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【ハーブ天然ものがたり】すみれ

すみれ王国、日本


「すみれ」には清楚なたおやかさがあり、不用意に踏みこんではいけない太古からのお約束があるような、とくべつで、神秘的で、不可侵ヴェールに包まれたフシギ感が漂います。

すみれは都会の道ばたでも見かける身近な植物ですが、深い紫色(すみれ色)の花が独特な神秘性を醸すのでしょうか。
それとも5枚の花びらの、絶妙なうつむき加減のなせるワザでしょうか。

すみれと呼ばれる野草は種類がたくさんあり、分類学上では学名Viola mandshuricaビオラ・マンシュリカと命名されたものが基本種とされています。
すみれ愛好家の方々は広義にすみれと命名された種と区別するように、基本種に限ってはマンシュリカと呼称するとか。

すみれの種類はいまこのときも現在進行形でさかんに分化が行われており、学名をつけることさえ追いつかないといいます。
(表題写真はコスミレ 学名 Viola japonica L.)

地球上でいちばん分化が進んでいるのはキク科植物(世界中でおよそ2万種、日本で生育しているのは360種ほど)だったと思いますが、創造降下がとどまるところを知らないスミレ属の勢いに、いつか追い越される日がくるのかもしれません。
日本ではスミレ属の範疇で、濃い紫からうす紫、白や黄色の花を咲かせるものも含めて、学名をつけられた種子小名は200~250ほどあるそうです。

文字通り日本全国、沖縄から北海道まで、温度や土質など環境にあわせて固有種が自生し、道ばたに群生するものから、山奥や渓流沿いにひっそりと咲くもの、河畔やあぜ道に連なるもの、高山種に変化したものまで、みごとな環境適応能力で、地表のほころびにすみれヴェールをかけていきます。

というのもすみれは、背の高い植物が多く育つ場所(ひらたくいうと植物にとって恵まれた環境といいいましょうか)には、自生しにくい特徴をもっており、逆にほかの植物が生育しにくい劣悪環境、砂地や岩の裂け目、コンクリートのひび割れから、するすると生育するのです。

吹けば飛ぶような可憐な印象のすみれですが、植物が地球の衣だとするならば、生地のほころびをつくろうようにどこにでも咲く、侮りがたしスミレ属の生命力に、ほれぼれと感じ入ることも多いです。

スミレ属は世界の温帯に約400種、日本には約50種がある。
しかしながら、地方変異やさまざまな変異があり、非常に多くの変種や品種が知られている。
単なる形変わりと思われるものまで含めれば、学名が与えられているものの数は200にも達する。
人目を引く色や姿であり、愛好家が多い関係もあるが、非常に変異の多いのもまた事実である。
そうした背景に加えて我が国は世界の陸地のわずか0.3%の国土しか持たない狭い国土にも関わらず世界のスミレ種の10%以上の種が存在し(変種、亜種、交雑種を含めればそれ以上)を産することから “日本はスミレ王国” とさえ言われる。

ウィキペディア-スミレ属

*以下「日本産スミレ属一覧」よりお借りしました。

タチツボスミレ
ニオイタチツボスミレ
イソスミレ
アオイスミレ
アケボノスミレ
ウスバスミレ
ヒメスミレ
マルバスミレ
ミヤマスミレ
スミレ(マンシュリカ)


「すみれのすべては鼻です」


結実まえの最終プレゼン、目いっぱいの開花という自己表現を、地面の方へかしげるように咲く、すみれをはじめとする植物は、天空よりも地球への興味・関心が強いのかもしれません。
あるいは太陽を中心に、地球より内にある惑星、水星や金星との結びつきが強いのでしょうか。

ルドルフ・シュタイナー「霊的宇宙論-霊界のヒエラルキアと物質界におけるその反映」
図中の記号は下から順に、地球、月、水星、金星、太陽
火星、木星、土星
ルドルフ・シュタイナー「遺された黒板絵」

