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日本のわびさび文化とIT企業の話 #5

こんにちは。しかぬまです。前回の記事ではファンアートを額縁に飾り、シノワズリ風にインテリアをコーディネートしたことについて記事を書きました。素敵な空間が出来上がったのでぜひご覧ください。ちなみにサムネイルの画像は私が描いたファンアートを額装した写真です。

このファンアートは、もともと好きであった現代アートにヒントを得たことのほかに、もう1つインスピレーションの出所があります。それがこちらのポストです。

これはアメリカスタートアップNotionの日本オフィスの写真です。見るだけで精神的な満足感を得られます。モノの数自体は限られているけど、それぞれが個性を光らせてハッキリと自己主張しています。それなのに自然と上手く調和し、明るい統一感を演出しています。

今回のコンチワートは、このNotionのオリジナルのポストを見た瞬間「こんな素敵な部屋に飾りたい」と憧れを抱きながら作りました(シノワズリはこれより前から準備していたので今回はそちらを採用)。

Notionのこの美しい空間に感銘を受けて、なにかこだわりがあるに違いないと思いました。そこで今回は同社の業務内容ではなく美学について注目していきます。



日本のおもてなし精神と職人技

Notionの創業初期の過程を調べると、プロダクト開発にあたってどうやら京都にルーツがあるようです。共同創業者のグループは2016年京都に1ヶ月ほど滞在し、コーディングを進めていきました。この京都で過ごした時間が彼らに大きな影響を与えたようです。それは日本の高いホスピタリティ精神と卓越した職人技

"Making Software Toolmaking Ubiquitous"
誰もが思い描いたソフトウェアを自由自在に組み立てることができれば、世界はより多くを実現できる。そんな世界をユビキタスな現実にすること。

https://www.talent-book.jp/notion/stories/52203

これはNotionのミッションです。実はこの壮大なミッションの背景には、創業者たちが京都で体験した日本のおもてなしの心が宿っています。

ユーザー視点に立ち、顧客がワクワクするものを作ろう。デバイス上でのストレスを感じさせず、自分好みに画面をカスタマイズ出来るようにしよう。そうすることによって、より充実した毎日を提供しよう。

何をしたら喜んでもらえるか、そして心地よく感じてもらえるかという相手視点のモノづくり精神が生まれました。

また匠の技が際立つ京都の工芸品や建築も、製品開発中のNotionメンバーにインスピレーションを与えました。日本のこれらの作品、特に建築は、完成当時から相当な年月が経っています。にもかかわらず、現代の視点から見てもとても機能的でかつ美しさを感じるものばかり。彼らはこのような日本の伝統に触れて、高品質な製品を世に誕生させたいと志しました。

Notionチームの天才的な頭脳と直向きな努力、そして洗練された感性。そこに日本の伝統文化と精神の隠し味。2013年に創業した同社は当初は周りに理解されず、2015年には廃業寸前、全従業員の解雇という辛い時期を味わっています。しかしそこから京都で味わったスパイスを自らに取り込み"Notion1.0"を発表。今や推定時価総額1兆円超え(2021年時点)、そして今や1億人に近づきつつある驚異の全世界ユーザー数を誇る世界を代表するユニコーン企業へと成長しました。

世界が惚れ込む日本のわびさび

わびさび的デザインを取り入れたグローバル企業

私はこのNotionの企業ストーリーを調べる途中で、あることを思い出しました。それは日本のわびさび文化とIT企業の関係です。例えばスティーブ・ジョブズが日本の禅に傾倒し、そこから無駄を削ぎ落としたシンプルで機能的なデザインを生み出しました。そしてAppleという偉大なイノベーションを起こしたこと。

日本国内に目を向けると自動車メーカーのMAZDAの魂動(こどう)デザインがわびさび的美しさを意識し、カーオブザイヤーという世界的な賞を受賞。引き算の美学を追求しているのに、動物的な生命感をフォルムや光の質感、また塗装方法で表現しているその"和"なデザインは、従来の日本車とは一線を画すエレガンスさとセクシーさを兼ね備えています。そして好調な業績に繋がっていること。

