見出し画像

【ミカタをつくる広報の力学】 #13 財務・法務と攻めの広報

今回は、社内でも堅いイメージがあるセクション、財務・法務部門についての話です。

どちらも法定開示や適時開示といった「ディスクロージャー」ではお馴染みの部門ですが、ここではあえて、財務・法務とつくる「攻めの広報」について書いていきたいと思います。


※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。


財務・法務の仕事について

まず財務と法務の仕事についてザックリ説明します。

・財務部門
日々のお金の流れを管理している「経理」に基づいて、企業価値を高めるための「財務戦略の立案・実行」、「資金の管理」、外部からの「資金の調達」を行う。

・法務部門
法律に基づいた企業運営を守るため、契約書のリーガルチェック等を指す「契約・取引法務」、会社の組織運営に関わる「機関・組織法務」、「紛争・訴訟対応」、「法務相談」、「コンプライアンス」などを行う。

要するに、会社運営に関わる、お金と法律のプロということです。

こう見ると両者はまったく別の業務をしているように見えますが、実はとても密接な関係にあります。

お金に関わることは、ズルいことが出来ないように、法律で規定している場合が多いからです。

会社法も、金融商品取引法も、不正競争防止法も、会社とお金に関わる法律です。

そして、会社法と金融商品取引法に基づいて情報開示をするのが「法定開示」です。つまりこの2部門は、広報とも密接な関係にあるということになります。


経済と法律とインサイト

冒頭でも書いたように、この2部門はディスクロージャーではお馴染みです。IRに関しては広報ではなく、財務や法務が担当している会社もあるかもしれません。

では財務や法務は、広報の協力を欲していないのでしょうか。
否。この2部門は広報からの情報を欲しているのです。

財務は経済のプロなので、自社株の相場は当然わかっています。経済を取り巻く環境の変化にも敏感です。

法務は法律のプロなので、現行法はもちろん、新しく制定された法令や判例にもアンテナを張っているでしょう。

しかしながら、両者が扱う分野は数値化されていたり明文化されているものが多く、曖昧で感覚的な人の感情、つまり「インサイト」は見えにくい

私は法務の人から、「法律上は正しいが、現実はどうだろうか」という質問を受けたことがあります。
謝罪会見で「法律上は問題ありません」と言ってバッシングに遭うケースを割とよく目にしますので、人々の感情に頭を抱えている法律関係者も多いのではないでしょうか。

広報パーソンには公聴会やソーシャルリスニングで市民の声に耳を傾けている人もいるので、ルールを重視しがちな法務部門や数字を見がちな財務部門にとっては、市民のインサイトを知らせてくれる重要な役割になるかもしれません。


財務・法務と「攻めの広報」

最近、財務や法務が「攻めの広報」に近づきつつあります。
ESG投資の流行が大きな理由のひとつでしょう。

「ESG投資」というのは、E(Environment=環境)、S(Social=社会)、G(Governance=ガバナンス)の3つで企業価値を測る投資方法で、投資家の間では、環境に優しい企業や社会課題に取り組む企業の企業価値が高まっているのです。

かつてのCSRでは、ボランティアやドネーション等の活動を投資家から怒られた企業も少なくないと思いますが、今回は国連のSDGsを背景にしているので、投資家に対しても説得力のある展開になったのだと思います。

法務部門が担当するガバナンスは、もともと株価に影響しやすい要件でしたが、環境問題や社会問題もそれと同様に重要なファクトとして捉えられ、ステークホルダーに対するPRが必要になってしまったのです。

これはもはや、ディスクロージャーで済む話ではありません。

広報部門とタッグを組んで「攻めの広報」に転じるタイミングが来たのではないでしょうか。

障害者法定雇用率や有給休暇取得義務など、労働に関する法律だけでも様々あり、新法に絡んだニュースは新聞とも相性が良いので、法務の協力を得てPRプランを立てるのは王道といえます。

そして財務・法務といえば、ハンコを必要とする書類が山ほどある部門です。今後、DXのネタの宝庫になるのではないでしょうか。


おわりに

今回は財務・法務を扱ったので、大企業向けの内容になってしまいましたが、個人経営でも法律家と取引をしている場合は、新しい法律を聞いてみるとPRのヒントになるかもしれません。

最後に少しだけ触れた「SDGs」と「DX」については、また機会を改めて書きたいと思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
共感してもらえましたら、スキやフォローをいただけると励みになります。

ではまた次回お会いしましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?