すみれは何をするのでしょうか。
すみれのすべては鼻です。
たとえば、水星から流れてくるものを、すみれは非常によく感じとります。
そのように、植物界のどの存在も、
惑星界から匂ってくるものを感じとっています。
そして植物からは本当に、
天の匂いが私たちの方へ向って薫ってくるのです。


「天の匂い」はヒトの嗅覚レセプターに香り分子が飛んできて、その刺激が信号となり脳に到達して云々、という経路で認識できるシロモノでないことは確かでしょう。

そこはかとない印象、雰囲気、気配、しるし。
頭のなかのおしゃべりが止んで、こころが澄んでいるときに、かすかにほのかにわずかに受けとることができる微細な光加減。

「嗅覚で受けとる香り」の強弱に関わらず、すみれはみんな「天の匂い」を放出している(と考えると楽しくなります)のであれば、すみれに親しむことで惑星や天仙界の気配(匂い)を感じる練習ができるのかもしれません。

とはいっても地上生活の経験もまだまだ足りてないし、五感も活用したいんじゃぁ、という場合は欧米でポピュラーなニオイスミレがあります。

ウィキペディア-ニオイスミレ(匂菫、学名:Viola odorata)

ニオイスミレは香水や化粧品、薬用植物として使用されてきた歴史が古く、古代ギリシャでは怒りを鎮め気分を穏やかにするハーブとして就寝時に使用されたといいます。
中世ヨーロッパ時代には薬用植物として、とくに眼病や頭痛に効くと評価されてきました。

キリスト教では聖母マリアと関連が深い植物とされ、誠実さと謙虚さの象徴として不動のポジションを得ている感があります。
中世のころは教会や家などの床にハーブをまいて、建物内を浄化する風習があり、ミントやローズマリー、マジョラムなどはよく耳にするところだと思いますが、ニオイスミレも建物の神聖さを保つため重用されてきたハーブです。

バラやラベンダーと並ぶほどの香水原料でもあり、ハーブティとしてはもちろん、ワインの香りづけ、砂糖漬けにして色味の美しい菓子の飾りにも使用されてきました。

ニオイスミレが商業ベースにのったのは18世紀からで、1輪の鉢からでも部屋中によい香りがただようニオイスミレは、当時のヨーロッパ、とくに都市の不快な匂い消しに功を奏するものとなり、小さなブーケをポケットや襟裏、ボタンの穴、帽子につけるなどして、香りつきファッションが好んで取り入れられたといいます。

ニオイスミレの精油は葉から採油するヴァイオレットリーフを見かけることはありますが、花から採油した精油を見かけることはありません。
たぶん大量の花が必要になるし、現代では需要もそんなに多くないので採算が合わないのではないかと。

ニオイスミレの花は乾燥したものがヴァイオレットフラワーという名で市販されています。
ワイン好きの人ならばすみれの香りはなじみ深いと思いますが、飲まない人も園芸種でスイートヴァイオレットの鉢を探すと、すみれの香りを堪能できると思います。
園芸種の場合ビオラ、パンジーなども含めると多種多様なスミレ属があり、リアル店舗で香りを聞きつつ、ご縁を結ぶのも楽しいのではないかな、と。


千花模様/ミルフルール


ニオイスミレはヨーロッパの史話によく登場し、芸術家にインスピレーションを与えるミューズの花でもありました。

ナポレオンがスミレ伍長とあだ名されるほどのスミレ好きだったお話や、古代アテネが「ニオイスミレの都」と呼ばれていた記述はネット上に散見しています。

スミレは苔のはえた石の下で半ば人目にかくれて咲いている。
空にひとつ光っている星のように美しい

イギリスの詩人ウィリアム・ワーズワース(1770-1850年)

ぼくは昔 美しい祖国を持っていた 
そこでは 樫の木が 高く育ち 
すみれは優しくうなずいてくれた 
それは夢だった

ドイツの詩人ハインリヒ・ハイネ(1797-1856年)

