椎木ひさ

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色んな小説書いてます。傍らには猫。読んで下さった方になにかしらお届けできるものがあればうれしいです。フォロー・いいね等とても励みになります!noteのほかに⦅Prologue⦆と⦅Nolaノベル⦆にも投稿しています。

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  • 短編小説 | twitter#トレンドワードをお題にした物語

    twitterの#トレンド入りしたワードをお題にした物語です。それぞれのトレンドワードから広がる物語を楽しんでいただけるとうれしいです。

  • 短編小説 | コーヒーを片手に味わう物語

    コーヒーを片手に飲みながら味わってもらえる、コーヒーを絡めた物語です。

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【お知らせ】電子書籍「5分で心震える愛とミステリー」 発売!

電子書籍「5分で心震える愛とミステリー」2022年3月16日に発売されました!(ペーパーブックも発売中) こちらに収録されている「外は嵐」を書かせていただきました(=´ェ`=) 受賞だけでもうれしいのに、書籍として見られるなんて本当にびっくりです。 映像化された作品「我が愛しの殺人鬼」をはじめ、どの作品も素敵なお話ばかり。 心震える恋愛作品や驚きのラストのミステリー作品20作が収録されている短編集です。 すべて2,000文字以内の作品のため、5分でサクッと読めます。

    • 短編小説|密告者

      密告者 「センセー、知らないの?」 「これ、双子コーデっていうんですよ?」  からかうような笑みを浮かべ、ふたりの少女は向かいに座る女講師に視線を投げかける。 「そういうことを訊いているんじゃないわ」  女講師は、苛立ちを堪えながら、そっとため息を漏らし、壁にかかっている時計を流し見る。 「センセー、もしかしてデート?」 「私たちもこのあと予定があるんですよね、まだかかります?」  ねー、とくすくす笑いながら、ふたりは顔を見合わせる。  ここは、女が講師として

      • とても面白そうな企画『空白小説大賞』に参加してみました!

        とても面白そうな企画、2作品参加させていただきました(=´ェ`=) 空白にどのような文章を入れるかによって、ストーリーが幾重にも展開するとても面白い企画です。 空白を埋める前 空白を埋めた後【1】ちょっとじんわりするストーリー 【2】ちょっとクスッとするストーリー

        • 短編小説|英雄なるウィート伯爵の死

          プロローグ  その日、⦅英雄⦆と呼ばれたひとりの男が死んだ。  男の名は、パーマル・アン・ウィート伯爵。  王家に忠誠を誓う、由緒ある伯爵家ウィートの名に恥じぬ人物だった。  貴族としての誇りと矜持を兼ね備え、高潔で知性的、弱きを助ける善意にあふれ、自己犠牲も厭わない彼(か)の人のことを、人々は尊敬を込めて、いつしか⦅英雄ウィート⦆と呼ぶようになった。  そんなウィート伯爵の突然の訃報は、高級紙(タイムズ)、さらには大衆紙(タブロイド)でも大きく報じられ、またたく間

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        • 短編小説 | twitter#トレンドワードをお題にした物語
          3本
        • 短編小説 | コーヒーを片手に味わう物語
          2本

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          短編小説|アリアドネの花

          アリアドネの花 アリアドネの花が咲いていた。 毎年春になると、アリアドネの木は細い枝先から薄紅色の大ぶりの花びらを天に向かっていっせいに咲かせ、穏やかな風とともに街中に甘いにおいを漂わせる。 私の名前アリーネは、春の女神からつけられた。 女神アーヴェスリーネは、春を告げるアリアドネの花びらのドレスを纏っていることから春の女神と呼ばれている。黄金色に輝く豊かな髪と薄紅色の唇をもつ美しい女神は、美の女神とも言われている。 その名をもらった娘は、美しく育つと言い伝えられて

          短編小説|アリアドネの花

          短編小説|桜の木の下の微笑み

          ──なにかがかすかに唇に触れた。 ぼんやりとまぶたを開くと、彼女の微笑みが目の前にあった。 僕はうつろな瞳であたりを見渡す。 春のあたたかな日差しが降り注いでいる。 太陽の向きはそう変わっていなかった。うたた寝してしまったのは、ほんの少しの時間だろう。 僕は再び彼女に視線を戻す。 かすかに口角を上げた品の良い唇、きれいな弧を描く眉、わずかに細められた黒い瞳には、対する僕の姿が映っている。 いつもの彼女の微笑みだった。 サーッと風が吹いて、満開の桜の花びらが頭上

          短編小説|桜の木の下の微笑み

          短編小説|幼い犯罪者

          その日は雨だった。 学校が終わるなり、わたしは急いである場所へ向かった。 ピチョン、ピチョンと、あちこちで雨漏りの音がする。 「クゥーン」 焦げ茶色の子犬がうれしそうにしっぽを振って、古びた段ボールの中からわたしを見上げている。 「ごめんね、濡れてない?」 そう言って、わたしは自分の水玉柄の傘を子犬の上に傾けて置く。 幸い子犬がいる場所は漏れていなかったが、それでもいつ雨漏りするかわからない。 わたしは背負っていたランドセルを地面に下ろし、その上にお尻をのせた

          短編小説|幼い犯罪者

          短編小説|不器用な恋とカシス味のチョコレート

          「……っ」 気づけば、朝だった。 痛む頭を押さえる。完全な二日酔い。昨夜どうやって家に帰ってきたのかもわからない。 体をゆっくりと起こし視線を下ろす。昨日着ていた服だった。お気に入りのブラウスもスカートもしわだらけになっている。 なんとか家に帰れただけでもよかったと言うべきなんだろうか。 そっと頬に手を当てると、ファンデーションのざらついた感触がした。予想通り、化粧も落とさずに寝ていたらしい。 「はあ……」 鏡に映るひどい顔を想像するだけで、ため息が漏れる。

