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映画「竜とそばかすの姫」に救われた話

映画に救われた。

といったら少々大げさかもしれないが、本当に救われた。

映画「竜とそばかすの姫」を観てきた。ここ数日、仕事のことでめずらしく鬱々と思い悩んでいた。気晴らしになればと、かるい思いで観に行き、想像以上の大正解だった。

まず、オープニングから、凄い。

50億人が参加する仮想世界Uのイメージが、圧倒的に緻密で、圧倒的に広大で、圧倒的な熱量で、迫ってくる。あれほど壮大で詳細な空間の描き込みは、見たことがない。

音楽、ヒロインの歌声も素晴らしい。

主題歌「U」で、一気にハートを持って行かれた。ビートが効いた速いリズムに引き込まれ、メロディが強烈に頭に響き渡る。何万人に一人という歌声なのだろうか、透明感のある歌声がじつに耳に心地よく、繰り返し何度も聴きたくなる中毒性がある。

ヒロインの仮想世界でのキャラクター「Belle」は、不思議な魅力。

パーフェクトに整ったクールな美人タイプではなく、目の周りのそばかすをチャームポイントとして、えもいわれぬ可愛らしさにあふれている。もっと知りたい、もっと見ていたい、という気にさせられる。目まぐるしく変わるカラフルな衣装のデザインも素晴らしい。

ストーリーも、ひと筋縄ではいかない。

名作「美女と野獣」へのオマージュを感じさせながら、ヒロインは幼き日に母を目の前で失ったトラウマや、人前で歌えないコンプレックスを抱えている。現実と仮想世界とのシンクロや、高校生のほのかな恋愛模様を交えながら、「美女と野獣」とはあきらかに似て非なる作品に仕上がっており、細田守監督の世界観が思う存分堪能できる。

気づけば、映画が終わっていた。

正直にいえば、途中でふと現実を思い出してしまった瞬間が少しだけあった。が、この数日、目を覚ましている間、頭の一部を常に圧迫し続けていた仕事のストレスから、2時間近くも解放されたことは間違いない。

いまだ解決していないが、心の底から素晴らしいと感動できるあのような作品にふれると、自分の悩みがちっぽけとはいわないが、ちょっとだけバカみたいに思えてくる。

映画を観てよかった。映画に救われた。

IMAXで観たのも、よかったかもしれない。心が、魂が震える。映画館で同じ映画を2度観たことはないが、また行こうか迷っている。

カンヌで「竜とそばかすの姫」を上映したら、14分間のスタンディングオベーションが鳴りやまなかったというのも理解できる。

興味を持たれた方は、ぜひ。

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