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集落から天狗山へ-皆野アルプスを行く破風山ハイキング⑫

森の景色に慣れた目と頭はなかなか集落を受け入れない。

車道には太陽がサンサンと照り付け熱いなぁ。

ここからどうやって進むのかな?

のんは皆野町観光協会ウェブサイトから破風山モデルコースをプリントアウトしてきていた。ネガティブ人間の安全対策。その写真と場所を見比べながら進んでいく。家々は立ち並ぶものの人の姿はなし。先ほどすれ違った彼女はここの人かな。川のゴミもきっとここからなんだろう。静かすぎてちょっと不気味さを感じながらも綺麗にお手入れされた花壇のカラフルフラワーが不安を取り除く。皆野アルプス破風山への看板が見え、矢印に合わせ左へと曲がる。

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広大な山々と麓の景色。

ここに住むってすごい。

のんとたぁは東京都会暮らし。二人が生きる上での優先順位をもって今は都会暮らしを選んでいる。しかしもし優先順位に変化が起き、別の人生へと進むなら秩父に住むのは1つの選択として話に出ている。寒さが十分しのげる家に犬と亀を飼って、家庭菜園しながら静かに暮らす。お休みのときは秩父が与えてくれる自然の中でたくさんハイキングをしながらゆっくりと生きていきたいと思っている。だからこそ森の中に住まう人の暮らしを目にし、羨ましさと同時にこの地に住む覚悟を見せつけられ複雑な気持ちになる。

解放と束縛。1つの解放を追えばそれに伴う束縛ももれなくついてくれるのが人の性。

大前集落の家々は決して新しいとは言えず「いつ立て替えます?」と都会ならちょいちょい話が出そうなものばかり。

高齢化による人口減少とか関係しているのかな?

豪雨の時に孤立しちゃうのってこういう場所かなぁ。

涼しい顔しながら壮大な景色を見ているとは思えないのんの頭の中。余計なお世話ネガティブ思考に気づき、「いかん、いかん」と小さく首を振る。

「そろそろ行く?」

「うん。」

皆野アルプスコースは破風山を中心とした連山越えコース。モデルコースに掲載されている断面図マップよりコースの標高状況が確認できる。上り下りを繰り返し進むコースではあるものの、華厳の滝登山口から大前集落を超えて天狗山までが一番長い上り道。

集落から杉の森へと入り見えてくるY字路。まっすぐ行けば大前山・破風山近道らしいがここは予定通り天狗山・破風山へと続く右の道へと進む。杉が高く伸び草木が少ないこの森の道幅は二人並んで歩けるほど広く、狭い道続きだったので解放感がたまらず、心にもスペースを与える。

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鳥の声が二人の耳に届き、一瞬にして心地良さに飲み込まれる。傾斜が激しくなると道幅は再び狭くなり杉は姿を消し明るい緑の落葉樹の世界へと導かれる。しかしこの道、上りの傾斜があるだけでなく左右にも傾斜がある。いかにも山の側面を利用して道作っていますよ系。滑れば見事に下に落ちていくさまが簡単に想像できるだけにのんのネガティブ信号が再び軽く動き出す。

破風山に向かうにはいくつかのコースがあり、二人が歩く皆野アルプスコースはエリアごとに別名を持っている。華厳の滝登山口から札立峠までは如金峰コース。木の板の案内板にニョッキンとカタカナで書かれていたおかげで読み方を学ぶ。

急な坂を上り切ると山地の一番高いところを歩く尾根道に出てきた。道幅がある程度広く平坦ならば二人の大好きな尾根道となるが、ここではそうはいかない。おひとり様サイズで足腰にくる坂道。ただ視界が開ける分、余裕も生まれる。

後ろを振り向けばたぁの姿。豊かな森の中、静かに歩いている。急ぐわけでもなく騒ぐわけでもない。軽い疲れの中、森のエネルギーに溶け込んでいる姿を目にするだけでのんは幸せを感じる。彼にはやっぱり自然が似合うと実感できることが嬉しいのだ。

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幹の中央に深い切り込みがあり、女性器を想像させる(してしまった)。変な思い付きはたぁに伝えたい。その思いは言葉にすることで軽いセクハラにつながる。このような状況に慣れているたぁは受け流すことが得意になってしまった。

樹皮の美しい松の木がのんの目に留まる。以前訪れたカナリア諸島でのハイキングをきっかけにその美しさに気づき、今ではちょっとした虜になっている。樹皮の割れ方は様々だけど深くて大きいほど強く魅力を感じる。

葉に埋もれたキノコをたぁが発見。隠れながらもニョキっと顔出す姿がいとおしい。彼のほうがキノコや動物などを見つけるのがうまい。動物の勘というやつか。登り続けると森の合間からまず空が見え、小さな祠が見えた。天狗山に到着。

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