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紫
2024年7月20日 15:15
あらすじ コンビニでバイトをしている大学生佐々原律は、バイト先にいつも買い物に来るサラリーマンにほのかな思いを寄せていた。気むずかしそうな見た目から、律はその人にベートーヴェンさんとあだ名をつけていた。ところがここ数ヶ月、姿をみかけない。バイトを辞めようかと思っていた矢先に、久しぶりにベートーヴェンさんが買い物に来た。しばらく見ない間に雰囲気が随分変わっている。その日のバイト帰りに表で声をかけられ
2024年7月20日 15:16
いつもより早起きした。寒いけれど、苦にならない。せめて、スカートにしようとロングの巻きスカートを選んだ。化粧は、不評だったから色つきのリップだけにする。今日は、髪型をサイドアップにした。 六時に下で待ち合わせている。人見さんは車を出しておくと言っていた。 家族の車以外に乗ったことはなかった。考えたら、緊張してきた。少し早いけれど家にいても落ち着かない。ブーツを履いて外に出た。 マンションの
2024年7月20日 15:18
スペイン語の特別講義を受けるために大学へ来ていた。テーブルの上に伏せて置いてあるスマートフォンが短く震える。確認すると人見さんからメールが届いていた。今は小さめの講義室なので教授も近い。だけど、気になってメール画面を開く。『三日分の報酬を振り込んでおきました。ご確認下さい。』 大きなため息をついてしまった。続けてメールが届く。今日の予定を訪ねられた。今日も会えると思うと、一転、心がおどる。午
免許の学科試験を受けた日の夜、フレンチレストランを予約してくれていた。 合格したからよかったものの、落ちていたら残念会になってしまうところだった。 少し大人っぽい服を着るように言われ、髪もアップにした。買ってもらった化粧品を使った。かかとの高い靴も、ほとんど履いたことがなかったから、歩くのにも苦労する。 入ったときから場違いな気がした。お店の人に、椅子を引いてもらってから座るのも初めてで、
2024年7月20日 15:19
毎日、一回は車の練習をさせられた。上達しないので人見さんは少し困っている。 それ以外の時間、人見さんはほとんどアトリエにこもっていた。夕食だけは一緒にと、その時間になると帰ってくる。食べるとまた出かけて、遅くまで描いているようだ。わたしの暮らしていた部屋に、泊まり込むこともあった。 それほど淋しくはなかった。人見さんが絵を描いている。その様子は、みていなくても鮮明に思い浮かんだ。 歌を一つ
2024年7月20日 15:20
SNSに配信を告知した。 画面にはギターの絵が表示されている。『久しぶりすぎて、見落としかけた』と、早速コメントがはいる。 誰も来ないかもしれないと思っていた。『どうして無言?』 弦をて弾いてこたえる。『エレキなんだ』『直接つないでる?』 違ったけれど、かまわなかった。 コメントが増えていく。懐かしい名前が並ぶ。 一度、開放弦で強めに鳴らした。ノイズがひろがる。『カッコいー