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新規事業立ち上げの課題と対策を考えてみた

シンチャオ!

新規事業を立ち上げると言っても、82%は失敗する世界と言われていますから、なかなかそう簡単にはいきません。

新規事業を成功させるには、過去の先人者たちの失敗経験を体系化し学習することで、課題に対する対処策、言わば薬の存在を、事前に知っていたほうが良いでしょう。

本記事では、新規事業を立ち上げる工程を分解し、工程別で生じる課題と対処策について書いていきます。

新規事業を立ち上げる工程は各社によって定義や実行内容にバラツキがあるため、所謂ベンチャー/スタートアップ的な組織の中で、新規事業の立ち上げを行ったことがある方約10名にヒアリングを行い、新規事業の立ち上げの工程をまとめています。

実施したヒアリング対象者の前提条件

なお、インタビュアーの方々が所属する組織の規模は、売上数億円〜数百億の規模に絞り、限られたり資源で行う新規事業を対象としています。

他のメディアで説明されているような誰が書いているのがわからない根拠のない偏った前提条件に基づく新規事業の立ち上げ工程/プロセスではないので、汎用的に行われている新規事業の立ち上げ工程と捉えて、本記事を読み進めてもらえると幸甚です。それでは書いていきます。

新規事業立ち上げの前提

組織の特性によって新規事業の"概念"が違い新規事業の捉え方が変わる事を理解する必要があります。

例えば、収益規模も大きく人員リソースも豊富な大手企業であれば、新たな事業ではなく、既に市場形成されている領域で市場を狙い撃ちして後発的に参入するのが望ましいでしょう。

参入する市場がインフラビジネスのような大きな市場なのか、世の中に広く認知されておらず競合が弱い市場を狙うのかはさておき、楽天,DMM,サイバーエージェントなどが例に挙げられます。

逆に、スタートアップであれば、人員リソースはもちろん資本も潤沢ではないので、課題の本質は旧態依然で存在していて一発逆転を狙える領域で、課題に対する解決策、いわゆるソリューションの切り口を目新しくし、一攫千金を狙う必要が出てきます。

新規事業立ち上げのプロセス

組織形態によって新規事業の捉え方は変わりますが、新規事業の立ち上げプロセス自体はさほど変わらず、分解できると考えます。

とはいえ、プロセスとして説明する以上、属人的では説得性に欠けます。なので、様々な組織の新規事業担当者が行っている立ち上げプロセスを知る必要があるので、各人にヒアリングを行いました。

ヒアリングについては、新規事業におけるプロセスを直接問うのではなく、過去失敗した事業を思い出して頂き、どのような思考プロセスでどのようなインプットとアウトプットを行っていたのかに関してヒアリングさせて貰いました。

意図としては、「失敗を活かして立ち上げプロセスを改善できるのであれば、どこでどのようなアクションを取るのか」という、失敗したからこそわかる確かな回答を聞き出せるためです。

それらの回答内容を共通化し取り纏めたプロセス内容が下記になります。
ちなみに、共通して失敗していたプロセスは課題検証のステップでした。「お金を払うまでのアクションをしていなかった」「課題を抱えているのはごく一部だけだった」などの実情が多かったです。

新規事業立ち上げのプロセス

ここで誤ってはいけないのが、新規事業はステップを踏んで立ち上げるものだと理解すること。

事新規事業の立ち上げ時に発生する業務は時々に応じて変われば、反復業務もあったりと、アジャイル的に進行するので、添付画像の様なステップ別で進行するウォーターフォール型のプロセスは不適切と考えます。

ですが、新規事業の立ち上げプロセスの中身を具体的に理解する事で何を行うべきかを知れるので、敢えてステップ形式で各工程を分解していきます。

新規事業立ち上げプロセス①アイデア出し

新規事業のアイデア出しのプロセス

アイデア出しのプロセスでは未だ何も決まっていないので、どの市場でどのような課題に対して、どんな事業を行うのか、素案を出します。

素案を出すポイントは2つで、①市場選定をしくじらない②課題を探さないことです。市場選定のポイントについては以下の画像でまとめています。

市場選定におけるポイント

②の課題を探さないことについて、時代によっては、解決機能を支える解決技術が変わることがあっても、解決策と課題は変わることはほとんどないと考えます。

例えば、2018年に会社の歴史を閉じた人材派遣会社のグッドウィルは、軽作業業務を中心とした人員をスポットで紹介する派遣会社でした。必要な時にスポット人員を活用したい課題に対する解決策ですが、この解決策の機能を下支えしているのは、オペレーターや営業マンによる人力調整でした。

