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ひび

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日々のことについて文章を書きます。
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2019年12月の記事一覧

蜘蛛の糸

学生時代の自分は、鬱屈とした日々を送りながらも、おれは他の奴らとは違うんだ、と精一杯心の中で意気がっていた。もしかすると、小学生の頃からそうだったかもしれぬ。とにかく他の奴とは違う人間になりたかった。周りが思い付かぬような何かを思いつく、凄い自分、画一的な色に染まらぬ自分、を常に思い描いていた。蜘蛛の糸という歌があったが、まるでそのような感じである。中学三年の頃などは、その思い上がりが如実に現れて

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年明けに我が店が取り壊しになるので、荷物をまとめて運び出さなければならない。大きなものでいうと、舞台、椅子、机、冷蔵庫、棚、スピーカー、音響機材…。運び出す場所は自宅しか無い。大して広い部屋でも無いので、とんでもないことになりそうである。

とりあえず細かいものをまとめようと、引っ越しのように段ボールで梱包作業、店内を総ざらいしたのだが、本、紙類、照明器具、皿、グラス、鍋、フライパン、レジ、プロジ

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しんでる

五月山動物園のウォンバット(可愛ゆい、尊し生き物)のマルちゃんが亡くなったと聞いた。先日、自分が動物園へ行った際も、マルちゃんは小屋から出てこず、その姿を見ることは出来なかった。彼女は自分の推しウォンでもあるフクくんの嫁さんである。何とも悲しい出来事であるが、生き物ゆえに死は免れない。残されたフクくんは、さぞ落ち込んでいることだろう。それでも、枝をガジガジ、お尻をボリボリ、していてくれたら良いのだ

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完全素敵な夜

我が店、ライヴ喫茶 亀での最後のライヴ、『超ナイトオブコメディー』を終えた。外は雨が降っていて、テレビでは漫才師の日本一を決める大会が行われていた。何もこんな日にライヴをやらなくても、という日であった。自分には、それら全てが面白く感じた。こういう日にこそ、見せられるものがある。ライヴは面白かった。久しぶりに、イメージが思い通りいくような出来だった。完全素敵な夜となった。

終演後、沢山の人が声を掛

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もしもこのnoteの読者の中で、芸人になりたい、もしくは舞台に立ちたい、もしくは舞台関係の仕事がしたい、と、密かに思っている人がいれば、今すぐ、こっそりと連絡をくれ。自分の如き不人気漫才師でも、あなたに何か助言出来るかもしれない。

勿論、舞台を仕事にして、金を稼ぎ、暮らしていくことは難しい。自分は、舞台と営業漫才と店の経営をしているが、それでも金銭的には底辺の暮らしを続けている。金を稼ぎたいので

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わたしの身体

わたしの身体は、身長が180センチほどで体重が60キロほど、つまりどちらかというと長身の痩せ型になる。最近は少しお腹もたるんで、下腹部は見事オッサンのようにぼってりとしているが、首は細く、肩幅は狭く、腕は棒のようであるが猿のように長く、指も長い。体毛は濃く(陰毛は剃っている)、足はそれなりに太めで、尻は柔らかい。肌は綺麗では無いが、そこまで汚くもない。筋力はまるで無く、爺のようなひもじい身体付きを

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仲間

自分は、仲間意識、みたいなものが昔から苦手で、流行りのワン・チームなんぞまっぴら御免である。芸人でも、同期の皆で売れような!みたいな阿呆が時折いるが、全くもって共感出来ないどころか、軽蔑さえしている。また、協調性、なるものも欠落しており、パーティー、打ち上げの類は苦手であるし、組体操も、校歌斉唱も、大嫌いである。

ならば貴様は孤高の狼なのか?と言われると、そんなことはまるで無かった。誰かと何かを

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眠る鬼

自分は昔から、恐い、冷たい、暗い、などと言われることがあり、こちらは何もしていないのに、なぜかそうした悪印象を持たれやすく、そんなことを言ってくる奴の方がよっぽど恐怖の冷酷あんころ餅ではないかと思うのだが、仕方無い、他人にはそう映るのだろう、中には褒め言葉的に、落ち着いている、思慮深い、と言われることもあるので、良しとしよう。さて、実際の自分はどうかというと、別段、恐くも冷たくも暗くも無い男で、落

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灯す火

先日は京橋のラヴホテルで自作の官能私小説を朗読した。それはまるで、人前で仮性包茎の皮をこっそりとめくるような気分であった。今日は放送禁止ネタをするライヴで、少し不謹慎な漫才をした。こちらは普段の漫才と大して変わらぬため、伸び伸びと演った。どちらのライヴも非常に楽しく、阿呆なものだった。死んだ祖母が見れば、もうそんなんやめとき、と言うだろう。自分もそう思うのだが、こうなってしまった以上は仕方無い。灯

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招福猫

去年出来た近所のつけ麺屋に自分は二回ほど行ったのだが、いつ行ってもお客は自分一人だった。大将は若めの角刈り、真面目そうな人で、店内の雰囲気はややダサい、壁もカウンターも白一色で殺伐としていて、メニューはいかにもワープロ的な丸ゴシック体の太字フォント、全体的に何となくモッサリした店である。けれども、つけ麺は美味かった。大将の熱意を、自分は麺とスープに感じた。実直に続けていれば、いずれ繁盛するだろう、

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朝の手紙

おはよう。そちらは朝ですか。もしくは昼かもしれません。こちらは夜です。夜は一段と冷えます。昔から朝が苦手な私は、夜が好きでした。そして、冬が好きです。自分が生まれたとき、きっと外はとても寒かったのだろう、と思うと、より一層、冬が好きになります。つまり、冬の夜、が最も好きなのです。けれども、もう少し、何とかならないものでしょうか。いくら服を重ね着しても、凍えます。あぁ、誰かがまた外で奇声を上げている

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ブス

昔から、お前はブス専だ、と周りによく言われた。自分では全くもってそんな意識は無いので納得は出来なかったが、たとえば男友達何人かと週刊誌を開いて、グラビアアイドルが大勢写っているページ、この中で誰が一番好みか、という話になったとき(男はすぐに女を選り好みしたがる)、自分が指差す女性に周りは大抵、えー、などと言って非難轟々、趣味悪ぅ、などと言われたもので、こちらも好みの女性を悪く言われるのは気分が悪い

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あっ

首の痛みがひどくて、また、鼻水が滝のように溢れるので、くしゃくしゃのティッシュペーパーが山のよう。せっかく珍しく、早起きした(今日はなんと10時に起きたゾ。エライ!)のにも関わらず、早々暗鬱な気分で、何もしたくない、何も考えたくない、腹は減ったが何も食べたくない、それよりも、きみに会いたい、きみと公園へ行きたい、そして、くだらない、魚偏の漢字クイズなどを出し合いっこして、こそこそ笑って、甘いチョコ

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みじめなぼくら

敬愛するウディ・アレンは映画の中で「人生は、悲惨かみじめ、そのどちらかしかない。重い病気に掛かったとか、怖い事故に巻き込まれたとか、そういう人は悲惨かもしれない。それ以外の人はみじめ。そう思うと、みじめなぼくらは幸運なものさ。感謝しなければ」と言った。

みじめなぼくら。ウディ・アレンが言うのだから、きっとそうなのだ。自分は、やさぐれそうになったとき、この言葉を思い出す。一見ネガティブな雰囲気の言

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