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【ミカタをつくる広報の力学】 #50 周年事業でミカタをつくる

本コラムは、おかげさまで今回、50回目という節目を迎えました。

というわけで節目に絡めたこじつけですが、今回は周年事業について書きたいと思います。
周年事業は、広報にとっても重要なファクトなので、ザックリおさらいしておきましょう。


※初めての方は、「#00 イントロダクション」をお読みいただくと、コンセプトがわかりやすいかと思います。


周年事業を実施する理由

10周年とか100周年とか、企業の設立やブランドのローンチから数えて節目に当たる年に周年事業が実施されますが、そもそも周年事業とは何のために実施されるのでしょうか。

周年キャンペーンなどの広告を見ていると、単なる販促の賑やかしのようにも見えますが、他にも重要な理由があります。

経済学の景気循環サイクルでは、設備投資の減価償却期間が10年、技術革新が50年の周期と言われ、経営学では、中期経営計画を5年、長期経営計画を10年とすることが多く、企業寿命は30年と言われることも。

これはかなり前の話で、現在の景気循環はもっと短くなっていますし、企業寿命という考え方がナンセンスですが、このような背景から、5年目や10年目の節目が「経営の方向性を見直す時期」と考えるのは自然な流れといえます。

上記のような理由から、企業が株主や従業員に向けて、今後の方針や計画を発表するとともに、これまでの感謝を伝えるのが慣例となっているのではないかと思います。

これが消費者向けの商品の場合は、今までの感謝を伝えるとともに、これからも変わらぬご愛顧をお願いしたり、少し離れていたユーザーには存在を思い出してもらうためにキャンペーンを打ったりするのでしょう。

そう考えると、バースデーとしての記念日的な要素で賑やかに攻めていくのも王道ではありますが、思いを伝えたり、関係性を深めたり、新たなステージに発展させたりするにも、良い機会なのかもしれません。
PR的に言うと「パーセプションチェンジ」のチャンスなわけです。

なので周年事業では、ロゴの刷新やリブランディング、組織のリニューアルなどのプロジェクトが組まれることも多く、周年を迎える1年以上前から「周年事業実行委員会」を社内に設置する企業も少なくありません。

実は、周年事業はやることが多く、結構大変なのです。


周年事業のいろいろな施策

周年事業の内容にはどんなものがあるのか。
増資や取締役の刷新といった経営・IR的なものは置いておいて、ここではコミュニケーションを中心に抜粋していこうと思います。

【イベント】
格式のある記念式典やカジュアルな社内イベントのほか、取引先も含めて広く開催する発表イベントなどもあります。
最近では消費者向けのファンミーティングなども開催されることがあるようですが、いずれも参加することで、体験を通じてブランドのビジョンを感じてもらうことが目的なので、イベント実施が困難な現在であっても、オンラインで開催することをお勧めします。

【社史・年史】
周年の王道といえば社史・年史。歴史の長い企業だと100年史があったりもしますが、最近の流行は、格式ばった年史よりもカジュアルなブランドブックに寄ってきているようです。
確かにハードカバーの分厚い年史は、立派で重厚感もあり、高い社格を表すには最適ですが、コミュニケーションを形成するには、もう少し面白くて読みたくなるコンテンツの方が向いていますよね。
今時はSNSで周年記念動画を流すのも良いかもしれません。

【CI・VI】
ブランドロゴのリニューアルだけでなく、周年専用のロゴをつくるケースも多くなってきており、周年の1年間に限り、名刺やコーポレートサイトに、「○周年」というロゴが入っているのをよく見かけるようになりました。
周年ロゴをつくっておくと、様々なツールに汎用的に使用できるので結構便利で、話のきっかけづくりにもなります。

【告知・広告】
プレスリリース、コーポレートサイトのほか、マス広告やメルマガ、SNSなど、各種媒体における周年の告知です。
周年を迎える年の元日に、新聞に新春全段広告を打つ企業も多いですよね。
上記の周年ロゴと連動してクリエイティブを展開していきます。

【記念品】
記念品には、思い出用と告知用があります。
思い出用は、従業員やステークホルダー向けに、周年を迎えられた感謝と絆を表すものなので、しっかりした造りの永く愛用できるものや、思い出としていつまでも残しておけるものを配ります。
告知用はいわばノベルティなので、ブランドイメージや周年コンセプトを伝えられるものを、得意先や消費者に配ります。
どちらにしても、ユニークで独自性のあるものの方が、訴求効果が高く喜ばれます。

【キャンペーン】
周年事業を自己満足で終わらせずに、営業活動やマーケティングに活用すると「周年キャンペーン」になります。
「10年間のご愛顧に感謝してプレゼントキャンペーンを実施します」などの謳い文句で開催するキャンペーンのことです。
当社が10年続けてこられたのは皆さまが支えてくれたおかげです、という理由で割引やプレゼントをするわけですが、この効果が意外と大きく、今まで知らなかった人もロングセラーの信頼性に惹かれてお試し買いをすることが往々にしてあるのです。

ざっと書き出しただけでも、これだけあります。

B2B企業とB2C企業でも違うでしょうし、すべてを実施すべきということもありませんが、「周年事業は侮れない」ということだけはご理解いただけたのではないでしょうか。


具体的な周年企画の事例

周年事業の内容だけを列挙してきましたが、これらを単純に実施してもコンテンツとしてはあまり面白くありません。
周年事業を面白くするには、企画が必要なのです。

今回は、私が過去に企画提案して実施にいたった周年事業を、少し詳しく紹介します。

2010年に公共交通機関からの依頼で、路面電車の100周年企画を提案することになりました。

路面電車というのは地域密着型で住民のインフラとなる存在なので、さらなる愛着を持ってもらえるよう、マスコットキャラクターをつくる提案をしたのです。

ただキャラクターをつくって発表しただけでは100周年のコミュニケーションとしては弱いので、出来るだけ多くの人に関与してもらえるよう、キャラクターイラストを公募することにしました。

結果、様々なメディアで露出を獲得できたおかげで、想定をはるかに超える応募が集まり、採用者や上位入賞者には賞金や景品を贈呈、着ぐるみも制作し、地元では鉄道ファン向けの発表イベントも開催しました。

面白いかどうかは別として、この企画の重要な点は、上記のコンテンツを多角的に組み合わせている点です。

オリジナルキャラクターをつくるので「CI・VI」を中心に展開していますが、「記念品」も贈呈し、「イベント」も開催しています。
基本的に公募コンテストなので「キャンペーン」に該当し、PRの露出なので無料ですが「告知」も出せました。

そのキャラクターは今年めでたく10周年を迎え、記念車両を運行するなどの周年事業を実施したそうです。


おわりに

今回は周年事業の話を書きましたが、過去の事例を紹介しただけで、提案要素の無いコラムになってしまいました。なので最後に可能性を一つ。

DX時代なので年史もデジタル化されることは想像に難くないですが、もちろん動画やアプリも登場するでしょう。
さらにD2Cが進むことで、自社の周年よりも、顧客との「お取引○年目」のように、それぞれの顧客ごとに周年が異なるシステムが出てきそうな気がしています。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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ではまた次回お会いしましょう。



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