【ハーブ天然ものがたり】グレープフルーツ
香りのファースト・インプレッション
アロマテラピーを学びはじめたころ、面白くて毎日のように取り組んでいたのは香りにあらためて「出会う」ことです。
いつの間にか近くにいて、そばにいるのがあたりまえになっている香りは、なかなかその香りの本領を、きちんと受け取ることができません。
感覚や身体、感情に、どれほどの恩寵があったとしても、気がつかないことが多いです。
グレープフルーツの香りは、オレンジやレモンと並んで知らない人はいないというほど生活に入り込んでいますから、柑橘類の香りならどれも一緒だろうと思う方にこそ、ぜひ一度香りの印象を改めて探り、遊んでみるのも楽しかろうと思います。
香りの印象は十人十色、自分とその香りが、どのような創造を生み出すのか、ひとつづつ確かめていくと、精油とのつきあい方に面白さや豊かさがプラスされて、香りを選ぶのがますます楽しくなること請け合いです。
*本日は過去記事リライト部分が含まれています。
当社商品Shield72 °のオリジナル・アロマブレンド。
72°の香りとして抜擢されたグレープフルーツのものがたりです。
Happy Go Lucky
初めてグレープフルーツの香りに「出会った」ときすぐに浮かんできたのはマービン・ゲイの歌声。
甘さのなかに少し混じっている苦み。
柑橘特有の爽やかさのなかに、一筋縄ではいかない複雑なナニモノカが訴えかけてくる印象でした。
ベトナム戦争・貧困などの社会問題をとりあげた歌詞で、赤裸々に苦悩を表現しているわりには、讃歌のような柔らかいメロディで一世を風靡したWhat's Going onや、Mercy Mercy Meの方が、当時はよく聴いていたものですが、なぜか浮かんでくるのは Happy Go Lucky の明るい、けれど切なくてモヤッと感が漂う歌声。
「爽やか、謎めいてる、多層的、いろいろ複雑な感じ、なのに楽観的、ふしぎ、ハッピーゴーラッキー」 当時のノートにはそんな走り書きが残っていました。
楽園に暗い話はつきもの
グレープフルーツの出自は謎に包まれており、亜熱帯地方原産、熱帯アジア原産、カリブ海バルバドス島原産など、いくつも候補があり、さらにオレンジの雑種、オレンジスウィートとポメロの自然交配種、オレンジとシャドックフルーツの交配種など、記録は様々です。
シャドックフルーツは文旦のことらしいのですが、記録にはあまり残されていない人物、謎の船長シャードックが西インド諸島に種を持ち込み栽培が始まったことから呼称されているご当地名です。
18世紀にカリブ海をうろつくイギリス人の船長とはいったい...?
そしてなぜ文旦の種を持っていたのでしょう?
ともあれグレープフルーツは、ある時突然、楽園と呼ぶにふさわしい気候風土の南方エリアに現れ、この世界にいつの間にか参入していた、元を特定できない果実というわけです。
キャプテン・シャードックがグレープフルーツの元種を持ち込んだとされるバルバドス島は、サンゴ礁でできている小さな島国なので、まさに楽園のような気候風土かと思います。
1500年ころ、先住民はすべてスペイン人によって別の島に、奴隷として連れ去られました。
そのせいで一時期無人島化していたという記録も残っています。
イギリス、オランダ、スペイン入り乱れての統治の歴史、最後にはアフリカから多くの労働者が連れてこられ、サトウキビ農園での強制労働がはじまります。
楽園とみれば独占したがる強者どもは、いつも歴史に暗い影を落としますが、楽園生まれ、楽園育ちの植物は、秘すれば花の如く清濁あわせ呑み、人類のドタバタ劇を見守っている印象があります。
グレープフルーツの精油が商業的に生産されたのは1930年ころのフロリダで、食品、化粧品、香水の成分として幅広く使用されてきました。
果物のなかではレモンよりビタミンCの含有量が多いことはあまり知られていません。
学名はCitrus paradisi(シトラス パラディシ)、楽園・パラダイスの名をもつ果物です。
ストレス食いを慰める
潜在化した傷つきやすい自分をインナーチャイルドと呼び、古傷を根本的に癒すセラピーが一時期はやりました。
批判や屈辱の種類というのは様々あり、どういう状況で傷つくかも十人十色、それは幼少期体験に根差しているともいわれます。
大人になればストレス発散法はいくらか選択肢ありますが、子供のころは食べ物一択になる傾向が強いので、幼少期の傷=食べることで自分を慰めた、つまりある種のストレスは食べ物で慰めようという無意識行動に直結し、パブロフ犬状態にはまっている可能性は、誰のなかにもあることかもしれません。
以前香りのファースト・インプレッションが、インナーチャイルドを発見する手掛かりになったという人のお話を聞いたことがあります。
食べている最中は無意識行動ゆえに気がつかないけれど、いつも食べ終わってから、しまったーと罪悪感にかられていました。
香りのファースト・インプレッションをはじめるようになって、自分のしている行動や、話していること、感じていることを、同時進行で見守るもう一人の自分をイメージできるようになり、ある日ストレス食いしているまっさい中に、自分見守り視点のスイッチを入れよう、と意識的になれたそうです。
すると、過去の忘れていた記憶が鮮烈によみがえり、「えっ?そんなことで自分は傷ついていたの?」と、一人で泣き笑いしてしまったというのです。
植物界のタイムトラベラー?