このオペレーションに打って変わったのがタイミーのスポットアルバイトマッチングサービスです。

マッチングシステムの技術により解決策の機能が変わりましたが、解決策はグッドウィルと大きく変わっていません。時代に則した解決策を提供しているというのが実態です。

ですので、既にある解決策から課題を特定し解決策に改善を加える手法は、既に存在しているサービスの代替手段になるので、失敗する確率が極めて低くなります。

「解決策から考えるな、課題から考える」ということをよく聞きますが、課題はそう簡単に見つかりません。現行の解決策から未充足ニーズを発見することこそが正しく、発想の転換を行うことが重要になります。

新規事業立ち上げプロセス②課題検証

新規事業立ち上げの課題検証のプロセス

課題検証のプロセスでは、課題の存在有無を検証する必要があります。課題の実在を検証するための方法として、課題に対する行動の熱量をユーザーインタビューで調査する必要があり、課題の熱量を分類したものが次の画像です。

ユーザーの課題に対する解決策の熱量分布

これらのうち、意志ではなく行動が伴っている状態は課題に対する熱量が高い状態であり、課題が存在すると判断できると考えます。

ユーザーの課題に対する熱量

これらユーザーの課題に対する熱量を調査するためのユーザーインタビューの具体的な方法については、下記の記事を参考にしてみてください。

新規事業立ち上げプロセス③解決策検証

新規事業立ち上げの解決策検証のプロセス

課題が実在し、解決策の必要性を検証しますが、このフェーズでは、B2Bであれば営業資料を1つ作成して営業を行うフェーズです。B2CであればLPを作成して需要を検証していきます。

B2Bにおいては、対象企業数が少数で高単価のプロダクト/サービスを扱うようなニッチな事業や、逆に営業対象数は多いけど低単価のプロダクト/サービスを扱う事業などで、営業手法と営業工数が変わってきますが、最終的にどちらも受注可否の検証を行う必要があります。

新規事業立ち上げプロセス④解決策構築

解決策構築では、実際の仮プロダクトを構築するフェーズになりますが、解決策を提供できる事を照明できる形式を構築する必要があります。

新規事業立ち上げの解決策構築のプロセス

「仮プロダクトをどこまで構築する必要があるのか」という疑問はよく生じますが、提供する解決策と解決難易度によって仮プロダクトの状態も決まると思うので、前段の解決策検証の段階でどのレベルまで仮プロダクトを構築する必要があるのかを、PDMないしPMがしっかりと見極める必要があります。

新規事業立ち上げプロセス⑤事業再現性検証

新規事業立ち上げプロセスの事業再現性の検証

最後に、属人的な検証ではなく自分のミラーを作るべく事業の再現性が必要になります。もし仮に、年商2,3億円のスモールビジネスであれば属人的な事業運営で問題ないことはないですが、いずれにせよ、自分がプレイヤーでい続けなければいけません。

プレイヤーである以上、自分の稼働工数に余裕が生まれず、事業全体を俯瞰的に捉えて事業全体の推進ができなくなる可能性が高くなります。

なので、事業を大きくしていく前提なのであれば、一人の営業マンが売れる状態ではなく、万人で売れるような事業に仕上げていく必要があります。

新規事業あるあるなのですが、営業の9割の人間が売れない事業にも関わらず、なんでも売れてしまう一人の人間だけで爆発的に売れる事象があります。

当事象に再現性ある根拠を見出せないと、全体的に売れない事業と判断され事業が撤退するケースもあります。でもこのケースは非常に勿体無いので、事業の再現性を追求することは非常に重要になります。

