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【小説】あと52日で新型コロナウイルスは終わります。

~家庭内暴力と性暴力~

⚫⚫クリニックはお産施設のない産婦人科の医療機関であるため、件数は少ないが、家庭内暴力と性暴力の被害者が受診することがある。

個人的に受診することもあれば、警察から電話連絡がきて、警察官に連れられて被害者が受診することもある。

「ここは産婦人科だから、受診する被害者は女性だけだけど、以前、別の科に勤務していたときは、性暴力の被害者は、若い男性も多かったんだよね。」

と、先輩看護師は声をひそめた。

* * *

DV対策の新組織、「男女間暴力」名称にネットで賛否

国内 朝日新聞デジタル 2020/9/29 22:22

 政府は家庭内暴力(DV)や性の対策を強化するため、10月1日付で内閣府に「男女間暴力対策課」をつくる。名称に「男女間」とあることをめぐり、インターネット上で賛否の声が出ている。女性への暴力の根絶が主な狙いで、対策強化を歓迎する声の一方で、「同性間の被害などが無視されている」との批判もある。

 対策課は、DVや性暴力の問題に取り組んできた「暴力対策推進室」を格上げして発足する。性犯罪の被害者支援や相談体制の強化が狙いだ。担当する橋本聖子男女共同参画相は29日の閣議後会見で、「新設を契機に女性に対するあらゆる暴力の根絶に向けた取り組みを一層強化したい」と意気込む。

 課の名称に「男女間」とついたことには、ツイッター上で「同性間の性暴力に対応する気がないことがわかる名前だ」「男女限定とは時代錯誤」との投稿があった。「女性は男性に暴力をふるわない前提なのか」とする疑問の声も聞かれた。

 内閣府の担当者は朝日新聞の取材に「男女間がないと、暴力対策課になり、あらゆる暴力に対応するようにみえる問題があった」と話す。現状では男性が加害者、女性が被害者のケースが多いとしつつ、「同性間の暴力のケースなどを排除しているわけではなく、歯がゆいところではある」としている。

 加藤勝信官房長官は29日の会見で、「性暴力は性別を問わず人権を著しく踏みにじる決して許されない行為だ」とした上で、組織改編を機に政府全体として取り組む考えを示した。

加藤勝信

* * *

これほど“多様性”が叫ばれている昨今、新しい組織を作る際、なぜ、わざわざ”男女間”と付ける必要があるのだろうか。

家庭内暴力も性暴力も、“男性から女性へ”の暴力だけでなく、“男性から男性”、“女性から男性”、“女性から女性”、“性的区別のできない”暴力も容易に想像がつくはずだし、“男女間”と名称がつくことにより、相談しづらくなる被害者がいることや、暴力被害を”被害”と認識できない被害者もいるかもしれない。

「娘だけじゃなくて、旦那や息子や甥っ子にも、性暴力に遭わないように注意しているし、もし、被害者になった場合は、すぐに相談してって言ってあるの。」

先ほどの先輩看護師はキッパリと言った。

新型コロナウイルスによるリモートワークやリモート講義の拡大で、女性が被害者となる暴力は、政府も医療機関も認識しつつあるが、その影には、誰にも相談できずにいる被害者がいることも考えなければならない。

新型コロナウイルスが終わるまで、
あと52日。

これは、フィクションです。

 ◆自殺を防止するために厚生労働省のホームページで紹介している主な悩み相談窓口

 ▼いのちの電話 0570・783・556(午前10時~午後10時)、0120・783・556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

 ▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570・064・556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

 ▼よりそいホットライン 0120・279・338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120・279・226(24時間対応)

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