グレープフルーツの香りは長期にわたる自己批判や自己否定、罪悪感などで重くなった心の熱を明確にすることで浄化し、爽快にする特性があるといわれています。
心の傷やトラウマと呼ばれるものは、時間に対する認識を少し拡大するだけで、勝手に癒されてしまうことが多いです。
例えば5歳の時に、おもちゃの争奪戦に負けて、両親が味方してくれなかった記憶も、その場その時、その当人にとっては大惨事です。
たった5年の時間意識では、経験値があまりにも少なすぎて、体験を統括したり、俯瞰して見ることはできません。
けれど、ぎゃん泣きした5歳の自分は50年、60年のスパンから見ると、甘酸っぱくてなつかしい思い出に変わります。
人生80年~100年といわれる現代人がカウントしているのは肉体の寿命ですが、魂や、意識体といわれるものを認識できるようになったら、寿命という概念をどのようにとらえるようになるのでしょう。
いつか、未来の地球において、わたしたちは意識体を、肉体のようにコントロールできるようになるのでしょうか。
たとえば7回転生した、7人分の人生を統括、俯瞰して見ることができるようになったら、「一生」というとらえ方もずいぶん変わるだろうことは容易に想像できます。
もしもそんなことができるようになったら、一方向にしか動かせないと思っている、過去から未来への時間軸をほいほい飛び越え、行ったり来たりして、現代地球史の暗い影をやさしく見守り、癒すことができるのかもしれません。
楽園のなかで、想像を絶する地獄絵図を見守ってきたグレープフルーツ。
鷹揚で、天真爛漫な心をとりもどす、爽快な香りをふりまきながらも、人類の暗い一面を知りつくしている果物。
出自が謎で、いつの間にか人間社会におりました、というプレゼンスしかり、じつは時をかける果物で、凝ったエネルギーを癒すために、必要な時代にぱっと登場して、暗い熱を冷ます役割を担っているのかしら、なんて想像してしまいます。
グレープフルーツの香りには、どんな感情の熱も発散してしまう懐の深さと、おおらかさを感じます。
それは清濁併せもつ、甘さのなかに見え隠れする、苦さ、複雑なナニモノカがあるからなんだろうと。
成分だけでいうならヌートカトンが入っているから、交感神経を優位にして食欲を抑え、脂肪燃焼作用も働かせて血行やリンパの流れを促進するので、結果毒素排泄によって内にこもった熱も冷めるだろうと、通りいっぺんの発想でかたをつけることもできます。
ストレス回避のためにからだは脂肪を味方にして、クッションのように保護してくれると考えるなら、クッションのなかに溜め込まれた凝った熱を発散する力がある、というのが、数ある柑橘類のなかでもグレープフルーツの持つ特殊技です。
それは「長い長い時間を大局でみることができれば、どんなに暗い熱も霧散霧消することを知っている」からこそできる技で、葡萄のように実るグレープフルーツならではの分身の実り方にも、秘密があるのかもしれません。
御霊を分割し、あらゆる時代、あらゆる次元に広がったわたしたちは、地球でつながりを見失い、ひとりぽっちに感じます。
でもじっさいは、ひと房のクラスターに属し、1本の樹につながっていきます。
「ほらね、思い出して」といわんばかりに房形状を披露するグレープフルーツは、ずんぐり丸くて鷹揚で天真爛漫な風に見えるけれども、人類が通ってきた地獄のような歴史をいっしょに見まもって、その業をともに背負ってくれた盟友のひとり、と感じています。
*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。
*Shield72°製品に使用されているオーガニック・グレープフルーツ精油は、正式にはグレープフルーツ果皮油と呼ばれ、賦香目的で配合しています。
☆☆☆
お読みくださりありがとうございました。
こちらにもぜひ遊びにきてください。
「ハーブのちから、自然の恵み。ローズマリーから生まれた自然派コスメ」
ナチュラル・スキンケア Shield72°公式ホームページ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?