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自宅で一人で20年 仕事に向きあい続ける習慣術

2回目の投稿です。

フリーランス・デザイナーの井上新八です。

主にブックデザインの仕事をしています。
年間にデザインする本は多いときで200冊くらいになります。
少ないときでも年間150冊以上はデザインしています。
職場は自宅です。
スタッフもアシスタントもいないので、1人ですべてやっています。
20年くらいこのスタイルで働いています。

ブックデザインの仕事と言っても、
どういう仕事をしているのかいまいちわかりにくいと思います。
なので1冊の本のデザインの依頼を受けて、
完成するまでのプロセスをざっと図にしてみました。

仕事の仕方33


これが1冊の本の大まかな工程です。
ぼくの場合は大体こんな感じです。
他の人がどうかは知りません。
これを年に200回。
改めて見るとぞっとします…。

ただ、これが仕事の全部ではありません。
これは装丁(表紙・カバーまわり)だけをデザインする場合。

本文のデザインも担当する場合は、
これに加えて、
文章を流し込むための本文のフォーマットのデザインや、
目次、イレギュラーなページ、
図の作成や、ときどきイラストも描きます。
文章を流し込んだり、
本文の赤字を修正するDTPの作業は別の方に担当してもらいます。

最近作った本だと「カレンの台所」は本文もデザインしました。

「アウトプット大全」では本文デザインに加えてイラストも描きました。

更に全ページをデザインする本もあります。

文字通りページを1ページずつ全部デザインします。
入れる写真を探したり、イラストの図案まで考えるものもあります。
さすがにものすごく時間のかかる仕事なので、
年に何冊かしかここまでの仕事はできません。

最近全ページ作った本だと、
「きみはスゴイぜ!」
翻訳本ですが原稿を読み込んで原書とは全然違う世界観を作りました。
去年の夏前から作っていたので1年くらい。長かった。もうすぐ発売。

少し前の本ですが、
文章を読み込んでイメージ写真を探しながら作った
フォトエッセイのような星座占いの本「12星座シリーズ」。
1年で12冊。大変でした。

写真ト例

これまた古い本だけど「スリー・カップス・オブ・ティー」では
中面の挿し絵を全部描きました。
デザインしながらイメージしていた
影絵のようなイラストを描く人が見つからず、
結局自分で描きました。

イラスト例

どこまでやるか、仕事の幅もあるけど、
装丁だけの仕事でも、かかる時間はまちまちで、
依頼が来てから終わるまで、
早ければ数週間、通常で1ヵ月半〜2カ月くらいかかる。
長いと1年とか、最長で3年以上作り続けた本もある。

なので常に30冊くらいは仕事が同時進行しています。
多いときは50冊を超えることもあって、さすがに少しパニックになる。

依頼とか、確認とか、修正とか、修正とか、確認とか、
修正とか、入稿に向けた進行とか、修正とか、
全部ひっくり返ってやり直しとか、メールが山のように来ます。
多いときは1日に200通くらいメールをやりとりする日もある。

考えると、うげーーーーってなる。

いったいどうやってこなしているのか…。
大変です。死ぬほど大変ではありますが、
これが意外にもそんなにストレスなく回っているのです。

細かな実験と工夫を繰り返して、
膨大な仕事がうまく回る仕組みを作ってやってきました。
細かく全部を説明するのは難しいですが、
どんなことをやっているかできるだけ言語化してみようと思います。

はじめに言っておきますが、ほとんど何の参考にならないと思います。
ただ、基本はいたってシンプルで単純です。
そこは何かの役に立つかもしれません。
膨大な仕事に頭を悩ませている人のお役に立てばいいなと思います。

○考えるな、片づけろ

仕事を終わらせるには、どうするか。
終わるまでやるしかない。

当たり前だ。
当たり前だけど、それ以上に正しいことがこの世には存在しない。

1人で自宅で仕事していたら、なおさらだ。
誰も手伝ってくれないし、誰も代わってもくれない。
とにかく、終わるまで自力でやるしかない。

目の前には膨大な仕事の山がある。
大なり小なりみんな抱えているはずだ。
効率よくやっていかないと仕事はたまっていく。
どんどんたまっていくとパニックになる。
終わりが見えなくなって、
一体何から手を着けたらいいのか何も考えられなくなる。

