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マインドフルネスで自分の感情と価値観の繋がりに目覚める

ビジネスでは、不確実で刻々と変化する状況がつきものです。そのような状況で、不必要な不安や恐怖を感じ、疲れ果ててしまうことはありませんか?あるいは、自分の感情をうまく対処できず、相手を困らせ問題を複雑にしてしまった経験はありませんか?

そのような状況は、感情認知力 (Emotional self-awareness) を高めることで改善する可能性があります。感情知能の四つの領域の中の最初の領域である自己認知は、感情認知力を高めることによって、そのような状況でも自分の感情を上手に表現し、コミュニケーションをスムーズに行う方法を教えてくれます。

感情認知とは、簡単に言えば、自身の感情とそれに関連する自身の価値観を知ることです。感情には、怒り (Anger)、哀しみ (Sadness)、恐れ (Fear)、喜び (Enjoyment) など、様々なものがあります。個々の感情に対する自身の反応を、偏見や決めつけなしに、静かに深く観察することで、自身の記憶の奥深くにある自身の価値観の存在に気づくことができます。それは、本当の自分に出会う旅のようなもので、自分の能力を最大限に発揮するための出発点に立つことでもあります。

感情認知力は、感情知能を支える極めて重要な能力になります。今回は感情認知力を向上させる方法を TED の動画などを参照しながら理解を深めたいと思います。動画を見る際には日本語の字幕を活用してください。

感情知能の四つの領域と14の特性

感情は割ってはいけないシャボン玉

皆さんも、怒りで顔が紅潮し目を見開く、緊張で心臓が高鳴り手に汗をかく、哀しみで胸が締め付けられ息苦しくなる、などの体の内部で起こる反応を感じたことがあると思います。このような身体反応のことを、心理学では「内受容感覚 (Interoception)」と呼ぶことがあります。感情を認識するということは、自分の中のそうした反応に気づき、そうした反応を引き起こす自分の脳や身体の存在を認め、さらにそうした反応に関連する過去の記憶や経験、価値観を思い出すことです。

そのような感情の経験は、自身の意識が及ぶ前に、脳が処理し体が反応を示すという重要な事実があります。怒りに対処するための「6秒ルール」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。これは、感情を扱うことに慣れていない場合、少し時間をかけて自身の感情体験を見つめることが助けになることを示しています。

ここでお勧めする方法は、感情を割ってはいけないシャボン玉のようなものとみなすイメージトレーニングです。つまり、心という泉からたくさんのシャボン玉が湧き出てくる様子を想像します。その中には怒りのシャボン玉、哀しみのシャボン玉などがあり、これらのシャボン玉は大量に出ることもあれば、少量しか出ないこともあります。

シャボン玉なので、子供はたくさん割りたくなると思いますし、大人でもそうでしょう。しかし、例えば、怒りのシャボン玉が割れてしまうと、それが怒りとなって表面化してしまうと想像してみてください。多くのシャボン玉を割れば割るほど、その感情はより強調されて表面化します。

そして、感情認知に取り組むことは、そのシャボン玉の量を調整し、シャボン玉を割らずに天まで飛ばす感覚を得ることになります。

感情は割ってはいけないシャボン玉

「〇〇であるべきだ」という強いこだわりは問題なのか?

怒りをコントロールするという文脈の中で、「〇〇であるべきだ」という強いこだわりが、時代の変化や多様性によって通用しなくなるという趣旨のことを耳にすることがあるかもしれません。感情知能では、それとは異なるアプローチをとりますので、少しだけ補足させてください。

まず、怒りを含め、「感情をコントロールする」というアプローチは取りません。先にも述べた通り、感情は自身の意識が及ぶ前に体の反応を引き起こしますので、そもそもコントロールはとても困難であると考えます。

また、「〇〇であるべきだ」という強いこだわりを大切にします。たとえ時代遅れだと言われても、大切にします。そこにはあなたの個性が詰まっている可能性が高いからです。一方で、その強いこだわり、自分の価値観を深く理解することを試みます。そうすることで、その強いこだわりに対して、怒り以外の感情が反応できるようになるのです。

マインドフルネスという新しい習慣

みなさんは、マインドフルネスという言葉を聞いたことがありますでしょうか? TED 内の動画を検索してもマインドフルネスについて語る動画はたくさん見つかります。これは、マインドフルネスが科学的に有効であることを示しており、多くのスピーカーがこの大発見を多くの人に知ってもらいたいと考えているからです。そして、マインドフルネスは、自身の中で湧いて出てくる「感情のシャボン玉」を冷静に観察する能力を身につけるために有効な方法です。

その数あるマインドフルネスの TED の動画の中から一つ紹介したいと思います。この動画では、マインドフルネスがいかに私たちの脳と人生に前向き(ポジティブ)な変化をもたらすかを示しています。マインドフルネスには様々な方法がありますが、呼吸を用いた瞑想がとてもやりやすいと思いますのでお勧めです。後程そのための動画も紹介します。

呼吸を用いた瞑想は、実は、人間の脳のある特殊な能力を活用することで実現しています。それは、人間の脳は同時に複数のことに集中するのがとても苦手であるという能力です。多くの人の場合、一つのことに集中することで、それ以外のことが認識できなくなる感覚を体験できると思います。皆さんの中にも、勉強に集中しているときに、周りの音が聞こえなくなるような感覚を体験したことがあるのではないでしょうか?

