客の問題や不満に触れながら需要の調査を行うやり方もあります。

ユーザーインタビューで得られる顧客の情報は、顧客が悩んでいる事や不満に対する行動レベル(下記画像参照)だと考えます。

最下層に近づくほど顧客の課題に対する熱量が高いと考える

課題に対して、時間やお金などを投下して既にアクションを起こしているが不満を抱いてれば需要は確実にあると主張します。

例えば、ある企業がWebマーケティングのコンサルティングを外部に依頼しているが、品質が良くないので依頼先を変更したいが毎回失敗する課題に対して、「発注先の選定から伴奏します」の様な切り口は需要があります。

こういった顧客の状況を具体的に掘り下げるユーザーインタビューの方法については、下記の記事で超具体的に記載しています。

立ち上げプロセス.0.2.アイデア言語化

アイデアの需要調査が完了したら、実際にアイデアを言語化して文字に起こします。基本的なFMTとして、

・どんな状態の人のどんな問題事象があるのか
・問題を解決できた時の最高と言える状態は
・最高な状態を実現できる方法は

と言った要素を洗い出していきます。(画像参照)

who/whatを明確にする事でアイデアの可能性を網羅できる

ですが、この領域は生成AI完結できるで、3つの内容を具現化できるプロンプトを紹介します。

# このコンテンツの前提条件
ユーザー:
- ゴール:生活者の行動・考えを5W2Hで理解すること。
- 成果物:ユーザーが提示したカテゴリーを、1.誰が利用・購入しているのか(who)、2.どんな時に利用・購入しているのか(when)、3.どこで利用・購入しているのか(where)、4.どのようなものを利用・購入しているのか(what)、5.なぜ利用・購入しているのか(why)、6.どのように利用・購入しているのか(how1)、7.どのようなコミュニケーションが必要か(how2)、を書き出すこと。
# このコンテンツの詳細
このコンテンツでは、ユーザーが提示したカテゴリーについて、生活者の行動・考えを5W2Hで理解するために仮説を作成します。
1. 成果物の定義
- ユーザーが提示したカテゴリーを元に、成果物を定義します。成果物は、以下の7つの要素で構成されます。
- 1. 誰が利用・購入しているのか(who)
- 2. どんな時に利用・購入しているのか(when)
- 3. どこで利用・購入しているのか(where)
- 4. どのようなものを利用・購入しているのか(what)
- 5. なぜ利用・購入しているのか(why)
- 6. どのように利用・購入しているのか(how1)
- 7. 利用・購入してもらうには、どのようなコミュニケーションが必要か(how2)
2. ステップの実行プロセス
- 以下の手順に沿って、成果物を生成します。
- ステップ1: 誰が利用・購入しているのか(who)を明確化する
- ステップ2: どんな時に利用・購入しているのか(when)を明確化する
- ステップ3: どこで利用・購入しているのか(where)を明確化する
- ステップ4: どのようなものを利用・購入しているのか(what)を明確化する
- ステップ5: なぜ利用・購入しているのか(why)を明確化する
- ステップ6: どのように利用・購入しているのか(how1)を明確化する
- ステップ7: 利用・購入してもらうには、どのようなコミュニケーションが必要か(how2)を明確化する
4. ユーザへの確認事項
- 成果物をユーザに提示し、内容についてのフィードバックを受け取ります。ユーザの要望や意見に基づいて、成果物を最終的に仕上げます。
5. 例外処理
- ユーザからの要望やフィードバックに応じて、成果物を改善・修正します。
6. フィードバックループ
- ユーザからのフィードバックをもとに、成果物の品質を確認し、改善点を洗い出します。必要な修正や改善点に取り組み、より良い成果物を提供します。
7. 成果物の生成
- 最終的な成果物として、生活者の行動・考えを5W2Hで理解するための情報を含んだドキュメントを生成します。
# 成果物の生成
生活者の行動・考えを5W2Hで理解するための情報を含んだドキュメントを生成します。ドキュメントは以下の要素で構成されます。
1. 誰が利用・購入しているのか(who):
2. どんな時に利用・購入しているのか(when):
3. どこで利用・購入しているのか(where):
4. どのようなものを利用・購入しているのか(what):
5. なぜ利用・購入しているのか(why):
6. どのように利用・購入しているのか(how1):
7. 利用・購入してもらうには、どのようなコミュニケーションが必要か(how2):