そうならないようにするにはどうしたらいいか、
答えは「すぐやる」しかない。

何でもすぐやるようになるには、
「考えない」で「動ける」クセをつけるしかない。

何も考えずに適当に仕事を終わらせるという意味ではない。
「余計なことは考えない」という意味だ。

大量の仕事を終わらせる秘訣は、
次に何をするか、どの順番で片付けるか、
いちいち考えずにいかにすぐ動けるか
にかかっている。

ブルース・リー的に言えば、
「考えるな、片づけろ」だ。

図02-1-2

ぼくは細かなスケジュール管理は基本的にはやってない。
スケジュール帳に細かくスケジュールを書いたり、
それぞれの作業に時間を割り振る時間が無駄だと思ってるからだ。

すぐやれることはすぐやって、スケジュールに書き込む時間を省いたほうが楽だ。
もちろんある程度は書きとめるし、むしろメモをフル活用してる側面もある。
(追記:スケジュール管理・メモの活用は次の投稿で詳しく紹介しましたこちら

これは1人でやっているから成立する話かもしれないが、
とにかく余計なことは何もしたくない。
時間がもったいない。

やるべきことは、仕事を終わらせることと、質を高めること。
余計なことは考えずにやることに集中して早く終わらせる。
でもしっかり質は高めていく。
そうなるための「仕組み」を自分なりに作って習慣化してきた。

積み重なっていく大量の仕事を前にして、
なるべく仕事にストレスを感じずに、
できるだけ楽しみながら、
クオリティを維持し続け、
確実に締め切り内に終わらせる。

これをしっかりやらないと
ぼくのようなしょぼいフリーランスは生き残れない。

○分解して名前をつける

大変だと思ってることは、たいていの場合、
何をしていいかわからないから大変に感じるのだと思う。

大変さの正体を知ると大変なことは大変でなくなる。

どうすればいいか、
大変な事を分解して具体的な作業名をつけて
行動を「言語化」することだ。

大きなものは、分解すれば小さなパーツの集合体になる。

大変だと思う膨大な仕事は、一個一個の仕事の集合体。
その一個一個の仕事も小さな作業の集合でできている。

まずはできるだけ細かく分解する。

装丁のデザインをはじめるにあたって
作業自体をパーツに分解するとこうなる。

・資料を読む
・イラストの候補を探す
・写真の候補を探す
・本のサイズの四角を画面に作る
・タイトルの文字を画面に置く
・著者名を置く
・文字の位置や大きさを決める
・写真かイラストをおく
・帯コピーを配置する
・位置や大きさを変えて整える

こんなことはいちいち書き出したりしないけど、
パーツに分けると大体こういう作業になる。

この中の作業の1つに手を着けてみる
手を着けるものは何でもいい。

できれば単純に手を動かすことの方がいい。
このリストで言えば「本のサイズの四角を画面に作る」
一番頭を使わずに終われそうだ。
だからまずそれをやる。

スクリーンショット 2020-05-31 16.42.47

書類を書くなら日付を書くとか、
原稿なら仮のタイトルの一行を打つとか、
そういう一番簡単なことでいい。


○作業に作業を重ねていく

具体的な作業1つに手を着ける。
これがすごく重要だ。

何でもいいから手を動かすこと。
何もやりたくなくても
「画面に四角を描く」くらいは簡単にできる。
デザインを進めるのではない。
ただ、白い画面に四角を作るだけ。

四角を作ったら次にタイトルを入れてみる。
次に著者名をいれる。
大きく入れるか小さくするか考える。
帯のメインコピーをいれてみる。
そうやって、一つの作業をはじめたら、
次の簡単な作業を3つ4つ重ねていく。

スクリーンショット 2020-05-31 16.44.59

そうしていくうちに勝手にデザインが始まっていく。
エンジンがかかって、頭が勝手に動き出していく。

○考えるのは手を動かしながら

何も動き出さずにぼーっと画面に向かって、
手を止めたまま、どうしようかと考えてる状態が一番無駄だ。

どうせ考えるなら、
手を動かしながら考えた方がアイデアがまとまりやすい。

「よく頭の中にできてるから大丈夫」と言う人がいる。
もちろん否定はしない。
実際、その達人の極みを20年前の編集者時代に、
間近で見て驚愕したことがある。

「頭の中でできてる」と言って締め切りになっても
一行も原稿を書いてくれない大御所の評論家の方を担当した。
最後は自宅に押しかけて書くまで帰らないと粘って、
「じゃ、書くよ」と原稿用紙に向かってもらった。
ほどなく手書きで原稿用紙にすらすらさらと書き始め、
かなりの長文だったにもかかわらず、
ほとんど消しゴムも使わず、数時間で書きあげて、
規定の枚数の原稿用紙の最後のマスぴったりに
「了」の文字を書き込んで執筆を終えた。
常人には信じられない光景だった。
本当に頭の中で完璧にできあがっていた。

