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中国兄貴の教え①

「お前の与信枠は1億円。」


 中国で商いをするなかでメンター的な中国人経営者からいろいろなことを教わりました。そんなことも書いていきます。

 頑固マグロおやじの店「天家」では、マグロは日本から直輸入していました。数か月に一度コンテナを満載にしての輸入。13トン前後・5000万円強の取引で関税を払ったあとの在庫評価価格は1億円近くになりました。

 そんな自社にとっての生命線ともいえる輸入業務は、ある中国人社長(兄貴)にお願いしていました。あるときまで自社で輸入していたのですが、トラブルや理不尽なことも多く専門の会社にお願いすることにしたのです。取引のお願いに行った私に兄貴は「日本人に継続的な輸入業務なんてできるわけないだろ。水際をなめるな。俺たちは命懸けで税関業務をやているんだ。」とまくしたてたことをよく覚えています。中国のお役所相手の仕事、特に税関とかかわる業務は本当にハードルが高いのです。

 そんな兄貴との取引は常にトップ商談でした。お互いに一つの項目に対してYES ・NOを数秒で判断します。そのため商談はいつも短時間でした。「関税は3割弱だが、俺の取り分は2割でどう?」「日本のマグロ仲卸にはおれが全額立て替えるよ。」「手形なんか必要ない、現金でやるよ。その方が島原さんの面子もたつでしょう。」こんな内容を速攻で判断していきます。

 この兄貴は私が選別したマグロ代金を前払いし関税を立て替えてくれていました。1億円近い金額です。私たちは使用したマグロにあわせて、分割したマグロ代金を支払えばよかったのです。「天家」の資金繰りがどれほど助けられたかは説明の必要もないと思います。

 この1億円の取引に契約書はありませんでした。兄貴は言いました。「私は人を見て商いをやっている。島原さん あなたの与信枠は1憶円だ。これは私の判断だ。」また兄貴は資金回収に絶対的自信も持っていました。「貸したお金は必ず回収する。」が口癖でした。有限公司ですが、中国の商いは無限責任です。ある面では本当に荒っぽいのが中国ビジネスです。

 「なぜそこまで助けてくれるのですか?」私の質問に対して「島原さんのことは嫌いではない。」どこまでも気持ちの良い兄貴でした。

 細かいビジネススキルではなく人間力。人と人がどうつながっているのかが重要です。つながりが無いと、入れない世界やできない取引がある。本社や上司に確認する必要も時間もないのが中国ビジネスの教えであり醍醐味です。







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