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【ハーブ天然ものがたり】ジャスミン


リファレンスの香り


ジャスミンはモクセイ科ソケイ属の総称で、園芸種など含めるとジャスミンと名のつく植物は数百種に及びます。
アラビア語のヤスミン(yasmin 神からの贈り物)が語源といわれており、中近東やアメリカ、ヨーロッパでは女性の名に多く見られます。

ジャスミンは柑橘とお花をほどよくマリアージュしたような甘い香りが特徴で、ほのかに皮脂や体臭を思わせる、有機的温もり...のような気配を醸します。
ヒトの体温になじみやすく、体内から発せられる肉体の匂いに溶けこんでしまうような感覚です。

ごく個人的な香浴の感想としては、幾重もの透明な膜につつまれて、肉体の周囲を分厚い透明クッションでまもられるような気分になります。
それはもともと、自分の一部だったもの(と思うの)ですが、ふだんすっかり忘れていて、ジャスミン、あるいはジャスミン様の香りで、思い出せるようにセットされてる気がします。

くちなしや水仙でもご紹介しましたが、主な香り成分の酢酸ベンジルは、まるでリファレンスになっているかのように「ジャスミンのような香り」と表現されます。
ジャスミンが主で、それ以外の植物はみなジャスミンのような、となるのです。

ジャスミンの花は夜ひらくので、夜の女王と呼ばれることもありますが、精油界のキングとも呼ばれます。


ジャスミンティー


いまではコンビニなどでも気軽に買えるジャスミン茶は、もとは中国茶のひとつで、花茶(フアチャー)のひとつです。
ハーブティになるジャスミンは、モクセイ科ソケイ属、サンバック種のマツリカ(茉莉花、アラビアジャスミン)で、緑茶に花の香りを浸透させたものが一般的です。

お茶の話 「スーフィーの物語」平河出版

昔、お茶は中国にしか存在していなかった。その噂は他国に広く伝わり、人々は自分の思い込みや願望に基づいてお茶を探し出そうとした。

近国の王は使者によってお茶を授けられたが、貧しい人々もお茶を飲んでいるのを見て、中国の皇帝は別のものを「神聖な飲み物」と偽り自分たちに渡したに違いないと考えた。

遠国の哲学者は情報を集め「それは確かに存在するが、まったく新しい範疇に属する植物にちがいない」と推論した。

努力国と閉鎖国の人々は何世紀にもわたりあらゆる植物の葉を食べ、毒にあたって命を失う人々もいたが、実際にお茶の木を見出だすことはなかった。

教条国は宗教儀式としてお茶の袋を高く掲げて行進したが、それを味わおうとする者はおらず、その袋自体に魔術的な力があると信じていた。

しばらくたって、それがなにかを知らずにお茶を栽培する人たちが現れた。
手に入れた人々は平民の飲み物だと思い捨ててしまったり、逆に盲目的に神聖視して崇め奉る人も現れた。

そんなあるとき一人の賢者が現れ「味わうものは知り、味わわないものは知ることがない。神秘化して語るのをやめ客をもてなす際に黙って出すのが良い。気に入ればさらに飲みたがるし、そうでないものは茶飲みに向いていない。議論と神秘の店を閉め、体験の茶店を開くのだ」といった。

茶店が普及しはじめると、神聖な飲み物を探し求めている自称賢者が
「なんだこれは!ただの乾燥させた葉っぱではないか」
「異国の人よ、私が求めているのは神聖な飲み物なのだ。なのになぜあなたはお湯を沸かしているのだ?」
「これがほんとうにお茶だというなら証明してみせろ。だいたいこれは黄金色ではなく土色をしているではないか」といった。

時代はめぐりお茶を味わいたいと思う人すべてにお茶がいきわたるようになると、立場は逆転して、お茶のことを仰々しくもったいぶって説明する人間は馬鹿者だと思われるようになった。