ただ、それは本物の達人の技だ。
ぼくのような凡人には到底無理な話だ。

僕の場合は頭の中に「ある」と思っているものを
実際形にして出してみようとすると、
それは全くとらえどころないもので、
実は存在していなかったのかも?ということが多い。

「頭の中にイメージがあるからすぐできそう」なものほど、
生み出すのが困難だったりする。

ありそうでないものを
具体化するのに時間がかかるからかもしれない。
とにかく簡単そうなものほど、難しくて時間がかかる。
何もアイデアがないものの方が、すっと作れたりする。

ただこれはすごく重要なプロセスで、
このぼんやりしたイメージを形にしていくことこそが、
この仕事の醍醐味でもある。
だから時間をかけて楽しんで練り上げていく。
ただ思ったより時間がかかるから、
なるべく早く取りかかる方がいい。

「簡単にすぐできそう」という安心感を
ぼくは一切信用していない。
すぐ終われそうなものほど早く手を着けて、
まずは形にしてみる
ようにしている。

デザインだけでなく、今書いているこの原稿もそう。
まず書きはじめる。
考えているだけでは絶対に終わらない。


○準備運動としてのルーティーン

「すぐ手を着ける」と言うけど、それができれば苦労しない。

わかります。ぼくもそうでした。

それをどうにかするための仕組みが前回投稿した
「朝のルーティーン」だ。

これは自動的に仕事に向き合っていくための準備運動のようなもの。
そして長距離走でいうところの
セカンドウインドを意識的に作る仕組みだと言える。
セカンドウインドというのは、
長距離のランニングで、走りだして15分ぐらいたつと
心拍数や血圧が安定して楽になっていく状態のことだ。

とにかく考えずに動き出す。
そうするための仕組みを自分なりに作っていくしかない。

○余裕のある状態を作る

打ち合わせをしたらその翌日には必ず仕事に手を着けている。

そしてどんな形でもいいからデザインを1案は仕上げるようにしている。
まだ時間に余裕がある状態で、できれば完成形をひとつ作ってしまう。

仕事によってはそんなことできないだろうから、
その場合は最後までの道筋だけは作っておくといい。

今、この原稿を書くのもそうしている。
すぐに書き終わることはできないけど、
最初にすごく雑なプロットを最後まで書いた。
別に仕事でも何でもないんだけど…。

これは「終われる」もしくは「終わった」
という意識を最初に作ってしまう
ためのものだ。

こうすることの一番のメリットは
締め切りから自由になれるということ。
もうできてるからいつ締め切りが来てもあまり怖くない。

これで精神的な余裕が生まれる。
余裕のある気持ちで仕事に向き合っていける。

○一度寝かせて別の自分で向き合う

はじめに最後までの道筋か、
完成形を作って余裕のある精神状態を作る。
それから余裕のある気持ちでそれに向き合っていく。

一度作ったものを数日寝かせて、細部を練り込んで精度をあげていく。

それと並行して、ぼくの場合はもうひとつやっていることがある。
最初に作ったものは忘れて、
もう一度ゼロから新しい案を作るというものだ。

何でこんなことを始めたか。
それはあるデザイン事務所の仕組みを知ったから。
その会社はチームで作っているので、
何人かでひとつの仕事に一案ずつ案を出して、
それを出版社でコンペにかけて採用された人が仕事を担当するのだという。
まったく違うパターンが豊富に出てきてすごくいいと編集者から聞いた。
これは勝てないなと思った。それにかなりの危機感を抱いた。
そんな危機感から苦肉の策ではじめたのがこの方法だ。

