ミズノミ

アラサー。好きだと言っていたお酒は年々弱くなる。ゴリラを自称して自分を鼓舞しています。

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アラサー。好きだと言っていたお酒は年々弱くなる。ゴリラを自称して自分を鼓舞しています。

最近の記事

グラン・トリノ(2009)

恥ずかしながらわたしは映画を年に数本くらいしか見ません。ただ、気に入った映画は何年も、何回も繰り返し鑑賞します。このめちゃくちゃ狭いストライクゾーンに入った映画の、いったい何が好きなのかを自分なりに分解してみようじゃないか。という取り組みです。 初回はクリント・イーストウッド監督「グラン・トリノ」(2009年)。 最初に見たのは高校2年生の頃。父がTSUTAYAに行くというので借りてきてくれとお願いした記憶があります。我ながら渋いな。 あらすじ主な登場人物・ウォルト・コワ

    • めしあがれ、わたし

      親元を離れて生活を始めて10年ほど経った。 実家で甘やかされて育ち、何一つ家事ができなかったわたしも、さすがに人並み程度には料理ができるようになった。たとえば、冷蔵庫にあるものから何品か名前のない家庭料理を用意することができる。野菜の下処理も昔に比べたら早くなったし、いまや1週間分の献立を考える時間も一瞬である。 なんとなく夕飯を作り、テーブルに乗せる時、わたしはふと「23歳のわたしに食べさせてあげたいな」と思う。めしあがれ、わたし。と。 母はよく10代のわたしに「どうせ

      • 祖父の遺影

        近所の大型商業施設の中に、写真屋がある。 カメラやアルバム、写真立ての販売、写真のプリントアウト、そして証明写真の撮影までやっているようだ。 証明写真の撮影場所は本屋の前の通路に面しており、証明写真を必要とするであろう年ごろの人達には少々配慮の足りない立地なのではないかと心配になる(案の定、実際に撮影している人を見たことはない)。 そんな閑散とした撮影スペースをよそに、店内に置かれた数台のセルフプリント機はデジカメとプリント機の液晶を交互に見ながら試行錯誤するおじいちゃ

        • また会ったな、涙くん

          5~6歳くらいか。 なぜかその当時、カラオケの十八番は「涙くんさよなら」だった。 「ムーンライト伝説」とか「めざせポケモンマスター」とか、そんなのを歌っていてほしい年ごろだが、わたしは誰に影響されたのかカラオケにいくたびに「な~みだくんさよな~ら~♪」と歌っていたのである。我ながら渋すぎる。 大人になってまじまじと歌詞を見てみる。わかる、大人の私にはわかるぞ。 この歌は、「フラグ」だ。 ただ、ダチョウ俱楽部さんの「押すなよ、押すなよ!」とは違う、「泣きたい気持ちにな

        グラン・トリノ(2009)

          欲もいいもんだ

          欲がなくなってきた。 服を買おうにも「誰に見せるんですか、こんないい服」。 化粧品を買おうにも「いい加減、化粧品ひとつで顔が変わるわけがないことを学びなさい」。 酒を買おうにも「最近全然飲めなくなってますよね?本当に必要ですか?」。 とまあこんな感じでストップをかけるもうひとりの人格の発言権が強くなってきている。 昔は無欲であることに憧れながら、強欲であった。 質素な暮らしを最上としているくせに、かわいくなりたいし、楽しい時間が目いっぱいほしいし、誰彼構わず好かれたい。

          欲もいいもんだ

          パリで生牡蠣を食べる

          母と私はぐったりしながらセーヌ川沿いを歩いていた。 合成のように澄み渡る青空なのに、冬のパリとは思えないほどの暖かさなのに、だ。 母も私もかなり久しぶりの海外旅行だった。勇気を出して旅行代理店に行き、6日のうち数日だけ添乗員がパリを案内してくれる比較的リーズナブルなツアーに申し込んだ。 つまり数日は自由行動で、旅好きならこの数日が本番なのだろうが、重い足取りでセーヌ川を歩くこの母娘にとっては約20年ぶりの海外旅行。そのくせなんとなくパリに行ったら楽しいことが待ち受けているだろ

          パリで生牡蠣を食べる

          夕方の校舎に同級生を置いていった話

          『突然変異で染色体の数が1つ多くなる、それがダウン症の要因です。』―小学校の図書館で開いた本に書いてあった。  誰もいない放課後の図書館で、こっそりダウン症に関する本を探して読んだ。2つしかクラスがなかった小学校で、関わったり関わらなかったりを繰り返した同級生のことが知りたかったのだ。私の机に満面の笑みで鼻くそをつけてきたり、祖父母からもらった宝物のランドセルに黒いマジックで線を書いて笑ってくる彼女のことだ。  それまで彼女のことで知っていることといえば、優しいお母さんが

          夕方の校舎に同級生を置いていった話

          じいちゃんがエア乾杯した話

          夏の新潟は、暑い。 暑いが、それはなんだかお湯炊きに失敗した湯船みたいな不思議な暑さで、ぐぐっと踏み入れると奥底にひやっとした冷たさがある。 電車から降りると、父が言った。 「お前が上場企業に就職決まったって教えた瞬間に毎日株価チェックして、『お前、この会社の株買え』ってうるせーんだよ。4回も余命宣告受けた爺が、よく日経新聞読んでるよなァ。」 それが私のじいちゃんである。 持ち前のバイタリティとコミュニケーション能力でゼロから地方銀行の支店長まで成り上がった。若くし

          じいちゃんがエア乾杯した話

          『わたしもよく働いてたわぁ。』(2017.4.7)

          初めての一人暮らしにときどき寂しくなる。 ついこの前まで「みゆさん!みゆさん!」と呼ばれていたのに突然下っ端になる。 右も左もわからず知らない間に肩がこる。 お客様との会話でトチって怒られる。 落ち込んでいたら先輩に「落ち込んでるだけじゃ変わらないよ!」と愛のムチを受ける。 1年目の私はまさしく、くたくた。 そして、くたくたになると、おばあちゃんの家に逃げていました。 「仕事はどう?」「ーまぁまぁ楽しいよ」 なんて、分かりやすい強がりにおばあちゃんは気づかない

          『わたしもよく働いてたわぁ。』(2017.4.7)