オプティミスト・ハーブ


10数年前のこと、アロマニア友人のひとりがハワイで1カ月ほど農園ステイをするというので、訪ねたことがありました。
サンバック種のジャスミンが咲き誇り、レイはもちろん、ジャスミンティーや、花を植物オイルに漬け込むインフューズド・オイル、石鹸も作っていて、中庭でそれこそ浴びるようにジャスミンの香浴を楽しみました。

現地の人にお聞きしたハワイの歴史は興味深く、ジャスミン(サンバック種)のことをハワイではピカケといって、ハワイ王朝最後の王女、プリンセス・カイウラニが愛したジャスミンと孔雀(ピーコック)に由来していると聞きました。

サンバック種のジャスミンは、世界市場では主にジャスミンティーとして流通しています。
さわやかなグリーン調の香気が混じって、数あるジャスミンのなかでも水仙の香りにいちばん近いように思います。

そんな話も交えて、雪どけの水仙の香りがハワイのジャスミンに似ているなんて不思議だね、とお伝えすると、この香りは植物界のキングの香りだから、ある意味ロールモデルになっていて、地球上どこにでも出現するんじゃないか...という感想に、妙に納得してしまいました。

*水仙のお話はこちらの記事に綴っています。


ピカケの名前の由来をお聞きしたとき、ジャスミンと孔雀(ピーコック)のご縁について、まいどの妄想考察がはじまりました。
孔雀はたくさんの目を羽につけ、世界のすべてを見る力を象徴しています。
ギリシャ神話ではゼウスの正妻、女神ヘラの聖鳥です。
百の目をもつ巨人アルゴスの死後、ヘラは孔雀の羽にその目を縫いつけたという神話が残っています。

自然界ではオスの方が美しいケースは多々ありますが、孔雀に至ってはまさにそれで、美しく強い雄・キングを中心に、種の繁栄をつないできた生命種だと思います。

百の目で世界を見通し、ここに、あそこにと、キングの香りを種付けしてまわる。
そうやって洋の東西を問わず「ジャスミンのような」香りのハーブたちは、地球全体に広がっていったんではなかろうか、と。

ジャスミンと孔雀を結び、ひとつの型をつくられた(のか、女王ヘラのひな型を踏襲したのか…)、ハワイ王朝最後の王女、プリンセス・カイウラニは、ハワイ王朝最後の国王にして唯一の女王、お母様のリリウオカラニから王位継承権第1位として次代の女王(国王)となる運命を背負いながら、ハワイが欲しかった西洋国に翻弄され1899年、23歳で逝去されました。
最期の女王リリウオカラニは今も愛されている歌「アロハ・オエ」や、「女王の祈り」を作られた人でもあり、「クムリポ」(ハワイ王国の創世神話)を英訳し、ほかにも多くの著作を遺されています。

*「クムリポ」のことはロドソルスマリヌスの記事に綴っています。


花の香り、フローラル調といえばローズを筆頭に、カモミールやゼラニウムなどが代表的です。
植物学者ニコラス・カルペパー(17世紀)は、情緒や感性、愛情、女性らしさを象徴する金星や月に、これらのハーブの性質をあてはめました。

イギリスでセンセーショナルな薬草本を出版したハーバリスト、ニコラス・カルペパー。
占星学にも精通しており、星と植物の関連性、疾病についての処方を一般に開示しました。
当時ハーブの知識は民間に開示されず、聖職者と権力者のみが扱える時代でした。一般人がハーブを植えたり勝手に使用したりすると魔女狩りにあった時代です。
15世紀から18世紀の間に4万人が極刑にあったともいわれています。
いつ誰にチクられて告発されるかわからない、戦々恐々とした時代に、なんという天晴あっぱれ男。カルペパーさんは何冊もの本を出版し現代の植物学の礎をつくられました。

