もしもこのnoteの読者の中で、芸人になりたい、もしくは舞台に立ちたい、もしくは舞台関係の仕事がしたい、と、密かに思っている人がいれば、今すぐ、こっそりと連絡をくれ。自分の如き不人気漫才師でも、あなたに何か助言出来るかもしれない。

勿論、舞台を仕事にして、金を稼ぎ、暮らしていくことは難しい。自分は、舞台と営業漫才と店の経営をしているが、それでも金銭的には底辺の暮らしを続けている。金を稼ぎたいのであれば、別の仕事をやるべきではないかと思う。金目的でなく、遊び半分でやりたい、もしくは、新しいことがやりたい、という目的ならば、舞台はとっておきの場所である。

たとえば格闘家や野球選手ならばトレーニングや練習が必要であるし、ラーメン屋や陶芸家でも、やはり何年かの修行が必要になる。また、初めに道具一式を揃えなくてはならない。その点、舞台、特に芸人なんぞは何の道具も必要無い。仰々しい練習や修行も無く、気軽に始めることが出来る。

芸人になるためには、何よりもまず、ネタを作らなければならない。これはある種のセンスが必要とされる。しかし、たとえ自分でネタが作れなくとも、他人に作って貰えば良い話なので、そこまで気にすることでも無い。場合によっては自分が作ってあげても良い。要は、舞台に立ち、人前で何かを発したいかどうか、である。覚悟さえあれば誰でも出来る。個人的な解釈では、友達があまりいない人、日常に何かモヤモヤしている人、不満がある人、不安がある人、他人に気遣いが出来る人、空想癖がある人、嘘つき、もしくは正直者、コンプレックスを持っている人、飯を食うのが早い人、集中力のある人、適当な人、ふしだらな人、周りにムカつく奴がいる人、記憶力のある人、恋をしたいと思っている人、いつ死んでもいいやと思っている人、などが向いていると思う。

舞台関係の仕事、というのは、たとえばライヴの構成を練る、アイデアを出す、チラシを作る、宣伝、ブッキング、受付音響照明、その他、連絡、準備、雑用、様々な裏方仕事である。こちらもまた、金にはならない。しかし、ライヴを作り上げる作業というのはなかなか楽しいもので、物事を整理して積み上げていくことが得意な人、表には出たくないが裏で支えるのは好きな人、は向いているだろう。自分は主催ライヴをやっているが、ほとんどの作業を一人でしている。つまり、ある程度のノウハウならば教えることが出来る。

現状維持を保ち、日々それなりに幸せな人も多いだろうが、日常に不満があり、ぼんやりと何か新しいことを始めたいと考えている人もまた、少なくはないだろう。自分もそうである。現状には依然満足は出来ず、いつも曖昧な空想をしながら新しいことをやりたいと思っている。周りを見れば、現状に不満を抱いてる人や自己を模索している人が結構いて、そういう人を見ていると、舞台に立つ、もしくは舞台に関わることをすれば良いのに、といつも思う。なぜなら、舞台はあなたの全てを浮き彫りにしつつ、あなたの全てを受け入れてくれるのだ。まるで宗教の勧誘である。あなたもこっちへ来ないか?舞台には妄信的な力もあり、ハマると沼、中毒、洗脳、が待ち受けている。ほどほどに舞台に立ってカラオケ的に楽しむのも良いと思う。

現代は、わざわざ舞台に立たずともいくらでも自己表現の出来る時代で、特にインターネットには、自己表現が溢れている。うおお!おれは!何かしたい!けど何をしたらいいか分からん!などといった阿呆も少ない。頭の良い若者が多く、大抵は冷静に、まあ、こんなもんです、とスマホを眺めている。この御時世、舞台に立ちたいと思う方が少数派かもしれぬ。自分は、テレビやインターネットの芸人よりも、舞台芸人の方が好きで、自分もそうなりたいと、ずっと思っていた。いざ舞台に立つと、他では味わえぬ緊張と快感に身体が痺れて、気付くと沼、そうして自分は今もなお舞台に立っている。

何もいりません。舞台に来てください。