1人でチームは作れないけど、
1人で何人か分の働きをすることはできるかもしれない。
打ち合わせの翌日の自分、その2日後の自分、6日後の自分、
日が変わると気分も変わっているし、向き合うテンションも違っている。
そんな3人の自分で競い合う1人コンペ方式(アホか…)。
これを全ての仕事でやるようにした。
もう5年くらいは続けている。

○意識的にザッピングする

なかなかいいアイデアが出てこない。
そんなときはあまりこだわりすぎずに、
別の仕事に手を着けて気を紛らすことにしている。

ちょっと行き詰まったとか、少し気分を変えたいとか、
あまり理由がなくても
意識的に仕事をザッピングしている。

こっちのデザインとあっちのデザインを
行ったり来たりしながら作業を進める。
作業をしていて少し行き詰まると手が止まってしまう。
どうしようかな…って、ぼーっとしてしまう。
そうならないように仕事を常にザッピングして、
意識的に頭のスイッチを切り替えている。
ジャンルをまたぐことで意外なアイデアが浮かぶこともあるし、
別の目的で探していた写真が他の仕事で使えるかもという
思いもよらぬ結びつきをしたりメリットが多い気がしている。

もうひとつどうでもいいことだけど意識的にやってることがある。
常に仕事している横でテレビをつけてドラマやアニメを流している。
テレビがない環境では、周囲の音が聞こえるイヤホンをつけて、
ラジオクラウドかラジコでラジオ番組を聞いている。

これは単なる趣味ではあるのだけど、
仕事に向き合いすぎないための工夫の側面もある。
仕事が膨大に山積みになって、いつ終わるか分からない状況も、
「さ〜今日は海外ドラマを何話見れるかな〜」というふうに考えられる。
これでだいぶストレスを感じないですんでいる。

図02-4


○締め切りをルール化する

締め切りがないと実は何も始められない。
締め切りとはそういうありがたい存在であったりもする。

何かを始めるとき、
「いつまでに」という期限がないと人はなかなか動き出せない。
人の意志は期限がなくても動き出せるほど強くはできていない。

期限があるから仕事ができるのだ。

幸いなことに仕事には必ず「締め切り」がある。
「期限」だったり「納期」だったり言い方は違うかもしれないが、
いつまでにやらなければいけないか、その期限がある、はずだ。
少なくともぼくのやってる仕事にはある。

期限がないとやらない。
だからこの原稿も「月曜午後まで」と自分で期限を決めた。

少し話はそれるけど、仕事で一番大切なことは
「締め切りを守ること」
だと思っている。

「誰が見ても良いデザインにする」とか、
「絶対に売れるデザインを作る」ことは約束できないけど、
「締め切りを守る」これは約束ができる

締め切りだけが唯一守れる約束事だ。
だからこれだけは20年一回も破ったことがない。

ぼくのような受注で仕事をする人は締め切りさえ守っていれば、
どうにかやっていけるのではないかと思っている。

そのくらい重要なのが締め切りだ。
だから絶対に締め切りを守るために自分なりにルールを作っている。

ぼくの場合、仕事の案件によってによって締め切りがまちまちだ。
最初のデザイン案を出すまでに10日や2週間のこともあれば、
ひと月以上余裕があることもある。

たくさん同時進行させていると、
いちいち個別の締め切りを覚えてられない。
なので締め切りについては、個別に考えないようにした。

ぼくの決めているルールは、
打ち合わせの日(つまり仕事のスタートの日)の7日後を
「最初のデザイン案を提出する日」にする
こと。

どんなに短くても期日が1週間より短いことはない。
通常10日はある。
だからそれより早く出す意味でも、この1週間はちょうどいい。
万が一その期日周辺がとんでもなく忙しくて対応できない時でも、
実際の締め切りには余裕があるから多少遅れても問題ない。

打ち合わせで実際の締め切りを確認はするけど、
勝手に早く締め切りを短縮することで精神的にはだいぶ楽になる。

図02-5

自分なりに締め切りを作るというのは、
遅刻をしないとか、そういうことにも役に立つはずだ。
常に15分早く時間設定するとか、
そういうクセをつけていくといいように思う。

いま読み返して、このくだりは実は危険だったかも…と思っている。
どうか担当の編集の方が読んでいませんように。
締め切り1週間後でいいんじゃんって思わず、
できるだけ余裕のあるスケジュールでお願いします。


