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【ハーブ天然ものがたり】月桂樹/ベイ、ローレル


アポロン神の聖樹


古代ギリシャ、ローマ時代からアポロンの聖樹として神聖視されてきた月桂樹は、地中海沿岸地方原産のクスノキ科常緑樹で乾燥ハーブをローリエ、ベイリーフと呼びます。

ギリシャ神話12柱神アポロンは、文武に秀でた理性的イケメンキャラとして画一的なイメージが定着していますが、ヘルメス神にだまされたり嵌められたりと、わりかしヌケサク的な神話も多いです。
最高神ゼウスより下位存在であることを刷り込まなければならなかった、古く信仰のあつい神様をアポロンというキャラクターに習合、普及してきたのかな、と感じています。
アポロンは凄腕の理想的青年像といった側面がパワープレイされ、太陽神ヘリオスと習合されるまでになり、太陽神アポロンの冠を戴くようになりました。

もとは小アジアに起源をもつ神格で、本来は繁茂する植物の精霊神か
ら転じて牧畜を司る神となったという説や、北方の遊牧民に起源を求める説など、アポローンの出自については諸説あり、複数の神格の習合を経て成立したものとも考えられている。

ウィキペディア-アポロン

ほんらいは植物の精霊神であり、牧畜をつかさどる神であったことや、北方遊牧民に起源をもつ可能性など鑑みると、アポロンという神様キャラに設定される以前は、広域なエリアで信仰されていた土着神で、原初両性存在の牧神パンが創造分化した神様のひとりなのかもしれない、と本日も妄想考察を綴らせて頂きます。

牧神パンはプロートゴノス(最初に生まれた者)あるいはパネース(顕現する者)とみなされ、原初、卵より生まれた両性の神で、大地の神ガイアと天空神ウラノスを生み出した存在、とウィキペディアに説明があります。

占星学の山羊座の図柄をあらわすエピソードのひとつに、パンが巨人怪物ティポンに襲われたとき、上半身は山羊、下半身は魚の姿になって逃げた神話があります。海底から山の頂上まで、地球世界ならどこでも行けることを象徴する姿です。
パンはギリシャ語で「全て」を意味する接頭語 Pan(汎、すべて、あまねく)の語源でもあります。

牧神パンは下半身ヤギの妖精、半獣サテュロスとも同一視され、魁神ディオニュソスのお供として切り離せないイメージがあります。

ディオニュソスの聖獣は
豹、虎、牡の山羊、牡の牛、牡の鹿、蛇、イルカ、狐、ロバ
と幅広く、牧神・牧羊神でおなじみの半獣神・サテュロスをお供につれているアートや絵画を目にすることも多いと思います。

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アポロンとディオニュソスは
「形式と秩序への衝動」:「陶酔と創造への衝動」のように
ベクトルは真反対なのにいつでも互いを補完するような、対なる概念として活用されてきました。

カタチになること、個体化することなど、造形芸術の原理はアポロン的なもので、逆に個体化したものを陶酔によって永遠のなかに解体する音楽芸術の原理はディオニュソス的なもの、その対なる概念が流転することで、ドラマティックな物語や芸術が生み出されていくよね、と。

アポロンとディオニュソスは、同じ古い神から分化して創造された右の柱と左の柱で、アポロンは山羊座象徴としての枠をまもる、形式と秩序を重んじる理性的な神様キャラクターとなり、ディオニュソスは陶酔しながら山羊座の枠を融解し、隙あらばはみ出そうとする神様キャラクターに設定されたのではないかな、と。

さらには男性性と女性性をより明確に分化する創造行為へと発展し、女神アルテミが双子の姉妹に設定されたのではないかと考えています。

アジアとヨーロッパをつなぐアナトリア半島(現在のトルコ・アジア側)は、先史時代からたくさんの文明が生まれ、神殿遺跡や最古の定住遺跡など古いにしえの遺物がたくさん発見されている地です。
その地で栄えたオスマン帝国、古代ギリシャ、ローマ帝国、マケドニア王国など、有名どころの強国文明は教科書にも載っていますが、BC12世紀からBC7世紀ころに栄えたといわれるフリュギア王国には、地母神キュベレという有名な神様がいました。
名前は「知識の保持者」という意味だそうですが、フリュギア語では「Kubabaクババ」と呼ばれていたそうです。

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アポロンは詩神ムーサ(ミューズ)の主神であり、詩人オルフェウスの父であり、医術の神でもあり、医神アスクレピオスの父でもあります。
双子の姉妹神アルテミスとともに「遠矢射る」疫病の神としても名高く、さらにボクシングを創始した神としても知られおり、長いあいだ恋人にしたい理想の男性像として、上位ランキングに華を添えてくれた神様キャラクターだったように思います。

神話も神様キャラクターも、受け止め方や求める象徴がジワジワ変化している昨今、たくさんの世界線が交錯する足場を見据えて、二重三重の世界を同時に生きるという選択肢もあるわけで、山羊座社会という枠をまもるか壊すかだけじゃなく、次のサインである水瓶座的な社会はどんな風だろう、その社会を底支えする神話や神様キャラクターはどんなだろうと想像するのも、こんな時代だからこそ楽しめる地上特権かもしれません。