多くの詩人・芸術家がすみれにインスパイアされ、作品を残していますが、なかでもゲーテ(1749ー1832年)が書いた詩「すみれ(Das Veilchen)」が、モーツァルトによって歌曲になったのは有名なお話です。

シェイクスピアのハムレットに登場するオフィーリアも、作中の役割は、すみれの化身のようだと感じます。
ミレーの絵画に描かれたオフィーリア、すみれの首飾りが印象に残ります。

ウィキペディア-ハムレット
オフィーリア
 ジョン・エヴァレット・ミレー画(1852年・テート・ギャラリー収蔵)


ヨーロッパで伝統的に愛されてきた千花模様/ミルフルール(麦わら海賊団ロビンの技ではありません)は、小さな植物が一面にちりばめられた模様のことで、動物や鳥たちが描かれるものもあります。

草花は薬草や宗教的な人物(キリストや聖母マリアなど)を象徴するものが選ばれ、貞節や忠信、誠実さを象徴するとして、すみれも登場します。

千花模様に出合ったのは社会デビューを果たし右往左往している若かりし頃、ギフトカードメーカー勤務時代に知りました。伝統的なデザインの代表作として見せてもらったのがユニコーンの絵画でした。

ウィキペディア-千花模様(ミルフルール)
1495年から1505年ごろ、ユニコーンを描いたタペストリー

じっさいこの絵ではなかったと思いますが雰囲気が似ていたのでお借りしました。

当時お世話になったギフトカードメーカは、ウィリアム・モリスのカードに注力していましたので、中世ヨーロッパの文化や芸術などに親しむことが多くなりました。
「貴婦人と一角獣」のタペストリーをはじめて知ったのもそのころで、当時はネット社会ではなかったので、なにかの本で見たように覚えています。

ウィキペディア-貴婦人と一角獣
「我が唯一つの望みに」(À mon seul désir)

名称こそ「貴婦人と一角獣」ではあるが、6つのタペストリーにはいずれも中央の貴婦人と共に、向かって右側にユニコーン(一角獣)、左側にライオンが描かれており、さらに猿が描かれているものもある。

背景は千花模様(ミル・フルール、複雑な花や植物が一面にあしらわれた模様)が描かれ、赤い地に草花やウサギ・鳥などの小動物が一面に広がって小宇宙を形作っており、ミル・フルールによるタペストリーの代表的な作例となっている。


「貴婦人と一角獣」のタペストリーは6枚セットで、1ー5枚目までは五感の味覚、聴覚、視覚、嗅覚、触覚を表していると分析されています。
6番目に「我が唯一つの望み」というタイトルがつけられ、解釈もいろいろです。

個人的には神々や大天使たちによる創造降下によって分化された、地球フィールドの生命種が勢ぞろいしたデザインなのでは、と妄想しています。
小さなすみれから大型動物、人間まで、それぞれのエリアから選抜された代表選手がせいぞろいしているんじゃないのかと、感慨深く眺めています。

背景一面にはミルフルール。
すみれをはじめとした「小さきものたち」は、土中から大気中に張りめぐらされた天地の網・エーテル体を表しているようにも見えます。

ユニコーン(や、ドラゴンやペガサスなど)の領域に棲む生命種は、現代脳で認識することはできなくなってしまいましたが、ひとつのタペストリーのなかに描かれた生命種は、ひとつとして欠けることなく、すべてがせいぞろいしてはじめて、天地ヒエラルキーも完成するというものです。

「存在するか、しないか、それが問題だ」
ではなく
「存在するもののなかから、なにを見て、味わい、聞いて、触れて、香りを嗅ぐのか」
ということがたいせつです。

すみれは「天の匂い」をふりまいて、地球フィールドに広がったすべての生命種とのつながりに、思いを馳せるきっかけをつくっているのかもしれません。

☆☆☆

お読みくださりありがとうございました。
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