○最後にもう一度リセットする

さて、自分なりの締め切りが来る。
ここで作ったデザイン案を送るのだけど、
ここで最後にもうひと仕事している。

最後に1案、今までになかった案を作り足すようにしている。

手放す瞬間の最後のあがきだ。
思いつきで15分くらいでできてしまうこともあれば、
けっこう大変な作り込みになって数時間作り続けてしまうこともある。
(このせいで1日のスケジュールがめちゃくちゃになったりする…)

もう送る準備は完全にできている状態から作るから、
気持ちには最大限の余裕がある。
大胆な案を作ることができるし、
他のとそんなに変わらないじゃん!って時もあるけど、
なんじゃそりゃ?っていう変わったデザインができることもある。

あまりに空気が違っていたり、
送るまでもないようなものができてしまったときは送らないけど、
そこそこ面白いものができたら追加して送るようにしている。

結果、この最後のあがきが支持されることが意外に多い。
4年くらい前に何となくはじめた習慣なんだけど、
最後に追加した案の採用率が年々上がってきている気がしてやめられない。
ぶっちゃけ、それなら送る直前にぱっと作って送ればよくねぇ?って思うけど、
そういうものではないことは自分が一番よくわかっている。


○来たら打つモードに切り替える

デザイン案を提出することで、
何となく仕事の大半が終わった気がしてしまう。
実際終わったのは仕事の進行的には3分の1くらいのものだのだけど、
気分的にはほとんど仕事が終了したも同然になる。

図で言うとここまで。
じつはここから世にも恐ろしい修正・調整合戦の始まりになるのだけど、
そのことは考えても無駄なので考えないようにしている。

仕事の仕方22


ここから先は少しモードが変わる。

これ以降の作業はひたすら「すぐやる」だ。

来たら、打つ、その繰り返し。
「すぐやって、すぐ送るモード」に切り換えて、
修正も、作り込みも、装丁の全面作成も、用紙選びも、入稿も、
連絡が来たらすぐやる。
すぐやりさえすれば、遅れることはない。

図02-6

これで大体の仕事は順調に進んで、
多少のごたつきはあっても、問題なく終わっていく。

ただ問題なのが、ちょっとした修正で終わらない場合。
つまりほぼやり直しになるか、全部やり直しになるパターンだ。

自分では「すごくいいのができた〜っ」て思っているときほど、
思わぬリアクションが来ることが多い。
「イメージしてたのとなんか違うんですけど〜」
(っていう人ほど打ち合わせの時に「お任せします」って言っている)
「なんか○○がこうじゃないと言ってるんですけど〜」
「タイトルが変わっちゃったんですけど〜大丈夫ですか〜ご検討ください〜」
みたいな連絡がくる。
言い方は違うけど、大体こういう感じで脳には伝わってくる。

悪いのは全部自分だ。
すべては自分の力不足のせいだ。

ただ、はっきり言ってダメージがデカイ。
2日は落ち込んで寝込みたい気分になる。
20年近くやってても、ダメージの大きさはそれほど変わらない。

ただ打たれ強くはなった。
いや、落ち込んでるヒマがなくなっただけかもしれない。
いずれにしろ最近はそれほど動じずにすむようになってきた。

過去にもっとひどいことがあった、
あれを乗り越えられたから、
この程度は大丈夫と思えるようになってきた。
数を重ねてきてメンタルが強くなったということか。
何事も経験だ。
長くやっててよかったと思える瞬間だ。

それに他にたくさん仕事を抱えていると、
幸福な進み方をしている仕事のありがたさに救われたり、
同じくらいキツイ進行の仕事があると、
あっちよりこっちの方がましかもという痛みの分散ができる。

いずれにしろ、どうにかするしかない。
ダメージが大きいときは
「すぐ解決」して「スッキリする」のが一番健康にいい。

やり直しはやり直しなので、ゼロからスタートなのだけど、
少なくとも1週間考え抜いた案が正解とは違っていたという
「答え」だけは手に入れた。
だから本当の意味でのゼロからのスタートではない。
解決策はある。
今までとは反対のものを作ればいい。

すべての仕事をストップして、
まず目の前の最大な困難に立ち向かう。

恐らく他の仕事をやってても、頭がうまく働かないはずだ。

とにかくここでも「すぐやる」ことだ。
すぐやって、すぐ忘れる方がいい。
「すぐやる」体質を作ることが、メンタル的にも重要なのだ。

やり直しになった、きつかった、くそーみたいな、負の感情は残さない。
すぐ別のことに取りかかって、何事もなかったようにした方がいい。
とにかく引きずらないこと。
すぐやって、すぐ忘れる。これが一番健康にいい。

