会社に図書室を発見! 『むらさきのスカートの女』レビュー
会社に図書室のような場所があることを最近知った。
見に行ってみたらなんと、ひっそりと本棚に並ぶほぼ新品の本たち。
様々な受賞作はもちろん、ビジネス書や参考書などもあって感激!
しかも、借りるときは裏表紙にくっついている貸出カードに自分で名前を書いていくアナログなスタイル。(最高じゃないか!耳すま!!)
試しにパラパラと裏表紙を見てみると、まだ誰にも借りられていない本ばかり。
これはもう、私が聖司くん(注※耳すま)になるしかない!!と思ってさっそく借りてきた。
今日はその中で読み終えた一冊、第161回芥川賞受賞作『むらさきのスカートの女』(今村夏子・著)が非常に面白かったので、感想レビューを。
(ネタバレはなるべく、控えます)
----------------------------------------------
この街には奇妙な女がいる。
いつもむらさき色のスカートを履いて、商店街の人混みをスイスイと歩き、公園の決まったベンチに座り、クリームパンを大事そうに頬張っている。
主人公は、この街のホテルで清掃員をしている女性。
ある日、この奇妙なむらさきのスカートの女が同じ職場で働き始める。
とても読みやすく、テンポの良い文章で物語は進む。
もともと、むらさきのスカートの女と友達になりたいと思っていた主人公。
これまで見かけるたび観察してきた。
同じ職場になることができ、何度も話しかけようと思うのだがなかなか声をかけられない。
目も合わない。
そのうち、「奇妙」だと思っていたむらさきのスカートの女が、同僚から日に日に受け入れられてゆくのを目の当たりにする。
きちんと話すし、仕事もでき、信頼され、人気者になってゆく。
そんな光景に違和感を感じながらも、主人公はむらさきのスカートの女の観察を続ける。
「この女は奇妙なんだ。私が一番彼女のことを知っているんだ。」と言わんばかりに。
そしてあるとき、むらさきのスカートの女に事件が起きて・・・・
終盤、突然読者を混乱が襲う。
まさに、足元がグラっとする感覚だ。
今まで何を読んできたのか。
むらさきのスカートの女とは誰なのか。
まさに「奇妙」としか言えない展開を迎え、物語は一気に収束する。
-----------------------------------------------
読み始めてすぐ、そのスピード感に夢中になった。
でも、スピード感にのまれて気がつけば、あっという間に置いていかれている。
そんな感覚だった。
この本を読んで思ったのは、奇妙って何だ?ということ。
人の奇妙さって正確に言語化できるのだろうか。
自分が奇妙でないと、どうして証明できるのだろう。
そんなことを思わせ、大いに胸の内をざわめかせてくれた、めちゃくちゃ面白い本だった。
みなさまもぜひ、ご一読あれ!
*ちなみにこの本の装丁、紙質、カバーを外した表紙のデザインもとても良かったので、ぜひ手にとって読んでいただきたい。
(これはカバーを外したところ)
------------------------------------------------
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?