シンタローには特性がある。数字に対してとても執着がある。幼いころはカレンダーに書かれている数字の上にステッカを貼ってしまうということがあった。そんなことをしたらカレンダーとしての機能が失われてしまう。昨年のカレンダーだったのでよかった。数字が気になるようだったので、おもちゃ代わりに電子卓上計算機を与えた。要するに電卓だ。すると電卓の挙動の特徴を覚えた。そして簡単な計算をしたりして遊んでいた。 あるとき、簡単な足し算をシンタローに出題してみたら正解を出した。暗算でだ。もう一
もし世の中に完璧なことがあるとするならば、100%不正のないことをするか、不正があっても100%隠し通すことをする。としたら後者の方に利があるように思う。
仄暗い、学校の教室のようにも見える、全てのテーブルが同じ方向を向いてならべてある室内。照明は点いていない。窓から入る光だけが自分の瞳の視界を補助している。俺はテーブルの上にいた。ずっとそこにいた。部屋の扉を開けるとそこはすぐ廊下になっていて、この部屋の隣もここと同じ構造の部屋になっているはずだった。俺はここに居たかったし、まだここから出る訳にはいかないと思っている。それに雷の音が聞こえてくる。雨が降っている訳ではなさそうだ。ときどき稲光が見える。俺はこの歳になっても雷が苦手
一気に四〇〇〇字が書けるようになりたい。 ただ呟くだけならTwitterでもスレッズでなくてもnoteで良い。
そりゃ紙の本の方が好きだし良いと思うんだよ!写真の富士山より本物の富士山を見たいと思うのと同じように。 でも本を置く場所がないんだよ。埋もれていく本は更にどんどん埋もれていき、取り出そうとすれば雪崩。その本は忘れ去られてしまう。 紙の本を読むのは今の時代は贅沢なことなんだ。
万年筆のインクが出ないのでインク・カートリッジの腹あたりを親指と人差し指でつまんで、ぐっと押してみた。そしてペン先を紙にのせたとたんにインクがぶちゅっと出てきた。小さく黒い玉のようなインクだった。急いでティッシュを箱から引き抜いて、黒色が紙に広がらないように、吸わせるようにティッシュを黒い玉インクに当てた。すると気持ちよいくらいにインクはティッシュに吸い寄せられ、そのティッシュはみるみる黒くなった。気を取り直して再度ペン先を紙にのせると、さっきと同じようにインクがぶちゅっと
「あっ」突然森田くんが張りのある声を出した。何かを見つけたようだった。森田くんが見つめる先の方に何かが落ちている。森田くんはそれに近づいていくのだが、その速さがまるで獣が獲物を狙っているときのような感じだった。そして森田くんは落ちているキラリと光ったそれを摘まんで持ち上げた。それは百円玉だった。あ、いいなぁ、と僕は森田くんを羨ましいと思った。ラッキーなやつだな、と思って嫉妬した。そこで僕が発した言葉も 「あっ」だった。 「やった! ラッキー!」と森田くんはちょっと子どもらしく
貧乏というのはどういうことだろうかと考えた。振り返るとうちは決して貧乏ではなかったように思う。靴はちゃんと自分の分が一足あったし、成長して大きくなった身体にサイズが合わなくなった制服は買い直してくれた。食事は毎日三食あった。生きてゆくのに十分な経済力がうちにはあった。それは地球に空気があって、でもいちいち空気のありがたみなど感じながら生きている訳じゃないように、当たり前に着る服があって、当たり前に一日三食あった。それなのに僕は自分が貧乏だと疑わなかったのは、自分が満足するよ
