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【ミカタをつくる企画の定理】フェルミ推定と仮説と説得力

今回はスピンオフ『ミカタをつくる企画の定理』として、フェルミ推定について書きたいと思います。

フェルミ推定というのは、把握しにくい未知の数値について、把握できている既知の数値を用いて推量する方法です。
企画において仮説を立てたり説得力をアップするのに効果的ですよ。


既知数から推定して未知数を把握する

フェルミ推定とは、冒頭でも書いたように「既知の数値を用いて未知の数値を推量する方法」です。
イタリアの物理学者エンリコ・フェルミが用いたことからフェルミ推定と呼ばれるようになりました。

例えば、人の頭部の重さを知りたいとします。
そのとき、中肉中背の成人男性を想定して体重を60kgで6頭身だとすると、単純計算で10kg。
頭部は身体の中でも重いので12kgくらいかな。

かなりザックリとした説明になりましたが、これがフェルミ推定です。

頭部だけを切り離さないと確かな重さは測れませんが、知識として知っている体重60kgと頭部の比重、それから目分量で割り出した6頭身という手がかりを使えば、大まかな数値を求めることができるのです。

今の世の中では大抵のことはネットでググれば正確な解答が得られますので、こんなに簡単な問いに適用するケースは皆無ですが、手元にスマホが無いときには使えるかもしれません。

本来は、「日本中にマンホールがいくつあるか」といった求めにくい数値に対して使われるもので、近年ではではコンサルティングファームの就職面接などで、思考力を試すために出題されたりもするそうです。

このフェルミ推定、企画においては仮説構築の役に立つのです。


推定値で具体的なイメージを捉える

仮説は、企画立案において絶対不可欠な要素です。
「企画の善し悪しは仮説によって決まる」と言っても過言ではないほど、企画の正否は仮説の正しさに左右されます。

企画の発端としてニーズなどの調査を行う際に、「誰に対してどんな質問をするか」といった調査対象や調査項目を設定するためには、あらかじめ「こんな人たちが、こんなことを思っているのではないか」という仮説を立てる必要があります。

最近では、仮説を基に企画開発を進めて、実施の前にPoC(概念実証)で裏付けをとるという進め方がポピュラーです。

今までにない新商品を市場にローンチするにあたって市場規模を測定しなければならないとします。
まったく新しい商品なので市場データは存在しません。
となれば、調査などの前に仮説が必要となります。

こういうときにフェルミ推定が使えるのです。

随分前の話になりますが、子どもにあげるクリスマスプレゼントを玩具から絵本に切り替えた場合、出版市場ではいくらくらいの経済効果があるかを計算したことがあります。

当時、玩具市場のクリスマス商戦時の規模が700億円程度だったのですが、玩具の平均価格を1万円、絵本の平均価格を2000円と仮定すると、価格比率として20%。
もし1割の人が切り替えたと仮定すると……

700億円×20%×10%=14億円

当時の絵本市場規模が約260億円(年間)だったので、14億円の純増というのは1年で5%以上の増収ということです。
さらにそのプロモーションにおいては、売上額の5%程度と仮定することで約7000万円のコストが計上できることが分かります。

これはあくまでも推定値にすぎませんが、こうした概算を得た後で、実際との誤差を埋めるために調査を行うのです。

このように企画段階で具体的な推定値を出しておくと、PR予算の具体的なイメージを捉えることができるので、どんな施策が実施できるかという「提案の規模感」も明確になってきます。


プレゼンの説得力を向上する技

フェルミ推定が活用できるのは予算などの経済的な把握だけではありません。
そもそもアンケート調査自体が、抽出した調査対象の確率を母集団に適用するという推定値なのですから、あらゆる数値に適用できるのは当然のこと。

認知度や波及効果、集客動員効果などの数値にも応用でき、説得力の向上に貢献してくれます。

通常の調査との違いは「調べない」ということ。

調べて得られる数字は、アンケートをするなり、調査データを入手するなり、ネットでググるなりして把握すれば良いのです。
本当に説得力を向上してくれるのは、企画に対してでなく「企画者に対して」です。

企画のプレゼンテーションを行うとき。

企画書には調べた数字が記載されていますが、相手から企画書に無い数字の質問をされたとき、速やかに整合性のある回答ができるかどうかがプレゼンしている人物の説得力につながります。
「この人にプロジェクトを任せても大丈夫だ」と思わせ、企画の内容に関しても安心を感じられるようなプレゼンになります。

就職面接でフェルミ推定の問題を出されるのも、本人の資質を試されているということなのでしょう。
推定の内容よりも、ロジカルな推論を瞬時に展開できるかどうかが重要です。

このことを逆手に取って、プレゼンの最後に時間が余ったときなど、フェルミ推定を展開して将来的な展望を語ってみせるのも良いかもしれません。

論理的な発言は嫌味に映る場合もあるので、くれぐれもTPOには注意しましょうね(笑)


おわりに

今回は年末&クリスマスの配信なので、いつもの「広報の力学」をお休みして、企画テクニックとしての「フェルミ推定」について書きました。

私は広報担当というより、PRやコミュニケーションのプランナーの方が本業なので、今後も機会があれば企画の手法についても色々書いていきたいと思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。




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