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【小説】あと35日で新型コロナウイルスは終わります。

~ネットカフェで消えた財布の謎~

「財布を持って入店しました。財布からここのメンバーズカードを出したんです。防犯カメラで確認してもらってもかまいません。」

そのお客さんは胸を張って答えた。

「すぐに財布をバッグにしまい、2階に上がったら、ブースに行く前に、バッグを持ったままトイレに行って、そのあとブースに行くときにドリンクバーに寄りました。夜9時にブースに入ってから、朝の10時までバッグも財布も持ち出していないから、落としたなんてあり得ないんです。」

「う~ん。じゃあ、もう一つ聞きたいんだけど、君が寝てたときに盗まれたんだよね? ブースのドアを開けて、そのバッグのチャックを開けて財布を取っている間、君は気づかないかな? 起きないもんなのかな?」

その警察官が疑うのも無理はなかった。世間一般のネットカフェに対するイメージはどうか知らないが、ネットカフェは意外と窃盗が少ない。アキナも何百晩も利用したが、自分も、自分の身近でも財布の窃盗はおきていない。というのも、

✔メンバーズカードを作るとき、必ず身分証明書をスタッフが確認して、そこに載っている氏名・住所・生年月日でそのカード作成する。

✔メンバーズカードまたは身分証明書で入店退店するため、店にその人の入店時間と退店時間とブース番号が記録されている。

✔監視カメラが至るところについている。

✔人気店は、24時間、スタッフやお客さんが廊下を歩いている。

✔トイレやシャワー室に行っている最中ならまだしも、そのブースの中に人がいる最中に開けるのはかなりのリスク。なぜなら、中にどんな職業(警察官とか)や恐い人がいるか分からないので。

✔ブースの利用者は、そのブースを借りている間、いつでも内部の金庫を使える。この金庫は自分でパスワードを設定できるので、ブースを開けるというリスクを犯しても財布を見つけられる可能性は低い。


「バッグから(電子)タバコを出したんです。そのとき、バッグから財布がフラットシートの上に落ちたのかも……」

そのお客さんは言った。

「ほんとうにバッグから財布が落ちたの?」

警察官は確認した。

「……たぶん……」

「『たぶん』って、そこ重要なんだけど?」

「眠ってしまって。とても、眠かったから。」

話が膠着していると、店長がバックヤードから顔を出した。

「監視カメラの許可が下りました。」

警察官は立ち上がって、事務所に向かった。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと35日。

これは、フィクションです。

 ◆自殺を防止するために厚生労働省のホームページで紹介している主な悩み相談窓口

 ▼いのちの電話 0570・783・556(午前10時~午後10時)、0120・783・556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

 ▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570・064・556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

 ▼よりそいホットライン 0120・279・338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120・279・226(24時間対応)

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