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9月17日

 生きているのが辛いのと彼にいう。
 どうしてなの? とは絶対に聞かない。そのかわりあたしの裸を見たいといいワンピースを脱がし下着を剥ぎ取って抱きしめる。
「生きていたら何か楽しいことがあるから、ね」
 ホテルの一室からは海が見えまばゆいほどの眩しさに目を細める。ヨットがたくさんごま塩のようウヨウヨとしている。
 ヨットがますます増えていき、あれと思っているとまた泣いていた。最近あたしは最も泣いている。どうしょうもなく泣けてきてしようがないのだ。
 仕事にも行っていない。無断欠勤。
 電話も無視している。あたしはそれだけの存在だったのだろう。誰からも必要とされない愚かなあたし。
 死にたい死にたいというやつは決して死なないよ。彼は抑揚のない声でつぶやく。そうかもしれないしそうでないかもしれない。わからないよ。そんなの。あたしはまた泣き出した。
 ヘルスでまた働いている。もうどうでもいい。男があたしの体を必要としてくれる。お金じゃない。承認欲求の塊でけれどあたしは一体何に拘泥しているのだろう。
 体を提供することだけしかできないあたしはこの先どうしたらいいかわからない。わからないことだらけの世界でますますわからなくなってしまっている。
 水族館に行った。
『クラゲが見たい』とわがままをいったのだ。はたしてクラゲはいた。神秘的なクラゲの生体に目が釘ずけになる。たくさんはいなくてまばらにいた。ふわふわと気持ちよさそうに浮いている。
 クラゲになりたいな。彼はふとあたしの顔を覗き込む。なれないよ、と彼はふふふと笑う。いや、絶対になるの。あたしはほとんど叫んでいた。
 泣きながら20分くらい眺めていた。幸いにもお客さんは平日で少なかった。彼はずっと横にいてあたしの背中に手のひらを当てていた。
 じっと見つめているとなんとなく心の中の憂鬱が少しだけ緩和したけれど、バックから安定剤を出し口の中に入れ噛み砕く。一連の流れを彼は黙って見ていた。
 彼の目の中が潤んでいると察したときあたしはまた涙を流した。
 クラゲになりたいとさらに思い、なかなかその場を動けずにいた。
 帰りにクラゲのぬいぐるみを買おうとして思わずウツボのぬいぐるみを買ってしまった。かわいい顔をしていた。
「かわいい」
 あ、と彼が口を開き、やっと笑ったと微笑む。
 ニタニタと笑い顔を故意に見せると、気持ちわるっと一蹴されその顔を真顔に戻すと今度はまた泣いた。
 空が急にグレーになりだし遠くには雲がたちこめている。雨が降ってきそうだった。
 ウツボを握りしめ泣いているあたしは一体誰なのだろう。わからない。
 明日は雨だろうか。

 きっと傘を忘れるよとそっと折り畳み傘を彼は入れる。黄緑色の変な傘を。クラゲの傘が通販で売っているからそれ欲しいのとねだってみようか。泣きっぱなしだし

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