引用:プロンプトつく〜る

立ち上げプロセス.0.3.需要検証の設計

ここからが新規事業立ち上げのメインテーマです。

売れるかどうかのテストマーケティングを爆速で検証していきます。

が、需要検証の方法は理論化できるので、一覧化した需要検証方法を紹介します。

参考:田所さんのX上の投稿より

立ち上げプロセス.0.4.検証ツールの作成

非常に主観的ですが、目的別に各検証方法の有効度を”高高,高,中,低”の4段階で格付けし、汎用的に活用できる検証方法を抽出してみました。(下記画像参照)

需要検証方法の有効度を格付け

実際にサービスやプロダクトを作成してリリースする以外の検証方法で、最も汎用性が高く有効度が高そうな手法は、「ユーザーインタビュー」「営業(資料)」「LP作成」という結果になりました。

逆に、汎用的が低く有効度が低い検証方法は、「リーンキャンバス」「申し込みフォーム」「プロダクト画面」「ワイヤーフレーム」でした。これらはコンセプトやサービスのあり方を表現する事には適しているという、私の主観が強く働いています。

有効度が高いであろう、「ユーザーインタビュー」「営業」「LP作成」については、個別で紹介しているので、参考にしてみてください。

0.4.1.テストマーケティングのやり方<ユーザーインタビュー編
0.4.2.テストマーケティングのやり方<LP作成・Webマーケティング編
0.4.3.テストマーケティングのやり方<営業資料作成・営業編

立ち上げプロセス.0.5.〜0.6.需要検証の実行

いよいよ、事業検証の実施に入りますが、活動のモニタリングは不可欠です。基本的には活動ログを取りながら、対象ユーザーの反応を数値や声として収集・記録していきます。

これらの情報は後の検証の継続可否や事業投資の可否の基準となります。また、事業構造を分解し、すべてを指標化した上で需要の検証モニタリングを行います。

これらの指標は後の損益計算書などに直接影響を与えるものとなりますが、需要の検証と合わせて、事業構造上でどこに欠陥が生じやすいかや、どの指標を重要視すべきかを見極める手助けとなります。これを一般的にKPI(重要業績評価指標)と呼びます。

KPIは最初に設定する指標によって指標構造が変わることに留意する必要があります。KPIの分解に関する詳細は、以下の記事にまとめてありますので、参考にしてください。

立ち上げプロセス.0.7.検証継続可否判断

検証を経て抽出された指標数値(KPI)と顧客の意見を基に、事業の継続可能性を評価します。

事業の継続可能性については、検証指標が即時性の高いものではない場合、狙っている市場の潜在能力や組織として時間をかけてでも参入したい市場ポジションなど、前提条件によって意思決定が変わることがあります。

そのため、検証を行う前に、どのような基準で事業の継続可能性を判断するのかを事前に把握することが重要です。

また、検証継続及び事業継続可能性を判断に重要な指標の一つであるプライシングについても、このタイミングで再検討しておきたいです。

事業初手段階のプライシングは非常に難しく、基本的な考え方について、下記の記事で解説しています。応用的な考え方についても近々書いていきます。

立ち上げプロセス.0.8.事業構造を整理する為に事業計画を作成

検証結果から導き出した事業指標を基に、事業計画を策定していきます。事業計画を作成する主な目的は、事業の収益性と実現可能性を現実的に考えることで、関係者が「期待外れ」の感情に陥らないようにするためです。

期待外れは信用損失に大きな影響を及ぼすため、事業の可能性を極端に強調するための「上手くいったシナリオ」のような非現実的な数値を提示すべきではありません。

むしろ、悲観的なシナリオを複数想定し、悲観的なケースが発生した際の原因と対策を仮説として洗い出すことや、類似するサービスを研究して考慮することが重要です。

大前提として、事業計画の数値は根拠が薄く、時折数値が変動することから、数値そのものにはあまり意味がないと考えます。

事業計画を漏れなく作成する手順については、下記の記事で解説しています。

立ち上げプロセス.0.9.初期顧客の獲得方法を100個出す

顧客獲得方法の一例

初期の顧客獲得に関して、できる限り多くの方法を試みてみることが重要です。まずは100通りの方法を考え出す勢いで洗い出して試します。試行錯誤を繰り返しながら施策を進めていく中で、事業と相性が良い最適な手法が見つかるはずです。

最後に

以上が、新規案件立ち上げのプロセスになります。よくあるのが、「3C分析とかPEST分析しましょう」とあるのですが、記載したプロセスを踏めば勝手に分析できている状態になります。

売れるか売れないか営業してなんぼなので、市場に検証をしにいく事を念頭に新規案件の立ち上げを行いましょう。それでは、カモーン!!

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