MARNI(マルニ)はどんな書体を使っているのか
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
マルニというブランド
ブランド名:マルニ(Marni)
創業:1994年(イタリア、ミラノ)
創業者:コンスエロ・カスティリオーニ(Consuelo Castiglioni)
本社:イタリア、ミラノ
親会社:OTB グループ
マルニ・グループ(Marni Group S.r.l.)、通称マルニは、1994年にコンスエロ・カスティリオーニによってイタリア・ミラノで設立されたイタリアの高級ファッションブランドです。当初は毛皮ビジネスを展開していましたが、すぐに変貌を遂げ、革新的なプリントと色使いを特徴とする実験的なコレクションで世界的に有名となりました。
マルニは2015年にイタリアのファッショングループOTBに買収され、2016年にフランチェスコ・リッソ(Francesco Risso)がブランドのクリエイティブ・ディレクターに就任しました。
歴史
カスティリオーニ家時代 1994年–2016年
マルニは1994年、スイス人デザイナーのコンスエロ・カスティリオーニによってイタリア・ミラノで設立されました。
2000年代初頭までに、マルニはメンズウェア、アイウェア、フレグランスを発表し、その勢力を拡大しました。マルニは、ファッションブランドではなく、ライフスタイルを表現するブランドとなっていきました。注目すべきは、アーティストやデザイナーとのコラボレーションで、芸術へのコミットメントを表現しています。
2000年からは、高級百貨店への出店を開始。またこのころからオンラインストアも始めています。
OTBグループ時代 2012年~現在
2012年までに、カスティリオーニ家はマルニの小売事業を拡大するために金融パートナーを探していました。同年、カスティリオーニ家は、会社の60パーセントをレンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)のOTBグループに売却し、その後2015年にOTBグループによって完全に買収されました。
2016年、コンスエロ・カスティリオーニら一族が退社し、代わりにマルニはフランチェスコ・リッソをクリエイティブ・ディレクターに起用しました。
2018年、同社はステファノ・ビオンド(Stefano Biondo)をCEOに任命。 2019年、彼の後任としてバルバラ・カロ(Barbara Calò)が就任します。
マルニのロゴ
ベースになっている書体はFutura (Extra Bold)(フツラって読みます)。Futuraは、世界で一番か二番目かに人気の書体で(たぶん一番有名)、街を歩いていて、レコードを漁っていて、映画を見ていて、見ない日はないほどです。ルイ・ヴィトンのロゴもFuturaですし、昨晩見た『John Wick Chapter 4』にも出てきました。
Futura
書体名:Futura(フツラ)
カテゴリ:サンセリフ体
分類:ジオメトリック
デザイナー: Paul Renner
ファウンダリー: Bauer Type Foundry
リリース年:1927年
Futuraを使っているブランド例:
ルイ・ヴィトン
ナイキ
シュプリーム
オメガ(時計)
ドルチェ&ガッバーナ
同じ書体でも印象が違う理由
違う系統のブランドなのに同じ書体を使っていることを不思議と思うかもしれません。しかし書体そのものがファションブランドのような性質を持っていて、同じブランドの服でも着る人が違うと違った印象になるように、書体も「着方」でだいぶ印象が変わってきます。それと「誰が」着ているのかということも同じように印象を形成する要因のひとつです。
ファッションブランドと書体の関係に当てはめていば、着方のひとつは「文字間」です。詰めていくほど、速く、俊敏、せっかち、な印象に、文字と文字を話すほど、落ち着いた、のんびりとした、品格のある印象になります。
Marniの場合は、もうちょっと異常なくらいに「マ・ル・二」という文字間で他のブランドと明確な差が形成されています。
余談ですが、人気のある書体を使う理由は、人間は「見慣れたものに対して好感を抱く傾向がある」ことをブランドが利用しているということがあります。個性的な方が良いと思われがちですが、実際のところは「見慣れたもの」+「新しい何か」のほうが良いようです。見新しすぎるとまずは警戒から入ってしまいます。
マルニはロゴ以外ではどんな書体を使っているのか
