ブス

昔から、お前はブス専だ、と周りによく言われた。自分では全くもってそんな意識は無いので納得は出来なかったが、たとえば男友達何人かと週刊誌を開いて、グラビアアイドルが大勢写っているページ、この中で誰が一番好みか、という話になったとき(男はすぐに女を選り好みしたがる)、自分が指差す女性に周りは大抵、えー、などと言って非難轟々、趣味悪ぅ、などと言われたもので、こちらも好みの女性を悪く言われるのは気分が悪いので、他の奴が選んだ巨乳清純顔の女を完膚無きまでに罵倒して、友情が決裂する、というのが常であった。

男の好みは十人十色。巨乳好きもいれば貧乳好きもいる。二重好きもいれば、一重好き、肥満好き、痩せ好きもいる。そこに勝敗など無い。自分でいえば、茶髪微乳で二重の中肉中背好き、となるが、別にそうでなくとも好みの女性はいるし、綺麗だと思う人は沢山いる。となると、ブス専、とは何なのか。自分は可愛いと思うものを可愛いと言って、綺麗と思うものを綺麗と言ってきた。にも関わらず、何がブス専門だというのか。もとより、ブス、とは何なのか。

昨今は化粧道具や美容用品も多いので、本当のブス、みたいな人は見掛けない。むしろ知り合いの女性や街で見かける女性は皆、綺麗で可愛い人ばかりだ。つまり、ブスが一人もいないのである。もしもブスがいれば紹介して欲しい。きっとそれはただの自称ブスで、実際はそこそこ可愛い人に違いない。勿論、本人に聞けば鼻が低いなどのコンプレックスを抱えているのかもしれないが、はっきり言って、そんなことはどうでも良い。ブスとは、目の大きさや鼻の高さなどでは計れぬ位置に存在する、もっと醜悪なものであろう。

では、ブスは存在しないのか?というと、そうでは無い。街に出れば、ブスのギャル男やブスの男子学生が溢れている。つまり、男のブス(ブス男)は腐るほどいるのだ。男は女と違って、肌や髪型など容姿に気を使わぬ奴も大勢いて、目ヤニだらけの奴や歯クソだらけの奴などザラにいる。中にはニキビアバタまみれの潰れた顔面で臭い涎を垂らしながらダサいファッションに身を包みおまけに真性包茎、みたいな奴までいる。そしてそんなブス男に限って、女の容姿には矢鱈と厳しく、やっぱ色白に限る、Cカップ以上は欲しいところ、脇毛が生えた女なんてあり得ないよ、鼻がちょっとねぇ、顎がさぁ、などと言ってゲラゲラ笑っている。その笑顔がまた奇っ怪醜悪極まりないブスで、滅べば良い。

今改めて考えると、自分は女性の容姿を見て、ブスだ、と思ったことがほとんど無い。世間的にブスだと言われる女芸人などを見ても、自分にはピンと来ない。そんなにブスなのか、むしろとても可愛い人ではないか、と思う。昔ビューティーコロシアムという整形番組があったが、自分の場合、美容整形を施したアフターよりも、ビフォーのすっぴんの方が好みであることが多かった。この辺りがブス専と言われる所以かもしれぬが、はっきり言って世間の決められた価値観なんぞズレまくりなので、気にすることは無い。

もっと言えば、容姿の良し悪しなど、全くどうでも良い。目が離れ鼻がへこみ口が裂けていても、魅力的な女性は沢山いる。逆に、たとえ容姿が美しかろうと、ナイスバディであろうと、一緒にいて面白くない女や内面が腐りまくった意地の汚い女こそが真のブスで、何の魅力も感じないのである。

何もいりません。舞台に来てください。