【ハーブ天然ものがたり】ゼラニウム


フローラル調のなかで、ジャスミンだけは木星を支配星として、楽観的、楽天的、屈託のない、気楽さを象徴するオプティミスト・ハーブと位置づけられました。

「ジャスミンは加温性があり、強心作用がある。
子宮を温め、呼吸器を温め、冷性・カタル性の体質に有効である。
神経と腱を開かせ、あたためてやわらげる」
ニコラス・カルペパー

「ジャスミンは気分を楽天的にし、度胸をつけ、高揚感をもたらす。
感情の鈍麻や、外界に対する無感動、無関心といった状態に役立つ」
ロバート・ティスランド


百の目と香気成分


精油として流通しているジャスミンは、
・コモン・ジャスミン
和名、白木香(しろもっこう)
学名、Jasminum officinale(ジャスミナム オフィキナレ)

・スパニッシュジャスミン
・ロイヤルジャスミン
和名、大花素馨(オオバナソケイ)
学名、Jasminum grandiflorum(ジャスミナム グランディフローラム)
の2種類です。

ハワイでピカケと呼ばれるジャスミンは
・茉莉花(マツリカ)
・アラビアンジャスミン
学名、Jasminum sambac(ジャスミナム サンバック)
主にジャスミンティーの原料になり、精油もわずかですが販売されているようです。

日本で入手しやすいジャスミン精油は、エジプト産が多いかな、と思います。
花摘みは、香りがのこるように、やさしく手作業でしなければならず、夜開花するジャスミンは、早朝に花摘みを済ませなければなりません。

ローズと同じで、精油を採油するには大量の花が必要なので、お花の手摘み作業を思うと、高価なこともうなづけます。
ジャスミンの精油を使うとき、この精油のスピリットはどんな人が摘んでくれたのかな...と、神妙な気分になることがあります。
どんな商品もそうですが、なにかが製品化される過程は、知るほどに尊さが増して、たいせつに使わせてもらおう、というキモチが自然と高まります。

アロマテラピーでは「匂いを感じる」というのは、分子である揮発性物質が、鼻の奥にある嗅細胞を刺激する感覚機能(嗅覚)であると習います。
ただ、嗅覚の機能については、まだ完全には解明されていないのが現実です。

日々学術的に研究されている方々をどうこう言うつもりは全くありませんし、それも尊いお仕事のひとつと思っていますが、個人的には化学的なスタンスで、ヒトのからだやハーブのこと、つまりスピリットを解明するのは無理なんじゃなかろうか、と思っています。

たとえば...
・ジャスミンの特徴成分はジャスモン酸メチルという化合物
・二重結合の位置により異性体になる、cis-ジャスモン:trans-ジャスモン
・cis-ジャスモンはいわゆるジャスミン香気
・trans-ジャスモンは脂肪臭があり、香料としての利用価値は少ない

というように、成分を切り刻み、エビデンスを積みあげて、学術的に説明する方向に進むなかで「花摘みをした人たちの職場環境や、気分や、お国の情勢などで、エネルギーの質が変化して香気が微妙に変わる可能性」はあるのだろうか、なんて考えは大馬鹿者の愚問にしかなりません。

「香り」「perfume パヒューム」の語源はラテン語の per‐fumum(煙を通して、煙によって)に由来しています。

香りよい香木、香脂を燃やして、煙を天に昇らせ、神に捧げる行為は、世界中で古くから行われてきました。

ハーブの香気成分は、現代人には「見えなくなってしまった煙」のようなもので、同じように「忘れてしまったエーテル成分のからだ」に作用し、(ついでに)肉体の不調も癒してしまうのではないかしらん。

百の目をもつアルゴスが死んだ(別の次元へ去ってしまった)と同時に、「見る力」を失った人類は、太陽や惑星、四大精霊たちとのエーテル的なつながりも「見えない煙」になってしまいました。

肉体周辺を包むやさしい気配を思い出させてくれるジャスミンのような香りは、地球上のあちこちに繁殖して、いつでもヒトの嗅覚を刺激し、「百の目をひらいて、思い出して」と、語りかけてくれるような気がします。

☆☆☆

お読みくださりありがとうございました。
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