ここからは少し雑になるけど、
「すぐやる習慣」として心がけていることについて書いてみようと思う。

○すぐやる習慣1 セットにしてやる

何となく先送りにしてしまう領収書の整理や請求書の発送など、
そういう単純作業や雑用仕事は忙しいと面倒になる。
でも忙しいときほど必ず時間を作ってすぐ処理した方がいい。
10分で終わることを先送りにして山にしてしまうと、
それだけで何時間も時間を取られる
ことになる。
だから細かな事ほどためこまないようにする。

一例を出すとこういう工夫をしている。
完成した見本誌が届いたら、請求書を出すのだけど、
これがけっこうな手間でつい先送りにしてしまっていた。
ホームページに書名を載せるというのも面倒で、
更新することを優先して作ったこんなしょぼいホームページですら、
冊数をためてしまうと全然更新しなくなっていた。

仕事はためると面倒になる。
だから数年前から完成した見本誌が届いたら、
どんなに忙しくても、
「お礼のメールをする」「請求書を書く」「請求書を発送する」
「ホームページに書名を載せる」これをセットにして、
作業時間10分を作ってやってしまうことにした。
「すぐやる」「セットにして全部やる」これでだいぶ楽になった。

図02-3

○すぐやる習慣2 すぐ返信・対応する

メールで突発的なちょっとしたお願いが来ることがある。
これもできるだけすぐやる、
もしくはメールを返信するようにしている。

返信に関してもルールを作っている。
「了解しました。やります」
というような単なる返事は返さない
ようにしている。

20分以内で終わることなら作業の手を止めて
すぐに作るか、対応するかして、結果と一緒に返事を返す。

1時間くらいでできることなら、
しばらくメールをそのままにしておいて、
やれるタイミングが来たら作るか、対応するかして、返事と一緒に送る。
翌日になってしまいそうなときは、「明日送ります」という連絡を入れる。

とてもすぐには取りかかれないようなことの場合は、
「いつまでにやります」という期限を決めてすぐ返信をする。
やることはすぐにメモに書く。

お願いに対する返信メールには必ず次のステップを添えて送る。
これはメールのやりとりの回数を減らすために心がけている習慣。


○すぐやる習慣3 すぐメモする

細かなタスク管理はやらないけど、
すぐに解決できないことや忘れそうな案件は、
すぐにメモを残す
ようにしている。
使っているのはMacに最初からついてくるメモ機能。

スマホでもPCでもどのデバイスからもアクセスできて、
テキストが打ち込めれば使うソフトは何でもいい。
余計な機能はいらない。テキストエディターで十分だ。

すぐできないことは、すぐにメモする。
用件だけ書いておけばいい。
いつやるか書くこともあるけど、基本はやれるときにすぐやるだ。
終わったらメモは消す。
記録は残さない。

このやることのメモが片付いた状態で1日が終わるのが、
ベストの状態だ。

毎日やれることをやりきって、
仕事の残量をゼロにしていく、その繰り返しだ。

○すぐやる習慣4 先に楽しみを予約する

こうやって書いていると仕事漬けの1日のように見えるけど、
実はそうでもない。

基本は映画を見る、映画館に行くことを中心に1日を組み立てている。
(この2カ月はこの事態で途絶えてしまっているけど…)

まず見たい映画を探して、
気になる映画があったらすぐにチケットを予約してしまう。
その映画のスケジュールを中心に1日のスケジュールを組み立てる。

その日のチケットならその時間を目標にして、
間に合うように全力で仕事を終わらせる。

打ち合わせで外出する時も同じ。
映画の時間を中心に時間配分と
打ち合わせ場所を組み立てて1日を設計する。

毎年、年間に250本以上は劇場で映画を見ている。

今は映画館に行けないので、
家のプロジェクターで代用しているけど
上映時間が決まっている映画館に比べて強制力が弱い。

やはり時間に強制力が働く映画館が理想的だ。
その時間に向けて全力が出せる。
ご褒美という名の締め切りだ。

とにかく色々リセットする意味で映画館はすごくいい。
強制的に「映画を見る」というひとつのことに集中できる。
気持ちもリセットされるし、単純に面白い。
ぼくの人生は映画に救われている部分が多い。

