「めんどくさい」を引き受ける覚悟が真剣なり


青野さんからモニター越しに伝わってくるのは「明るさ」だった。

パカーンと竹を割ったように快活で、清々しくて、参加者からの矢継ぎ早の質問に考える間もなく「ぼくの考え」を提示する。すごいなぁ。

最初からずっとこんな感じに明快だったのかな。
と思ったら、ぜんぜんそんなことはなかった。

講義で青野さんはなんども「匍匐前進してきた」と話されていた。
かつて離職率が28%に達し、毎週どこかの部署で誰かの送別の拍手が聞こえてくるなか、暴走車が自分に突っ込んでくる思考停止な妄想とスレスレに、泥くさいトライアンドエラーを日々くり返してここまできたのだと知った。

パカーンと竹を割ったように快活で、清々しい青野さんの「明るさ」は、明るくない時間を長いこと匍匐前進、まさに這いつくばって進んできた覚悟からくる明るさだった。

考える間もなくスパンと答えられるのは、もうそのことについて、すでにさんざん考えて、あまたのトライアンドエラーをしまくってきたからじゃないか。


社員100人100通りの関心に耳を傾ける風土が評判のサイボウズ。
今の雇用は1000人を超えたそうなので、1000通りか。

週休4日や、完全テレワークとか、中途採用時から副業希望とか。
それぞれのバラバラの要望(青野さんいわく「ワガママ」)に耳を傾けるのはどれほど大変だろう。

人間の関心はさまざまで、わがままで、でも、その人なりの理由があって。
多様性を受け入れるということは、めんどくささを受容することだ。

「他者の関心(めんどくさーいところ)」を認める会社の風土は、
「自分の関心(めんどくさーいところ)」を組織に受容してもらうことでもある。

それってすごく嬉しいだろうな。
「関心のありか」はその人の分身、アイデンティティみたいなものだから。

青野さんは離職率28%という会社の危機を、社員一人ひとりの関心の多様さ、当の本人「以外」からすれば「めんどくさーい」に向き合うことで、離職率3%までに下げることに成功した。

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             (縦書きしてみる)


私もこの冬たまたま、関心を絞る局面にいる。


絞るとは、残りを捨てることだ。長いこと考えて、絞られた関心「以外」の「それほどでもない関心」を手放すことにした。
自由にあれこれ選べる選択肢の多い日常に甘んじていた反動で、ちょっと勇気がいる。

収入源を2つ手放すことにした。
私にとっては大きい法人契約のルートを手放すことにした。
ゆるっと安定収入になっていた別の契約も、この春で更新しないと決めた。

覚悟を決めるために、退路を断って関心を絞りこむのは帰りの船を燃やす気分。
上陸しちゃった島で先に進むしかない。

自分の中に起こった変化で予想外だったのは、内心の「妙な静けさ」だった。
収入源や関心を絞って大きな不安にかられるかと思いきや、静かな観念がある。

ああ、「これ」をまっとうせずに死んだら後悔するなー、のカケラが
ようやく見えたのは、関心を絞って人生の焦点が定まりつつあるから。
それまでカケラすら見つからず迷走してきた時よりずっといい。

まだ原石レベルで純度の低い「絞られた関心」を、火に入れて熱くして叩いて伸ばして、また火にくべて、また叩いて、ちょー切れ味の鋭い【真剣】にしていく。

誰かを傷つける目的でつくられるのではなく、日々自分へ「覚悟を問う」ために握りしめる真剣を。


(収入源は多いほうがいいよね〜)
(今の時代リスク分散やリスク管理は大事だよね?)
(よね?) 

と、もっともな一般論を言いながら、どこかでうすうす気づいていたのは
結局は「これ」に覚悟を定められないどっちつかず状態で、論点をすり替え正当化するビビリの自分だった。


「これでいく」「それ以外は捨てる」と決めて、静かな観念もあって。

なのにしかしハウエバー、決めたはずの覚悟がときどき揺らぐ。
パキパキ決めていく自分の外的環境をよそに、内的環境はゆらゆら自問自答。

 しんがきA😃「やるのか?」
 しんがきB🙂「・・・うん」 みたいなボヤけたやりとり

したらば青野さん回のMBAL。タイミングの絶妙ったら。EMSったら。

揺らぐ自分の先、オンライン画面の向こうにドアップで、研ぎ澄まされた「真剣」を手にした大大大大先輩がいた。

「今も一日一回以上は、自分のテーマについて自問自答しています」

大大大大先輩は揺らいではいなさそうに見えたけれど、真剣を携えた人でも、いやだからこそか「日々自問自答」をしている。


「適当」と「真剣」という一見、真反対な言葉を大切にする青野さんは、
基本「世の中は適当で答えがない」から、今に集中する。
基本「組織はカオス」だからこそ、真剣にやる。

石碑の文言は刻まれたそばから陳腐化が始まり、石碑を大事にするほど言葉が一人歩きする。

「企業理念はぼくのエゴです。グループウェアで世界一になりたい。Googleに勝ちたい。理由はなぜかぼくにもわからない。魂がそう言っている」

青野さんのシンプルなメッセージは、真剣のごとく光る。

「では、家事育児に戻ります」

Essential Management School参加者とスタッフにさくっと挨拶し退室する青野さんが画面からフッと消える。去りぎわ鮮やか。

「だって大事なのは言葉じゃなくて、人間の心でしょう」
「作った瞬間から陳腐化するからつねに今を大事にするんです」

「今」の連続が真剣なんだ。


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         (全集中の真剣には遠い道のりでも)






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