妖精ダフネの化身物語


予言、詩歌、音楽と医療の神アポロンにまつわる化身物語はいくつかありますが、なかでも有名なのが妖精ダフネとの物語です。

エロース神(現代ではキューピッドの姿かたちで伝えられています)が、アポロンには恋に落ちる黄金の矢を、妖精ダフネには拒絶する鉛の矢を放ち、アポロンの求愛から逃げつづけるダフネは最終的に月桂樹に変身したというお話です。

それから月桂樹はアポロンの聖樹となり、葉で編んだ冠は文学や芸術、アスリートや軍人など、すぐれた才をもつ人へ授ける、名誉ある月桂冠となりました。

ローレル、ベイリーフ

植物は地上と天界をつなぐエーテル体の象徴と考えるなら、ダフネといっしょに地上世界にきざはしをかけて、アポロン神専用の地上降下用お座布団になったのが月桂樹(ベイ・ローレル)なのだろうと考えています。

可愛らしいキューピッドのイメージが定着したエロースは、実は牧神パンの別名でもあり、「(牧神パンは)原初に卵より生まれた両性の神で、原初神エロースの別名をもち、みずからの娘ニュクス(夜)とのあいだに初原の神々、すなわち大地(ガイア)と天(ウーラノス)を生み出した存在である」とウィキに記載されています。

キューピッドになったエロースも、半獣神となったパンも、ガイアという生命惑星と天空である大気、つまり土元素界から火元素界のグラデーションをつくりだした生みの親なのであれば、現在普及している神様序列もずいぶんと印象が変わってきます。


ウィッチクラフト


古代ローマ時代、ユリウス・カエサルは自宅の門を月桂樹で飾ったといわれています。
人々は新年を迎えると、幸運に満ちた一年を祈願して友人と月桂樹を贈りあいました。
大切なお祭りがあると、教会の床には月桂樹の葉が敷きつめられたといいます。

中世ヨーロッパでは月桂樹の小枝を教会に飾ると、妖精や小人をお招きできると信じられていました。
魔女がつかう空飛ぶほうきは月桂樹でつくられる、という説もありました。
(現在では一般的にはエニシダ、ハリー・ポッターではマホガニーだそうです)

現代にも伝わるウィッチクラフトには、赤ちゃんの抜けた歯をサクランボの種といっしょに月桂樹の葉にくるんで身につけると、周囲の人々の言動がやさしく、あたたかいものに変わるというおまじないがあります。
枕の下に月桂樹の葉を入れて眠ると、未来を予言できるとも。

月桂樹のハーブ・バスは筋肉の疲れをいやし、血行を良くしますが、古代ローマ時代にも同じ用法で使用されていました。

香辛料としても古くから利用され、葉を乾燥したローレルは現代社会ではたいへんポピュラーなキッチン・マスト・ハーブになりました。

月桂樹にまつわるさまざまな用法のうち、ヨーロッパを中心に、とりわけ昔の人々が強く信じていたのは、雷や稲妻から身をまもってくれるということです。
「遠矢射るアポロン」として、地上に向けて放つ矢で人間を虐殺する能力をもつとされるアポロン神ですが、聖樹である月桂樹には矢を放たないのではないかな、と。
鋭い矢の一撃を雷と考えるなら、月桂樹はアポロン神のサンクチュアリとして、雷神さまからも一目おかれているのかもしれません。


もうひとつの化身物語


ヒヤシンスは和名、風信子、飛信子と表記し、原産は地中海東部沿岸(トルコ、シリア、レバノン、イスラエル)、イラン、トルクメニスタンとされています。
オスマン帝国時代に園芸種として栽培がはじまったそうです。

ヒヤシンス photolibrary

ギリシャ神話では、ヒュアキントスという青年と恋仲だったアポロンが、ふたりで円盤投げをして遊んでいるところに、西風の神ゼピュロスが突風を起こし、アポロンが投げた円盤がヒュアキントスの額を直撃して死んでしまいます。
ヒヤシンスはこの時に流れた血から生まれた植物、というお話です。

西風ゼピュロスはアフロディーテとの協働でアネモネを創造しましたが、アポロンにもいっちょかみしているんですね。


アポロンは、もとは小アジア(現在のトルコ、アジア側)で信仰されていた神だったとか、植物の精霊神から牧羊神になったとか、北方の遊牧民信仰神だったとか、諸説あって出自が複雑ですが、広域にわたって土着の神様を習合し、信仰心によって実利的に人々を治めるという手法を成功させたシンボルでもあると思います。そのあたり、いかにも山羊座らしいスキームだなぁと。

アポロン神の聖獣は狼、蛇、鹿、
聖鳥は白鳥、からす雄鶏おんどり、鷹、禿鷹、
昆虫では蝉、
聖樹は月桂樹のほかに、オリーブ、棕櫚シュロ御柳ぎょりゅう(タマリスク)があります。

イルカ(ギリシャ語でデルピス)の姿に変身したという神話からデルピニオスとも呼ばれ、かの有名な神託の地「デルポイ」という地名はここから来ているといわれています。

アポロン神がいろいろな土地神様の習合と考えるなら、天地にかける梯子もあちこちに必要なわけで、対なる半人半神のディオニュソスとともに聖獣や聖樹をとおして、キュッとひきしめて形を明確にしたり、ふわっとゆるめて形をなくしたりしながら、我が子供たちであるガイアとウラノスの様子を、見守りつづけているのかもしれません。

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