さて、だいぶ話はそれたけど、
これが自分なりに大量の仕事をこなしている習慣術だ。

長々書いてきたけど、
言ってるのは「手を動かす」「すぐやる」「締め切りを作る」「締め切りを守る」
という単純で基本的なことだったりする。
だから長く読んでいただいた割りに何の収穫なかったのでは…と。
まぁ、少しでも面白く読んでもらえたら嬉しいです。

本当は今回の原稿で「スケジュール管理と整理術」
のようなことにも触れようと思ったのだけど、
それなりに長くなりそうなので、
さわりを少しだけダイジェストで紹介してみます。

○おまけ:スケジュール管理と整理術

▲スケジュール帳を簡略化する
基本的にぼくはスケジュールを細かく管理していない。
何でもすぐやっちゃえばいいと思っているからだ。
スケジュール帳には打ち合わせの予定だけが書き込んである。
締め切りについても「自分なりのルール」で動いているから、
いちいちメモしていない。
スケジュール帳にある打ち合わせの日の1週間後が、
デザイン案を出す締め切りの日になる。

▲仕事の進行管理はメールのトップ画面で自動管理する
全ての連絡ツールはメール一本に統一している。
進行中の仕事の管理はメールのトップ画面で行っている。
メールのトップ画面に進行中の仕事のメールを一通だけ残しておく。
画面に出る受信件数=いま進行中の仕事の本数になる。
メールソフトが仕事管理ツールの代用品になる。
件名にはできるだけ具体的な仕事の内容を書いて返信するようにする。
これで何の仕事のメールか分かる。担当者名も分かる。
用件が済んでいるかは返信マークで確認。
返信マークがついてないメールはこちらにやることが残っている状態。

▲案件ごとにフォルダーを作って管理する
当たり前すぎることだけど仕事ごとに一つフォルダーを作って、
それを日付順でリスト表示して管理している。
上にあるものが最新で作業した案件になる。
パソコンのデスクトップは基本的には何もおかない。
制作中のデザイン案のPDFファイルだけ並べておいて1日数回開いて見直す。

・メールをファイルとしてを活用する
メールをそのままファイル・メモとして活用する。
仕事ごとのフォルダーの中にメールをドラッグ&ドロップしておけば
それがファイルとして保存できるので、そのままメモとして活用できる。
忘れないようにしたい用件はメールのファイル名に書き込む。

・リンクURLをメモとして活用する
ブックマークはごちゃごちゃするのであまり使わない。
SafariだとURLの部分をドロップ&ドラッグすればそれがファイルになるので、
仕事ごとのフォルダの中にリンクURLをファイルとして保存している。
イラストレーターのホームページや、
写真のリンク、資料などURLをファイルとして入れておく。
仕事のごとのリンクの管理としてすごく助かっている。

▲メモ機能を活用する
タスク管理もしないわけではない。
いろいろ便利なアプリがあるみたいだけど、
ぼくはMacのメモ機能だけを使っている。
余計な機能はいらない。
テキストエディターの機能だけで十分。
ページをいくつか作って、
その間でテキストを移動させるだけ。
細かな仕事の進行状況や支払いなどをすべてを管理している。

▲やることは書き出す 終わったら消す
「すぐやる」というメモ項目のページを作って
やることすべてを書き出す。
終わったら消していく
すぐにやらないことも書いておいて、
いつでも目に入いるようにしていく。

▲月ごとのリストを作る
月ごとに区切って仕事のリストを作る。
クライアントの会社 担当者名 案件名 作業内容 ギャラ
を書き込んでいく

▲終わっていない案件を順番に並べる
「予定」というメモ項目を作って、各案件の進行状況を簡単に書いておく。

▲終わった案件を順番に並べる
「予定」の項目で終わった案件を
「スミ」という別のページにカット&ペーストする。

なんのことだかわかりにくいと思うけど、
スケジュールの管理を簡略化するために
単純なツールを使って単純な操作のみで進行する仕組みを作っている。
これは機会があったら詳しく書くかもしれないけど、今回はここまで。
読んでいただきありがとうございました。

それでは。
良きフリーランス&自宅仕事の毎日を!

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