臭い。臭い!臭すぎていい匂い。俺のうんこはカップ・ヌードルの匂いがする。臭いのに良い匂い。うんこして直後、即、食欲が沸いてくる。このうんこを食べたらカップ・ヌードルの味がするのかと思ってしまう。俺のうんこがカップ・ヌードルの匂いにそっくりだというのはどうやら俺の思いこみという訳ではなさそうなのだ。ある日駅の便所でうんこをするチャンスがあり、うんこの個室で励んでいたところ、どうやら二人組が会話をしながらトイレに入ってきた様子で、俺は個室の中でその会話を聞いていたのだった。 「
俺には魔法が使える能力があるらしい。それを告げられたのは商店街に突き刺さる横道に入っていったところにあるゴミ捨て場だった。商店街の店店から出るゴミはその場所に集められる仕組みになっていた。ゴミはビニル袋に入れられているので強烈な悪臭などはないがそれなりに不思議な臭いが漂っていた。俺は商店街の中にあるスナックで飲んで歌って酔って帰途についているところだった。俺はゴミが集められている脇の道を歩いていた。すると突然「ちょっと待てーい。」と言う声が聞こえた。まさか俺が呼ばれていると
川端康成に会いに行った。あのおっさんと俺とが話す内容はエロ話ばかりだ。あんなにエロいおっさんとは思っていなかった。俺とおっさんが会うときにはお互いに毎度ちんこのイラストを描いたものを見せ合うのが恒例になっている。 「油絵に挑戦してみたよ。」とおっさんは言う。さすがノーベル文学賞をとるくらいの人物だからどんどん新しいスキルを身につけていくものだと感心した。 「油絵を出来る才能なんてあったか。」と一応言ってみた。 「アホか。わしは何でも出来るんじゃい。」こんな喋り方をする。 「
砂浜の上に立っているのは細身の女性だった。赤いワンピース、下着は付けていないようだった。太ももが露わに見えるようなひらひらのスカート状になったワンピース。ブラを付けていないので乳首の突起が胸に張り出している。女性のサングラスの向こうには大きな島が見えていた。夏の一日だったが、太陽は雲に隠れたままで暖かい日だとは言えなかった。 女性の視線の先に見えるのは大きな島とその右側から島に近づく船だった。船は大きな魚を引っ張っているようで、時々大きく揺られることがあった。船の進む方に
ロッキン・レディオ725!今夜も楽しくレディオを聴きながら踊ってるかい!それではさっそく今日の一曲目は「ラジオ体操」んな訳ないでしょ。え?ホントに?「ラジオ体操」流すの?今朝のリクエストナンバーワンって?へえ!そんな日もあるんだね!それじゃあどーぞ! なんか久しぶりに聴いたよね「ラジオ体操」の曲。これって子どもの頃以来じゃない?考えてみりゃ「ラジオ体操」って日本初のラジオ・ソングじゃないの。でも歌詞の中に「ラジオ」って言葉が殆ど出てこないよね。ある意味聴けば思わず踊り出す
うひひひひ、すげーよ。次から次へと言葉が沸いてくる。朝目覚めたときの俺の目尻についたヤニ、すなわち目脂のように言葉が沸いて瘡蓋のように固まって文章となる。うひひひひ、こりゃたまらんな。俺は言葉の魔術師か!とか声に出して言ってみるのだ。 虚しい。悲しい。いや、寂しいのか?俺にそんな能力などありはしない。そもそもが俺の視力はマイナス二・二なのだ。でもそれは関係ない。言葉の魔術師だなんて、そんなことはケツが裂けても言えない。言えない。相応しい言葉が全くもって見つからないのだ。
喉がイガイガして気持ち悪かった。口内で痰を切ろうとしてもなかなか切れない。んん!んん!と連続七回も唸っている。こんなときほど煙草をくわえたくなる。喉の調子が悪いのに喉に負担を掛けるようなことをしようとする。ウイルス性の病に倒れると回復に時間が掛かる。ウイルス性以外の病って何だろう。閑散とした雰囲気の中で喉の不調があると困ってしまう。んん!んん!と七回以上も唸っていたら絶対に注目されてしまう。俺は注目されるために生まれた訳じゃない!と叫んでしまいそうだ。叫ぶ理由など全くありは