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誰にも秘密のお店

自分一人だけの行きつけのお店ってありますか?ご飯屋さんでもいいし銭湯でもいいし、映画館でもいいし。とにかく「ここだけは自分のテリトリー」と分別している場所。私はあります。大学卒業後にたまたま見つけたテラスのある地元型のフランス料理屋で、かれこれ通って5,6年になります。

友達とご飯をして飲み足らない時に、解散後一人でふらりと立ち寄るその場所。恋人がいてもその場所の存在自体を話すこともないくらいで、知り合いと行きたい場所ではありません。

地元型だからお客さんも変わらず、時間をかけて話が出来るようになりました。敷居を跨いだ23歳の私はワインなんて全く分からなくて、とにかく安くて美味しいおススメをマスターが出してくれていました(デザートはマスト)。新しい味を一口教わって、でも苦くて飲めなくて笑われて。常連さんは私よりも年上のお兄さん・お姉さん・イケおじ・美しおば様だからたくさん可愛がってもらってきた場所でもあります。

仕事で怒られた日、納得いかなかった日、友人と話したけど発散できなかった日、恋愛がうまくいかなかった時、「しいちゃんどうしたのよ~」と沢山話を聞いてくれて、間違いを指摘してくれて、大人のアドバイスをくれて、前を向かせてくれる。私の先入観を和らげてもらえて、自分もこんな素敵な大人になりたいと思わせてくれる人達。

普段同年代と話す私とは全く違う私だから、この場所には一人で行こうと決めていました。というのは建前で、本当はこの特別な場所を独り占めしていたかったんだと思います。自分だけが知っている特別を誰にも教えたくなかったんだと。そう思っていた時点で私はまだまだ子供でした。

先日、そこに初めて人を連れて行きました。2歳年下の彼(例の大型犬)は、正直社会的に見たら100点だと思います。素晴らしいところに就職してグングン伸び伸び楽しそうで、その会社にこだわらず自分の人生を長く見ている。でもやっぱりこんな27歳の私から見てもまだ可愛らしい部分が残っています。意地っ張りで頑張りすぎていて、吐き出し場がなくてたまに苦しそうです。

だから私の特別な場所へ招待しました。「誰にもこの場所言わないでね」と一言添えて。

ここにはたくさんの大人がいます。聞くと「何歳になっても心は子供のままで大人になった感じしないよ」と言われますが、それでも経験の場数が私たちより圧倒的にある。経験こそ武器で、成功と失敗を何でも教えてくれる最高な人たちがいる場所に彼を放ってみた結果。疲れていたのかな、すごくキラキラ楽しそうに泣きながらワインを飲んでいました。

会社勤めの人がいて、起業家がいて、シルバーの人がいて、子育てを経験された人がいて、離婚を笑い話にしちゃう人もいて、シングルを楽しむ人もいて。日常生活では交わることのない人たちと話すことで刺激を受け、新しい案を得て、そしてそれぞれが自分の日常に戻っていく。

私自身「人生は経験してなんぼ」と思っているから、正直人とドンドン出会っていくことに抵抗はないし、だから旅行とか言っても現地の人と話すのとか、野球観戦で隣に座った人と話すとかするけど。それが得意じゃない人、あんまり賛成じゃない人もいるとは分かってます。でも私は得られるものがあるから行動しています。勿論、面倒な顔をされたらサッと引きます。

よく価値観は家庭環境がすべてと言われるけど、私はそうは思っていなくて、大人になって出会う人によって変われると考えています。自身も学生時代はめちゃ人見知りで「つまんない」が口癖だったけど、出会う人たちが「熱量高めの私」に変えてくれました。というより、変わりたいと思いました。だってその方が楽しそうだから。

頑張っていることを認めてくれて、「またおいでね!」と言ってくれたことに喜びスッキリした彼は、またいつも通り「しいなちゃんしいなちゃん!」と私の近くで尻尾を振ってくれています。私はうまく私自身の言葉で彼を支えることにまだ自信はないけど、少しくらい助けることができる。私一人で難しければ、沢山の憧れの大人達が側にいてくれる。

こういう関係性も、アリだと思うんです。

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