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『わたしもよく働いてたわぁ。』(2017.4.7)

初めての一人暮らしにときどき寂しくなる。

ついこの前まで「みゆさん!みゆさん!」と呼ばれていたのに突然下っ端になる。

右も左もわからず知らない間に肩がこる。

お客様との会話でトチって怒られる。

落ち込んでいたら先輩に「落ち込んでるだけじゃ変わらないよ!」と愛のムチを受ける。

1年目の私はまさしく、くたくた。

そして、くたくたになると、おばあちゃんの家に逃げていました。

「仕事はどう?」「ーまぁまぁ楽しいよ」

なんて、分かりやすい強がりにおばあちゃんは気づかないフリをしてくれました。

「あんたははたらく努力ができる才能があるよ。頑張りなさいね。」

湯のみ二つに緑茶を淹れて、おばあちゃんは話し出します。

「昔ねぇ、おばあちゃん集金やってたでしょ?」

穏やかで優しいおばあちゃんは、仕事を通して人と関わることも好きな人で、その昔、保険会社の代行で、毎月決まったお家へ集金に行く仕事をしていました。

「始めたばかりの頃はね、支払いが苦しい人がいることも、なーんにも知らなかったのね。

だから、『集金に来ました!』って突然行って、とんでもなく怒鳴られたこともあったのよ。

急に怒られると落ち込むし、恐いのよ〜。

なんとか出してもらったお金を受け取る手が震えてしょうがなかったわよ。
でもね。

顔を合わせて、その人の気持ちにできるだけ寄り添って、毎日頑張ってたら、分かって認めてくれる人ってたくさんいるものね。

わたしもよく働いてたわぁ。」

歳を取ってよく喋るようになったおばあちゃん。
ここまで喋って、お茶を啜ります。

なんにも気づかないフリをした人生の大先輩からの、激励のメッセージ。

やっと社会人3年目になりました。

転職するわけでもないし、おばあちゃんも健在ですが、ふと思い出したので書いてみました。

いろいろあったし、いろいろあるし、これからもっともっといろいろあるでしょう。それでも、だからこそ、私は働くのだろうなぁ。

社会人1年目のみなさん頑張ってください。
社会人x年目のみなさんこれからもよろしくお願いします。

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【あとがき】

2017年4月に個人のfacebookに上げたものを、noteに上げ直しています。

おばあちゃんはこの2年後に認知症になり、今では私の名前も…なんてのは全くの嘘で、早期発見により幸いにもちょっぴり物忘れが多めなおばあちゃんのままです。

お目当てであろうラップを手に握りながら「やだ~何探してたんだっけ~」とキッチンをくるくる回ったり、認知症発覚の半年後にスマートフォンを手に入れ家族ラインに謎の暗号を送ってきたりして、かわいらしいです。

これからも元気でいてね。


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