          短編小説|不器用な恋とカシス味のチョコレート

          短編小説|愛しいあの子

          寒い──。 ブルっと身震いして、目が覚めた。 先ほどまで、部屋の中に差し込んでいたあたたかな日差しは、すっかり角度を変えてしまっている。 どうりで寒いはずだと目をやると、眠る前に体にかかっていたお気に入りの毛布がなくなっていた。 おかしいな、と思ったのもつかの間、となりで眠るあの子の小さな手がしっかりと毛布を握りしめているのが視界に入る。 どうやら自分の毛布を蹴飛ばしたらしいあの子は、代わりにわたしの毛布を引っ張って自分のものにしたようだった。 やれやれ──。

          短編小説|愛しいあの子

          短編小説|雨上がりの仲直り

          「行ってきます」  そう言った彼は、朝ごはんも食べず、わたしが淹れたコーヒーを一気飲みして、今日も慌ただしく出かけていく。  バタンッ、と玄関のドアが閉まる無機質な音を聞くたびに、わたしの心も凍りついていくように感じる。  この朝の光景が当たり前になってしまってから、もうどれくらい経つだろう。  彼が仕事で大きなプロジェクトを任されることになったと、うれしそうに話してくれたのは、半年前のことだった。  少し良いワインを開けてふたりで喜んだのもつかの間、すぐに忙しくな

          短編小説|雨上がりの仲直り

          短編小説|トイカプセルの中身

          「ほら、これ」  かじかむ手を厚手のコートのポケットに入れ、今朝購入したばかりのプラスチックの丸いカプセルを取り出し、そっと置いた。ゲームセンターなどでよく見かける、ガチャガチャのカプセルだ。  ある墓の前に俺は立っていた。  冷たい風が吹き、コロコロと転がりそうになるカプセルを、足元から拾った手頃な石を両脇にそえて固定する。 「もう三年も経ったよ、おまえがいなくなって」  この無機質な墓石の中に、親友の遺骨が納められている。  小学校からの幼なじみだった。  

          短編小説|トイカプセルの中身

          短編小説|まだそんな格好してんの?

          『まだそんな格好してんの?』  数日前、偶然街で再会した元彼に言われた言葉がフラッシュバックする。  目の前にいるのは、眉根を寄せて嫌悪をあらわにしている後輩スタッフだった。 「前から思ってたんですけど、先輩、着替えないでよくそのまま外歩けますよね」  先ほど彼女が放った言葉だ。  そのあとには、  ──あたしには無理ですけど。  と鼻で笑われた気がした。  わたしと後輩は、働いているアパレルブランド〈プリムローズ〉の店舗裏の更衣室も兼ねたバックヤードにいた。

          短編小説|まだそんな格好してんの?

          短編小説|恐怖の館の殺人鬼

          「きゃあぁぁぁぁぁっ!!!」 「うわあぁぁぁぁっ!!」 「い、いやあぁっ!! 来ないでえぇ!!」  階下から複数の入り乱れる悲鳴が聞こえ、暗闇の中をドタバタと激しく逃げ惑う足音がする。  ここは〈恐怖の館〉──。  そう呼ばれている。    安易に足を踏み入れた者は、暗闇の中、想像を絶する恐怖に慄き、悲鳴をあげ、泣き叫ぶ。  最後の扉まで辿り着かなければ、館からは出ることが叶わない。そういう決まりだ。  ふいに静寂が訪れる。  誰もいなくなったのか。  そんな

          短編小説|恐怖の館の殺人鬼

          短編小説|指先の絆創膏

          「よろしくお願いします」  ──今日からバイトの奥野美月さん、高校一年生。  そう店長から紹介されたあとで、わたしは緊張しながら勢いよく頭を下げた。  邪魔にならないようにと結んだ三つ編みが、肩から滑り落ちて、視界に入る。   人前はとても緊張する。しかもわたしにとっては人生ではじめてのバイトだ。  なんとか緊張をはねのけながら顔を上げると、目の前に並ぶスタッフの人たちの中のひとりに目が留まる。  はじめて正面から見る彼の姿に、わたしの鼓動がどくっと大きく跳ね上が

          短編小説|指先の絆創膏

          #2000字のドラマ|最近の若者は

          『最近の若者は』  何だろう。最近やたらと言われる。  じゃあ言わせてもらうけど、最近の”年寄り”は何なのよ。 「はああぁ」  思わず、盛大なため息をつく。  自分が電車を降りたばかりだということも、つい頭から抜け落ちていて、あわててあたりを見回す。  大学生らしきおしゃれな男の子とすれ違いざまに目が合う。相手は気まずげにさっと視線をそらすと、ホームの階段を駆け下りていく人波へと消える。  ちょっとかっこよかった男の子だっただけに、聞こえたであろう自分の大きなた

          #2000字のドラマ|最近の若者は

          短編小説|特別な味わいをもう一度

          口元にかたむけたカップは空になっていた。味わうでもなく飲んだコーヒーの苦味だけが舌にざらついて残っている。 「はぁ……」 マンションのベランダで男は何度目かわからないため息をもらす。 灰色のスモッグにおおわれた夜空に見える星はわずかで、真下の大通りを忙しなく行き交う車のヘッドライトに目を細める。 手元に握ったままのスマホに目を落とす。同窓会の案内の連絡だった。受信してからすでに二週間が経っている。 大学進学とともに地元を離れ、バイトで生活費を稼ぎながら大学を卒業し、

          短編小説|特別な味わいをもう一度