MAZDAの『ロードスター(ROADSTER)』
2016年同モデルは日本車で初となる"カーオブザイヤー"を受賞

伝統的なわびわびと現代的なわびさびスタイル

そもそも"わびさび"とはどういう意味なのでしょうか。それは豪華絢爛な装飾に対して、質素なものや不完全さに美しさを見出す美学です。これは単なるシンプルとは違います。例えば京都の枯山水(かれさんすい)を見てみましょう。

世界的に有名な龍安寺の石庭

枯山水では水を使わずに砂・岩・植物だけで水の流れや自然の美しさを表現しています。この限られたもので、世界観を映し出す表現力と想像力/創造力こそがわびさびの真髄でしょう。しかもわびさび的に作り出された対象物は、充分な思考の余白を見る人に与えるため、感じ方は人の数だけあるというのも面白いポイントです。

日本のわびさび的美学が異種であるIT分野や自動車産業でも発揮されていると分かりましたが、もちろん原点であるインテリア分野でも世界がその美しさに惚れ込んでいます。コロンビア人シンガーソングライターのJ.バルヴィンの自宅を覗いてみましょう。

日本を訪れた際、日本のエネルギーに影響を受けたという彼が目指したのは”わびさび”を感じられる家

動画の概要欄より

動画内で「寺院のような雰囲気で心を落ち着かせる空間にしたかった」と語っています。このこだわりが詰まった素敵な自宅は、木材がふんだん使われいますが、やはり北欧系ではなく日本式の木の温もりを感じます。室内には障子風の引き戸や日本から持ち帰った食器(陶器や漆器のように見えます)、そして樹齢100年の盆栽を紹介しています。寝室にはあえて柱を見せるような壁のデザインをしており、伝統的な日本建築の要素を感じます。

もちろんカラフルなファッションアイテムも多数コレクションしていますが、全てドレスルーム内に飾り、わびさびの引き算の美学を保っています。そして何より美しい自然に囲まれた環境に自宅が位置し、それらが和式な家のアートの一部になっています。この動画を見るだけでも"心落ち着かせる空間"が伝わってきて、精神的な満足感が得られます。

この日本からインスパイアされたバルヴィンの自宅はコメント欄で絶賛されており、私自身も動画・コメント欄の両方から自信をいただきました。ちなみにテニス界のスーパースター・マリアシャラポワも日本要素をたくさん取り入れた自宅をYouTubeで公開しています。こちらは完全なわびさびというよりは、日本要素をモダン風に上手く融合させています。

日本古来より受け継がれる伝統や精神がこのような形で現代に反映され、今日の世界や新しい価値を作っている考えると、とても誇りに思います。私自身、この素晴らしい環境で過ごしていることに感謝し、日々周りの良い影響にしっかりとアンテナを張り、吸収していきたいと改めて感じました。


今回はNotionの美しい日本オフィスに心動かされて、同社について美学の観点から調べましたが、やはり彼らの持つ美意識が反映されていました。そしてそこには日本の伝統と文化が流れていると分かると、日本文化の底力と影響力を感じます。

ちなみにアメリカ・サンフランシスコ本社の画像も探したところ、やはり数は少ないですがソファやアートなど1点1点こだわり抜かれたインテリアが置かれていました。その画像の出所が2019年の記事だったため、2024年現在のオフィスの内装は不明な部分があります。しかしNotionのビジョンと美学を理解し東京オフィスの様子を見る限り、とても素敵な空間であることでしょう。

最後にオシャレで個性的なインテリアや色づかいは、やる気を引き出すと同時に、感性を刺激しクリエイティブな環境に適していると言われています。またアートのような0から1を生み出したモノを鑑賞することも、創造性を高めるのに役立ちます。そして実際にコンチワート(YouTuberコンチのファンアート)を作った私がここにいます。私自身、部屋にコンチワートを飾ってから、室内が明るく豊かになったと実感しており、以前より心の健康に繋がっていると実感しています。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
心より感謝します。

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