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“食のエッセイ”は読んで味わう心の食べ物みたいなもの。

飽食の時代と言われて久しく、世にはグルメ本やグルメ番組が数多く提供されており、特に週末ともなるとテレビでグルメ系の番組やコーナーを見ない休日はありません。

という自分も実はこの系統の番組は嫌いではありません。なぜかというと食べるのが好きということもあるが、とかく食は何かとエピソードとお揃いになることが多く、けっこう心に響くことが多いのです。土曜深夜の加藤浩次の「人生最高レストラン」はお気に入りの番組の一つです。

そこで、食のエッセイ本を少々ご紹介したいと思います。読まれている方もたぶん多いでしょうね。

池波正太郎はかなりの食通であり、食べることを愛すとともに必ずそこに人が絡んでいます。タイトルに「〜情景」としているところが絶妙であり、この時代の人々の生活そのものも映されており、まさに情景にふさわしい内容です。
私が初めて上京した時に、目黒の親戚の叔父に連れて行ってもらったトンカツの名店「とんき」は池波氏のお気に入りの一つで、トンカツもさることながら、とんきの女性店員の接客が素晴らしいことが書かれており、確かにそうだったかなあっと、懐かしく思い出しました。

ライスカレーとカレーライスの違いは何?。若い人は皆さんカレーライスでしょうが、我々の幼少の頃は「今日の晩ご飯はライスカレー!」などとよく母親に言われたものです。さーて違いは何でしょう?

大嫌いだったチキンライスが好きになった話も出てきます。お子様ランチには必ずチキンライスがついてきましたが、デパートの最上階のレストランで食べたあのケッチャプ味たっぷりのメニューは、ナポリタンに負けず劣らず私も大好きなメニューの一つです。しかし池波氏は大嫌いだった。ところがある店のチキンライスにいたく感動し、それから大好きになったと言う話。などなど至極の楽しいエッセイが満載です。

たまたま私が持っている2006年発刊のムック本「歴史を歩く」の中に池波氏が気に入って通っていたお店の数々が載っていました。

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そして、JAL機内誌に掲載された浅田次郎のエッセイをまとめたこちら。食専門ではないが食にまつわる話が多いです。

機内で読んだのが、ちょうど鹿児島の有名店「シロクマ」の練乳をたっぷりかけたアイスを食べたいと妄想する話。思い出したら氏の頭の中は常にシロクマのことでいっぱい。しかし鹿児島へ取材で出張しても時間がなく行けない。相当後になってやっとシロクマへ辿り着くが、その話はまた別な号で紹介されていた。なんとやっと来れたというあまりの感動に氏は同じものをお代わりしたという話には機内で思わず頬を緩めてしまった。

そういう私もなんとか2015年に出張の合間に鹿児島の繁華街「天文館」の入り口にあるシロクマの練乳アイスに辿り着いた。たぶん普通の練乳かけかき氷なのだろうが、浅田氏が苦労してありつくことができたアイスを自分も食べているという興奮から極めて美味に感じた。

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この大きなシロクマも可愛いが、今やスーパーやコンビニなどでシロクマアイスが買えるようになったのは、浅田氏の苦労が実った成果なのかもしれない。

そして次は原田マハの旅と食のエッセイとも言えるこちら。

旅や絵画の話のみならず、ぼよグルと称して友人とあちらこちらを旅しながら、その地の食に舌鼓を打つ話が多い。越前のカニや高知の餃子、黒石焼きそばなどご当地食レポが楽しく読める。中でも料理の名称の起源でもある天津での天津丼や、ナポリでのナポリタンの話は笑い転げてしまうほど実に楽しい。ご一読をお勧めします。


最後はかなり古いが、1951年から68年にかけて刊行された食の雑誌「あまカラ」から選び抜かれた随筆集。


全3巻からなるが作家、学者、詩人、評論家など多士済々な顔ぶれが書く食に絡む至極のエッセイです。私の手元にも何度かの引っ越しの合間に持っていた第1巻が見当たらなくなり、手元には第3巻しかなく、中古本で買おうかと思っているところです。昭和30年代から40年代に書かれたエッセイばかりで、現在の飽食と比較して読むと時代の変遷を感じざるを得ず、大変興味深いです。本当に豪華執筆陣です。幸田文、司馬遼太郎や小林秀雄などが食べ物についてのみ語っている話など他では読めません。

かく言う私も数年前までは出張が大変多く、仕事も極めて忙しいなか、行く先々でのご当地の食べ物にありつくことが本当に楽しみでした。

閉店間際に飛び込んで食べた米沢ラーメン、猪苗代湖のほとりで食べた絶品牡蠣フライ、帯広駅前パンチョの豚丼、山形の蕎麦つゆで食べたラーメン「とりそば」、などなど。いずれnoteで書き綴ってみたいと思ってます。

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