世界中で人気の“DIN”という書体とは
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。今回のビジネスに使える理由:
世界中で人気のDINという書体
わたしたち日本人だけでなく、世界中で不思議と人気な書体がいくつかります。Helvetica(ヘルベチカ)は、デザイナーではない方でもご存知かもしれないほどの有名な人気書体です。Panasonicのロゴには、このヘルベチカが使われています。
Helveticaと同じくらい人気な書体に、Futura(フツラ)という書体もあります。こちらは、ルイ・ヴィトン、フォルクスワーゲン、ドルチェ&ガッバーナ、オメガ(腕時計)などに使われてます。ほかにもいくつかありますが、今回ご紹介するDIN(ディン)という書体もかなり人気の書体です。なんかそっけない書体なのに。どんな書体かみてましょう。
ご覧の通り、幾何学的で、人間味は少ないみための書体です。それだけでなく、この書体は、「視認性」が高い書体でもあります。視認性が高いとは、たとえば、遠くからや小さな文字でも誤認しないで識別できるという意味です。たとえば3と8って小さくみるとときどき読み間違えてしまいます。そういった誤認がないようにDINは、3の空いている部分を大きめに取っています。あえて小さくDINの3と8
を表示してみましょう。
違いがわかりやすいですよね。同じ大きさで、Helveticaを表示してみましょう。
もう少し小さくするとちょっとわかりにくくなりそうですよね。このようにDINという書体は、ちゃんと識別できる文字で、むしろそれを目指してデザインされた書体です。なぜか?DINとは、JISと似た存在なんです。JISとは、日本産業規格のJIS=Japanese Industrial Standardsの略です。JISマークってありますよね、あのJISです。
DINとは、ドイツ工業規格を制定するドイツ規格協会(独: Deutsches Institut für Normung)の頭文字です。「ダイン」とも読みます。この工業規格に登録された書体がDINの始まりです。なので登録番号の1451が、はじめついていました。それから改定されたり、なんだりで現在ではDIN Nextという書体が一番バリエーションが多いバージョンです。このDIN Nextの制作には、日本人の小林章氏が関わっています。
どのような場面でも表示しやすいように簡素化され、且つ読みやすいのがDINです。工業用とは、具体的にどのように使われているのか。それは製品のスペックなどの表示や高速道路の看板やナンバープレート(1956–1995年)などです。
DINの誕生
1931年、ドイツ規格協会はDIN1451をリリースしました。いまなフォントとして書体はデジタルな存在ですが、1931年当時、DIN1451は、機械彫りのレタリング、手書きレタリング、レタリング用ステンシル、印刷用書体などとしてリリースされています。ちなみにこのころのドイツは、ヴァイマル共和政です。1933年になるとナチス・ドイツが誕生します。
どうして人気なのか
DINが人気な理由はシンプルで、このそっけなさ具合が、へビューデューティー的な格好良さを醸し出しているからです。工業用ってかっこいいんですよね。合目的で。切ることだけが目的の日本刀の美しさや速さだけを求めた飛行機の形に通じる魅力がそこにはあります。こちらは、ウェス・アンダーソン監督の映画『ザ・グランド・ブダペスト・ホテル』のシーンです。
たとえばFuturaはDINより、幾何学的で、Helveticaは、DINよりちょっと人間味があります。DINは絶妙に美しいのにそっけないんです。ちなみにFF DINとは、FontFontから出ているためFFがついているDINです。1995年にAlbert-Jan Poolによってデザインされました。
とはいえ、グラフィックデザイナーではなけば、DINのバージョン違いをそれほど気にかけなくても良いでしょう。ただDINというのは、1931年にドイツで生まれた素っ気ないのに機能として優れ、その素っ気なさがゆえに長年、世界中で人気の書体だ、ということを知っているだけで、ばっちりなアドバンテージになるはずです。それでは、そんなDINの使用例をもう少しみてみましょう。
DINの使用例
まとめ
こうしてみてみると東京オリンピック2020年のロゴに使用されたのは、あらたに起用された新シンボルマークと親和性が高そうにみえて、そうでもなく見えてきます。不思議と。デザインなんて、正直っていって、良し悪しは明確にできない部分があって、そのマージン部分が鬼門であり、かつ魅力でもあったりします。ゆえにどのデザインがより良いのかという議題は結論がでませんので、多数決が使われたり、有識者だったり、選考委員会などが機能してくるのでしょう。それはそれとしてDINです。そっけないのに仕事ができる、そんな書体がDINのキャラクターに思えます。『呪術廻戦』なら、七海建人が近いキャラクターな気がします(笑)。
参照
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