このウェブサイトで使われている書体は、Futura-ptのみ。Futura-ptってFuturaとどう違うのか?と思われるかもしれません。書体の名前は一緒なのに、そのうしろについている文字がちょっとずつ違う……ということがときどきあります。これは「リリース元」を示したもので、書体は同じでもリリースしているところが違うことがあることを意味しています。
Futuraは、もともとBauer Type Foundryからリリースされていましたが、現在では複数のフォントベンダーからリリースされています。有名所でいえば、ドイツのLinotype(ライノタイプ)世界的にも大きいフォントベンダーからリリースされています。その他にもURW(ドイツ)、そしてParatypeというところからもリリースされています。
そしてFutura-ptは、このParatypeからリリースされているFuturaということになります。
OTBグループ
オンリー・ザ・ブレイブ(Only The Brave, S.p.A.)、通称OTBグループは、ブレガンツェ(イタリア、ヴェネト州ヴィチェンツァ県の町)に本社を置く、高級品に特化したイタリアのホールディング型多国籍企業です。
同社は2002年、レンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)によって、ディーゼルおよび将来的なファッションハウス買収のための持ち株会社として設立されました。
OTBグループ傘下のブランド
ディーゼル(イタリア)
メゾン・マルジェラ(フランス)
マルニ(イタリア)
ジル・サンダー(元ドイツ)
ヴィクター&ロルフ(オランダ)
2022年の年間売上高は17億4,000万ユーロを記録。2017年からはウバルド・ミネリ(Ubaldo Minelli)がCEOを務めています。
歴史
1985年にディーゼルの全権を取得した後、OTBの創業者であるレンツォ・ロッソは、2000年10月にファッションの生産・物流・マーケティング会社であるスタッフ・インターナショナルの買収を通じて、ポートフォリオを拡大し続けました。
2002年、OTBグループは、財務的な安定性に欠けるが、ロッソが創造的で有望と判断したデザインを生み出すファッションデザイナーや企業に投資するための持ち株会社として設立されました。
その後、2002年にフランスの高級ファッションハウスであるメゾン・マルジェラを、2008年にオランダの高級ファッションハウスであるヴィクター&ロルフを買収しました。
2011年、ブレイブ・キッド(Brave Kid)はOTBグループの子会社として設立され、ライセンスを受けた高級子供服やアクセサリーの商品開発、生産、販売を専門に行っています。ブレイブキッドは、ディーゼル、ジョン・ガリアーノ、ディースクエアード²、マルニ、N21、トラサルディとライセンス契約を結んでいます。
イタリアの高級ファッションブランドであるマルニは2012年に買収され、次いで2019年にアミリ、2021年にジル・サンダーが買収されました。
2023年、OTBグループはジル・サンダー ブランドの長期サプライヤーである革製品メーカー、フラシネティの株式の過半数を取得しました。
まとめ
Marniといえば、2012年のH&Mとのコラボが話題になり、以降もUniqloとのコラボが好評だったりします。2022年のUniqloとMarniのコラボがいったん終わったようですが、Marniのマイペースでユニークで派手なのに落ち着いていて、遊び心のあるブランドが、コラボを通して広く浸透したのではないかと思っています。
ブランドというのは、作り上げた人がすでにいないものが多いです。にもかかわらずイデオロギーがなんだかんだ残っているもので(残っていなければ、存在意義が問われてしまう)、その実態を離れたイデオロギーだけで残るあたりが、いつも哲学に似ているように思います。
Marniは、やっぱりコンスエロ・カスティリオーニさんのイデオロギーが残っているように感じます。2024年 のSSプレタポルテ・コレクションの動画↓です。
音楽は、クリエイティブ・ディレクターのフランチェスコ・リッソと頻繁にコラボレーションしているデヴ・ハインズ(Dev Hynes)。白いビニールの白衣を着た小編成のオーケストラによって演奏されています。
プレタポルテの作品の一覧。
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参照
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