瞑想の呼吸法は、この脳の一点集中の能力を呼吸に応用します。その動作の中には、たくさんの酸素を取り込むことで副交感神経が優位に働くという効果や、自分の「現在」を認識しやすいという効果があり、その有効性は多くの科学的実験の裏付けがあるようです。

瞑想の呼吸法には様々な応用が考えられますが、まずは深く考えずに呼吸による空気の流れに意識を委ねてみることをお勧めします。音や光など、外界からの様々な刺激によって、思考や感情が脳内で入り乱れることもあると思いますが、呼吸による空気の流れや体の動きに集中することで、脳内から雑音が消えていく感覚を養うことができると思います。1~2週間、少し時間をかけて試みることで、変化を感じられることでしょう。

単に目を閉じて、呼吸を整えるだけでは不十分です。自分の呼吸の存在を認め、空気の流れとそれに呼応する自分の体の動きに意識を委ねてみてください。鼻、肺、胸、腹部などの動きに気づくことで、自分という体の存在と自分の「現在」を意識する感覚を養います。

この動画は、皆さんが毎日瞑想を行う際に役に立つと思います。最近では、瞑想を行うためのアプリもありますので、自分に合った方法を見つけてみてください。10分程度で終了しますので、毎日続けられると思います。慣れてくることで、いつでも自分の「現在」を意識できるようになります。

瞑想の時間を積み重ねていくことで、「現在」の感覚は研ぎ澄まされていくと思います。やがて、「感情のシャボン玉」が割れることなく天まで飛んでいくのを感じられるときが来るでしょう。その時、シャボン玉の感情が、怒りなのか哀しみなのか、はっきり見えるようになる変化を感じることができるようになると思います。感情認知力が高まっている瞬間です。毎日続けることができれば、あなたの感情知能は成長します。ぜひ、自分の成長を実感してください。

自分の価値観に出会う

例えば、感情的になりすぎて後で後悔した経験がある人は、そのように感情は時としてとても厄介なものだと感じるかもしれません。しかし、感情は脳の奥深くにある記憶や価値観と結びついており、自分では思い出すことが困難なものです。あなたの感情には、あなたにとって深い意味があり、その意味を本当に自分で受け止めているかどうか、時間をかけて考えてみることをお勧めします。

例えば、誰かに対して怒りを感じるなら、それは自分の価値観がおびやかされているのかもしれません。感情は、記憶の奥深くにある自分の本当の価値観へと導いてくれるガイドです。

その記憶は、幼少期に体験した家族、友人、環境に根ざしたもので、もしかしたら自分の意志に反しているかもしれません。しかし、それらはあなたを育んでくれた大切な記憶でもあります。そうした価値観と向き合うことができれば、自分の感情に対する理解を深めることが出来ます。マインドフルネスは、そんな自分の内面を見つめる目を養う方法なのです。

自分の脳の成長を信じる

最後にもう一つ  TED の動画を紹介したいと思います。

この動画は、神経可塑性 (Neuroplasticity) と呼ばれる脳が持つ自らの構造や機能を変える性質により、あなたの行動次第であなたが望む脳を形作ることが可能であるという研究のお話です。この性質は、脳に損傷を受けた人に対する効果的な治療法へと応用されていますが、そうではない人々の人生にも無限の可能性を切り開くことになります。

私たちは決して完璧な状態で生まれてくるわけではありません。成長とは私たちに人生の意味を教えてくれる大切な経験であり、感情知能とはその成長を支える礎となる能力です。成長は決して子供の特権ではありません。大人こそ成長の可能性を秘めているのは、より多くの経験を自分で選択できるからです。

感情は決して人間だけが持っている特別な能力ではなく、犬や猫、鳥などペットとして飼われる生き物ばかりか、魚のような生き物でさえ感情のようなものを持っていると言われています。しかし、人間の脳の能力によって、他の動物では困難だと思われる、感情に対する知性を獲得することができます。

感情は過去のあなたからのメッセージ、そう考えてみるのはどうでしょうか?そのメッセージは、あなたの本当の価値観を伝えており、あなたが見失っていた本当のあなたに出会うきっかけになるのです。感情知能とは、そのような、すべての人が身につけるに値する知性なのです。


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