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マクロ経済

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#リフレ派

日銀の政策転換と物価の展望

日銀の政策転換と物価の展望

日本銀行が、2024.03.19 に金融政策を大きく転換しました。(*1)
この政策転換が妥当だったのか、今後の物価の展望について、有識者の言説などを基に、考えてみます。

僕自身は、物価目標を安定的・持続的に達成する前の金融政策転換は、すべきでないと考えています。賃金上昇が実質消費の拡大につながり、価格転嫁や投資を促す好循環に至っていない、と考えているからです。

1.見切り発車の金融政策転換2

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欧米型コアでも2.3%の物価上昇

欧米型コアでも2.3%の物価上昇

2023年3月の消費者物価指数の公表がありました。
前年比(%)は、
総合:+3.2%
コア(*1):+3.1%
コアコア(*2):+3.8%
欧米型コア(*3):+2.3%
2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)3月分及び2022年度(令和4年度)平均 (stat.go.jp)

*1 コア:生鮮食品を除く総合
*2 コアコア:生鮮食品及びエネルギーを除く総合
*3 欧米型

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偉大なセントラル・バンカーの教訓

偉大なセントラル・バンカーの教訓

2023年、メディアの報道では余り触れられていないようですが、偉大なセントラル・バンカーの講演(*1)がありました。

(*1) Seven Reflections on Japan's Economy, Monetary Policy, and the Bank of Japan
Speech at the Center on Japanese Economy and Business, Col

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デフレ/インフレ期の日銀成績評価

デフレ/インフレ期の日銀成績評価

先日の日曜討論(2023.02.19)で、岩田規久男元日銀副総裁が、デフレ期とインフレ期の消費者物価指数の平均値(消費税調整済)に言及されていました。
実際にデータを使って、デフレ期(1998~2012年)、インフレ期(2013~2019年)の消費者物価指数を見て、日銀の成績を評価してみたいと思います。

(内容が良かった、気に入ったなど、よろしければ、スキ、共有、サポートをお願いします)

ポイ

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遂に決定?日銀正副総裁人事

遂に決定?日銀正副総裁人事

報道(*1)によりますと、黒田東彦日銀総裁の後任人事が固まったようです。
(*1)日銀新総裁に植田和男氏を起用へ 初の学者、元審議委員: 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB106UI0Q3A210C2000000

日本経済新聞が報じていた「雨宮副総裁」の昇格人事は消えてしまったようです。人事案の持つ意味、総裁候補の方のスタンスを考えてみ

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日銀の政策変更(2022.12.20)

2022年最後の金融政策決定会合で、日銀が動きました。
"国債買入れ額を大幅に増額しつつ、長期金利の変動幅を、従来の「±0.25% 程度」から「±0.5%程度」に拡大する" (*1)(*2)

この結果が伝わると、マーケットは株安・円高方向へ動く反応を見せました。
また、経済に詳しそうな名前の新聞では
・10年目で事実上の利上げ
・円安など副作用の批判受け
・長期金利急騰、円高も進行
などと報じま

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物価高騰をあおる残念な人が増える予感

物価高騰をあおる残念な人が増える予感

2022年5月6日に、消費者物価指数(東京都区部)の4月中旬速報値が総務省統計局で公表されました。(*1)
この統計によると、消費者物価指数(対前年比)は、
+2.5%:総合
+1.9%:生鮮食品を除く総合
+0.8%:生鮮食品及びエネルギーを除く総合
と、大きく伸びました。
東京都区部の消費者物価指数は、今月の5月20日に公表予定である全国の消費者物価指数と近い値をとるだけに、注目していました。

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黒田東彦日銀総裁の「良い講演」

黒田東彦日銀総裁の「良い講演」

日本銀行総裁の黒田東彦氏が、米国・コロンビア大学において講演(*1)を行いました。2022年4月27日・28日に金融政策決定会合が開催されるため、円安が進む中、金融政策に変更があるのではないか?と注目を集めています。
一部の経済系新聞では「悪い円安」と喧伝し、金融政策引締への圧力を強めている、と僕は見ています。
そのような中、黒田総裁が米国の講演で、次のようにご発言されました。

「悪い円安」や金

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日銀審議委員人事案の改善を望む

日銀審議委員人事案の改善を望む

報道によりますと、岸田文雄政権は日本銀行の金融政策を決める政策委員の人事案として、高田氏と田村氏を提示されたそうです。(*1)

日本経済、なかでも、雇用環境に大きな影響を与える金融政策を決める日銀審議委員の人事として、高田氏と田村氏を候補とする岸田文雄政府の人事案に反対いたします。

なぜならば、金融政策は雇用環境を通じて日本経済に大きな影響を与えるため、マクロ経済学、なかんずく、金融政策≒雇用

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【本】脱GHQ史観の経済学

【本】脱GHQ史観の経済学

田中秀臣さんの「脱GHQ史観の経済学」の読後感想です。

本書の主要テーマは
“日本における緊縮財政、もっといってしまえば日本社会の脆弱化、衰退化をもたらす経済思想を、特に占領期のGHQ(連合国最高司令部)と当時の日本の経済学者たちとの関係から考察する”(*1,p7)
ことだそうです。

経済、歴史、安全保障、時事問題を学べ、教科書で学んだはずの歴史とは異なる史実を学ぶことが出来る書籍です。

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リフレ派に関する連載ウォッチ#8

リフレ派に関する連載ウォッチ#8

武田真彦教授の連載12回の第8回は「インフレーション・ターゲティング」に関する内容です。

僕の評価は、武田氏の議論には大きな誤解があり、世界の先進国の多くで導入されているインフレ目標や、リフレ派が重視する「期待」に関しても残念な評価をしていると思われます。

“ 政策論としてこれを見た場合の大きな疑問は、「インフレ期待を操作する政策手段を中央銀行は有しているか」という点である。リフレ派は、「マネ

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リフレ派に関する連載ウォッチ#5

リフレ派に関する連載ウォッチ#5

武田真彦教授の連載12回の第5回は「量的緩和はインフレ期待に効いたのか」という記事だそうです。

結論から言えば、武田氏の記事では、QQEによるインフレ期待増加の効果を完全否定していません。
また、雇用環境改善など、国民の経済厚生に対する影響を考察しない議論に有用性を余り感じません。

僕の評価は、物価安定目標2%とその達成へのコミットメントを示し、それを裏付ける具体的な政策である「量的・質的緩和

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リフレ派に関する連載ウォッチ#4

リフレ派に関する連載ウォッチ#4

武田真彦教授の連載12回の第4回は、
マネタリーベースの増加とマネーサプライ・為替の関係についての記事だそうです。

(*1) 量的緩和がマネーサプライ、為替相場にもたらしたもの https://business.nikkei.com/atcl/seminar/20/00039/022500005/?n_cid=nbponb_twbn

僕はマネーサプライや為替に関する武田氏の論点よりも、雇用環境

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リフレ派に関する連載ウォッチ#2

リフレ派に関する連載ウォッチ#2

武田真彦教授の連載12回の第2回は、QQE以前の金融政策についての記事だそうです。
記事の注記にありますが“ 本連載の対象は金融政策の方法論なので、政策判断の是非には立ち入らない。”(*1)とのことです。

(*1)異次元緩和に至るまでのリフレ派の攻勢 https://business.nikkei.com/atcl/seminar/20/00039/022200003/?n_cid=nbponb

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