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Bの記憶

私とお兄ちゃんはいつも仲良しなの。ホコリとカビの匂いのする貧民街でもお兄ちゃんは私を気にかけてくれるし、私もお兄ちゃんを支えるために街に出て精一杯お金を集める。なかなか良いコンビでしょ?…目は生まれつきじゃないよ、流れ星で潰れたの。


嘘じゃないって。昔お兄ちゃんとテントから星を見ていたら急に!チカって一直線に飛んできたの!…そのせいで目は見えなくなったけど、あの時の流れ星は、そんな事気にならないくらいキレイだったな…。そういえばお兄ちゃんとはその日に仲直りしたっけ…流れ星のおかげだね。


そう、目が見えてた頃は喧嘩ばっかりだった。ちゃんとした仕事の貰える歳じゃなかったし稼ぎも上がらなくて、毎日おなかを空かせてた。そりゃ怒りっぽくもなるよ。それでも私達は毎日真面目にお金をかせぎ続けてた。でも、段々お兄ちゃんはわるいことをする様になったの。え、その、スリとか盗みとか


これ、後からなんか言われないよね…?私達も必死だったの。空腹で頭がおかしくなりそうで、私が気晴らしに歌うと決まって誰かに殴られた。だから最後まで歌えた事ないの。おかしいでしょ?…笑ってくれてもいいんだけど…とにかく必死だったって話。けど私はお兄ちゃんのしたわるいことが許せなかった。


私はお兄ちゃんの目を見て言った。こんな事やめてって。スリで儲けても一銭の幸福だって掴めないって。あ、これは私達のおばあちゃんが教えてくれた言葉ね。お兄ちゃんが私や貧民の子たちのために罪を犯してくれてたって今ならわかるよ。でもあの時はとにかく私お兄ちゃんの手を悪に染めたくなかった。


それはもう大喧嘩だった。口を利かなかったり物を投げたり…お腹が空いているのに喧嘩なんてするから、お兄ちゃんは段々痩せてきてしまってたな。それでも私とお兄ちゃんは信念を曲げられなかったの。そんな時にやって来たのがあの日。空が落っこちてくるんじゃないかって思う位満点の星空だった!


その日はお兄ちゃんも珍しく機嫌が良くて、お気に入りのナイフでパンを薄く切って渡してくれた。嬉しかったけど私は食べられなかった。それが盗んできた物って勘づいたから。手に持ったパンを弄りながら星を見てきれいだねって言ったら、お兄ちゃんは私の隣…あ、前、かな。前に立った。


お兄ちゃんは私の目の前に立って…顔?見えなかったよ。暗かったし…でも流れ星はきらきらしてて…どうって、一直線にシュッとさ、お兄ちゃんの手元あたりから…

あ。待って、忘れて。全部。…照れ臭くなっちゃって。ほら、仲直りの瞬間なんて皆照れるもんでしょ?だから今のは無しね


…ねぇ、聞いてる?


END




あとがき
こんにちは!最近暑かったり寒かったりと忙しない気候ですが、体調にはくれぐれもお気をつけ下さい…
この度はBの記憶を読んでいただきありがとうございます🙇


この前はAの記憶というものを投稿しました!
今後はこの短編というか、短い話をAからZまで書き連ねていく企画にしたいと思っています!
A.Bと暗めの話題が続いてしまいましたが、次回作は絶賛思案中です💦一応明るめも暗めもどちらも出来たらいいなと思います。

だって27もあるから!

大変な旅になるとは思いますが、頑張って書きたいと思いますので、どこかでまた会えましたら

「コイツ27個短編作るとか抜かしてたやつじゃん」

と笑って頂ければ幸いです。

ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます!これからも精進させて頂きます。ではまた🐔

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