新規事業のプロセス別の問題と対策

各プロセスを理解して頂けたら、各プロセスで生じるよくある課題を事前予防しておきましょう。

事業フェーズ別で生じる問題と課題

新規事業立ち上げにおける最も大きな課題は教育者不在

新規事業の立ち上げプロセスにおける課題を説明してきましたが、最も大きな課題は、教育者不在なのではないかと考えています。

ベンチャーキャピタルが資本支援(投資)だけにとどまらず、人的支援を行っているのが新規事業立ち上げにおける教育者不在の象徴かと思います。

また、起業家は成功したと称される起業家にコンタクトを取りメンターとしての存在に期待をし"過去"の成功者から学びや教訓を得ようとしますが、事業を構築するのにどのような障壁があって、どのような課題が発生するかを事前に知りたい事の表れではと考えます。

では、なぜ、教育者が不在なのかは、構造上発生している原因が大きく3つあると考えます。

1.他の職種ではメンターや上司か、リーダーなどがいるはずだが、新規事業専任の人はいない。

新規事業に詳しい労働市場にそもそもいません。自分で事業を構築できる人は起業します。

もし仮に、一組織に在籍していても数が少ないので、そう簡単人は転職市場にも出てきません。よって新規事業立ち上げのノウハウや勘所は循環されず、経験による学習でしか代替できなくなります。

経験・勘・度胸、通称「KKD」が最も色こく出る職種であり、大工さんのような職人技術が求められるのではと思います。

そうなると、新規事業を連続的に立ち上げ、経験を蓄積する必要がありますが、やり続けるには会社の体力(本業による利益創出)があり、思想(新規事業に対する考え方)が生きていないと難しいが故に、新規事業をやり続けられる組織は極めて少ないのではないでしょうか。

もし仮に、新規事業立ち上げの専任部隊を機能させたとしても、今度は人事制度評価や会社制度の問題で、部隊はあるが上手く機能していない状況に陥ってるのではないかと思います。

2.何を教えるべきか体系化されていない、体系化に工数が生じる

何を、どのように伝達することが新規事業を立ち上げた人にしか到底わかりません。事業の勘所や数値の勘所は経験者にかわからない世界です。

ですが、新規事業の立ち上げに成功/失敗した要素からノウハウと組織浸透できていないことも事実です。立ち上げ経験者のみにノウハウが蓄積されてしまい、その方が離脱をすると組織には何も残っとおらず、極めて属人性が高いノウハウになっています。

このの予防策として、組織で行うナレッジ経営が必要ですが、「チーム連携強化やチームで成果を達成するんだ!」という文化や価値観が経営トップにない限りは、ナレッジ経営の実現性は極めて低いです。

3.誰もが通るしくじりや失敗があるが、失敗事例は公に公開されていない

メディアは成功例しか取り上げないので失敗例はそうそう簡単には出てきません。

仮説ですが、失敗内容を公開する事で、同じような事業を検討している他社の失敗確率が下がり、成功への遠回りをしなくて済むので各社は公開したくないのでしょうか。

もしくは失敗をきちんと振り返っていないので、失敗が失敗例として蓄積されていないかもしれません。

失敗事例を知らぬまま、過去の事例と同じような失敗をしてしまう、類は、自分なら大丈夫だと思い込み、失敗を軽視してしまう。こういった原因が生じているように感じます。

新規事業立ち上げについて、何をどのように学ぶ必要があるのか

1.ビジネスモデルオタクになる

成功確率はいくら学んでも上がりませんが、失敗確率は学ぶことで大きな失敗を起こす確率を下げることができます。

大きな失敗には、金銭的/時間的/心理的なものがありますが、これらのダメージが大きいと立ち直れず、小さければまたすぐに立ち直れます。

スタートアップはこのダメージが大きく、立ち上がるには相当な馬力が必要になるんじゃないでしょうか。

ですので、失敗確率を下げるためには他社の事例を知ることが必要で、知った上で理解を深めるには、ビジネスモデルオタクになることが必要です。

参考までに、新規事業を検討する際の、他社の事業アイデアの調査方法を画期の記事で説明していますので、ポチッと良いねを…!

2.ビジネスモデルオタクになるには?

