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短編小説

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#雨

数独

数独

 雨が降っている。バケツをひっくり返したような雨が。車、きれいになるかなぁ。バケツをひっくり返したような雨が降るといつもおもうし、ほんとうにきれいになっている。
 土曜日に修一さんにあった分だったけれど、雨だから無性に会いたくなりメールを打つ。雨だからという理由で。おもての仕事だしなという理由で。
 いや、理由なんていうのは嘘でほんとうは毎日会いたいのが本音だ。
『おふくろの通院で市民病院にいる』

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Warmth 

 雨が降っている。車のなかにいるけれど、雨はどうしたって憂鬱と頭痛を連れてこなくてもいいのに連れてくる。
 約束の時間になってもこない。メールも送信できない。電話も電源がはいっていないか電波のどとかないところにいてかかりませんと機械的にいわれて閉口をする。
 どうしよう。
 雨がフロントガラスをこれでもかと叩くように打ちつけてくる。
 途方に暮れるしかなかった。
 なおちゃんは来なかった。
 『ホ

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マンネリ渦

マンネリ渦

 このご時世になってからというもの毎週といっても過言ではないないほど、修一さんとあっている。
『出歩くのもこわいし、飲みになんていく気にもならないし』
 が、もはやの口癖になっている。
 そうなると自動的に時間ができるとわたしにあえる? という連絡がくる。以前など一ヶ月もあえないときなどざらにあり、もっとあわなかった時期など半年という時期もあった(奥さんにバレたとき)
 あわない時期が長いほどあい

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疼くひと

疼くひと

 雨がずっと降り続いている。
 洗濯物はなかなか乾かないけれど、それとは比例して心と体はすっかり乾いている。
『渇いているの。助けて』
 祐希くんにLINEを打つ。
 別に既読にならなくてもいいしなんなら返事も期待などしてはいない。
『渇いているの。こんなにも雨が振っているのに』
 3分してからまたLINEを打つ。前回 LINEをしたのはもう20日も前だったんだとその日にちの間にびっくりする。
 

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『事故物件』

『事故物件』

(ブブブ)
 布団の上にあるスマホが震え、まだまるで覚醒をしていない頭でスマホに手を伸ばし画面に目を向ける。
 え? なんで? お盆なのに? 
『なにしてる?』
 修一さんからだった。
 直人不在の布団の中でおどろきながら返信を返す。
『寝てた』
 短くけれどほんとうのことを打つ。
『今実家。あえないか』
 ずるいとおもう。あえないなどどいえる訳がない。知っているくせに彼はわたしをときに試すことを

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グリーンのマキシワンピース

グリーンのマキシワンピース

「あすはどっかにいこうよ。うちにばかりいると酒ばかり呑んじゃうでしょ?」
 お盆休みの真っ只中。
 直人のうちにふいにいくと酒を呑んでソファーで舟を漕いでいたので、目が覚めたタイミングを見計らって提案をしてみる。
 眠たいし気だるそうに口を開く。目を細めて。とゆうか目が糸のようにもともと細い。
「……うん。そうだね」
 気もそぞろ。その単語がぴたりと当てはまるような口調でこたえた。
 気が向いたら

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雨

 雨が降っている。それもバケツをひっくり返したような大雨が。車、きれいになるかも。わたしはそうおもいながらわが愛車フィアットのハンドルをおそるおそる握りしめる。
【ブーブー】
 助手席においてあるスマホが振動をし、信号に引っかかったとき、手に取る。
 その名前をみて、はっとなる。と同時にそんな気もしていた。なぜならバケツをひっくり返したような雨だから。
 修一さんからだった。
 時間ある? という

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「わかせんめい?」

『早く帰れそうなら連絡する?』
 ヘルスバイト先につき、待機をしているときに修一さんからなぜか、連絡する? というなんで『?』が最後につくのかわかならいけれどメールがきてびっくりして声をあげた。
『うん。あいたい』
 ヘルスバイトに来たぶんだった。そのタイミングでももちゃんお客さんだよと仕事が入る。返事を待たず仕事をしだす。65分のコースだった。
 指名だったので初見ではないだろうとおもっていた。

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9月17日

9月17日

 生きているのが辛いのと彼にいう。
 どうしてなの? とは絶対に聞かない。そのかわりあたしの裸を見たいといいワンピースを脱がし下着を剥ぎ取って抱きしめる。
「生きていたら何か楽しいことがあるから、ね」
 ホテルの一室からは海が見えまばゆいほどの眩しさに目を細める。ヨットがたくさんごま塩のようウヨウヨとしている。
 ヨットがますます増えていき、あれと思っているとまた泣いていた。最近あたしは最も泣いて

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