ビジネスモデルオタクになるには、他社事例や事業情報を収集する前に、2つの事について知る必要があります。

それは「財務」と「マーケティング」です。

双方の知識がない状態で他社の事業やアイデアを調べても理解が深まらず、知識がある状態で調べると理解が深まるという、事象が発生します。(両極端ではありますが、情報処理には一定の知識が必要で、情報の生後性・誤謬性を判断できる知識が必要だからです)

2.1.財務

財務は財務三票を理解するために簿記の資格を取ることがおすすめと良く聞きますが、その通りだと思います。とはいえ、財務知識を実際のビジネスの場で活用できるようになるには、財務数値を実際に触る経験が必要なので、下記のような基本的な取り組みを繰り返せば能力開発につながると考えます。

2.1.1.事業構造がシンプルな店舗事業のPLを模範する

1.飲食店や美容院に行ったらPLを試算する
 1.1 従業員/店内を観察してオペレーションを確認する
(時給情報、席数、着席率、仕入れ先、什器、など)
 1.2. 仮のPL作成開始@店舗(ラーメン店を仮想)
 1.3. 券売機orメニューを見ながら「一番注文される商品はなんですか?」と聞き、平均単価と仮置きする
 1.4. 注文した商品が届くまでの待ち時間でPLの項目だけ整理する
 1.5. 何の項目をいじることが事業にとって大きな影響が出そうかを"感覚"で捉えてみる
2.店舗で作成したPLを仕上げる@自宅
 2.1. KPIを変数として四則演算で算出式を作成する
 2.2. RAND関数で算出式が機能するか確認する
 2.3. 36ヶ月分の数値を横引きしてみる(最大60ヶ月)
 2.4. 知り合い聞いたりして答え合わせ

これをあらゆる業界や事業で日常的に繰り返します。ここで重要な事は意気込んでやるのではなく日常的にルーティンとして考え、息を吸うように事業を考えられる様になることです。

日常には様々なモノや情報で溢れているので研究者になった気分で一つ一つ謎解きしていく感覚に近いかもしれません。

2.1.2.個人で仕事を受けてfreeを運用する

個人で仕事を受ければ、営業から納品まで全て一人で完結できるので、売上〜利益までの過程を全て管理することができます。

会社員で勤務をしているだけだと、数値管理は経営陣の意思の元に財務部が行うので、自社の事業全貌が分かりづらくなっています。

個人で仕事を受ければ規模は小さいですが、基礎的な財務知識や生の数値に触れることができます。何より当事者になれることがメリットです。

当事者意識という便利な言葉がありますが、当事者の意識を持つことはできても、当事者として行動因子となる前提知識や行動内容が当事者と同等レベルにはなれないと考えます。

やはり、そこには当事者ならではの"経験"が関与してくるので、財務数値の理解には個人で仕事を受けて経験し、仕事量と影響範囲を拡大していくことで取扱う数値を拡大していくことが良いのではないでしょうか。

2.1.3.家庭の帳簿をちゃんとつけてPLチックに振り返る

一番簡単ですがあまり誰もやりません。主語を家庭にして、家庭に入ってくる売上とコストを計算します。

2.2.マーケティング

全ての事業活動はインプレッション、CVR、LTVの3つの変数をかいぜんすることに尽きると考えます。これら3つに関する情報をキャッチすることでマーケティングの全体像を理解できるようになります。

1.マーケティングチャネル別の費用を資料DLサイトで入手する
2.各チャネルの費用を把握したら、特定のスタートアップのマーケ施策を調べる。
3.対象スタートアップのピッチ資料探す
4.資金調達額を調べて人件費とマーケ費を逆算する
5.ビジネスモデルをPLに落とし込む
6.逆算した人件費とマーケ費を活用し マーケ費用の内訳を概算する
5.スタートアップは露出を求める人が多いので、面談して情報入手及び答え合わせを行う

最後に

新規事業の立ち上げ時に生じる課題をプロセス別で説明してきましたが、複数回に渡り、様々な業界やビジネスモデルで新規事業を検討していると、慣れが生まれ感覚が身に付いてくるので、立ち上げる際のプロセスは何も難しくありません。

ですので、しっかりプロセス別で生じる課題に向き合い、タスクとして処理していければ事業は立ち上がります。その事業が売れるかどうかの見極めや売れるアイデア(事業モデル)に辿り着くのが難しいですが…

それは今日はこの辺で、カモーン!!

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