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【ハーブ天然ものがたり】よもぎ


よく燃える草


おやつを買うなら草餅か、よもぎ団子、わが家の定番ラインです。
よもぎはおもち以外にも、よもぎ茶、新芽の天ぷら、おひたしにお吸い物、炒め物など、つかい勝手のよい食材にもなるハーブ。
もちろん食べるだけではありません、もぐさ、よもぎ蒸し、よもぎ風呂と、日本人にとって身近なハーブのひとつです。

よもぎの生葉は止血作用があるとして民間療法に使用されてきました。
葉を乾燥させたよもぎ茶は健胃作用があり、下痢や貧血によいといわれています。
よもぎの香り成分は血行を良くし、発汗作用や解熱作用があり、お風呂に入れると腰痛、肩こりを緩和します。
止血や下痢止めに役立つのはタンニンの収れん作用によると思いますが、ほかにも月経痛や生理不順にもよいとされ、女性の健康を守る、ハーブの女王と呼ばれています。

名前の由来には、勝手にどんどん繁殖して四方によく広がる四方草よもぎ
春によく萌える草だから善萌草よもぎ
葉を覆う産毛うぶげがよく燃えるので善燃草よもぎ
などの説があります。

よもぎは中央アジア原産といわれていますが、キク科ヨモギ属は根づいた環境に適応し、姿かたち、香気成分、薬効となる成分をちょっとづつ変えてしまうので、エリアごとにたくさんの品種があります。日本国内ではカズサヨモギ、オオヨモギ、ニシヨモギ、カワラヨモギなどが代表的です。

一般的には、春に若芽を摘んで餅に入れることからモチグサ(餅草)と呼ぶ地域もあります。
初春の若芽は特にそうですが、銀白色の産毛にもっさりとおおわれており、細かな白い毛は、ヨモギが乾燥地帯でも生きてゆけるよう、毛にはロウが含まれ貴重な水分を逃がさない仕組みになっています。
もともとは、色や香りを楽しむというより、毛が粘りをだすのに向いているという理由で、餅に混ぜられるようになったそうです。
お灸に使うもぐさは、葉の裏側にある綿毛を採取したもので、ロウ成分効果によって時間をかけてゆっくり燃えることができるというわけです。

燃えるつながりで、百人一首に燃えるような恋の炎を、よもぎにかけて詠んだ歌があります。

「かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしもしらじな 燃ゆる思ひを」
私の燃えるような思いは、まるで伊吹山のさしも草が燃えるよう
それほどの想いを、あなたは知る由もないでしょうけれど

さしも(それほどにも)、さしも草(よもぎ)で、韻を踏んでるのがカッコイイですw


女神アルテミスの名をもつハーブ


よもぎの学名 Artemisia 属は、ギリシャ神話の女神アルテミスに由来しています。
女性の健康を守護するギリシャ神話12柱神のひとり、アルテミスの名をもつことも、「ハーブの女王」という呼称の背景にあるのだと思います。

(女神アルテミスは)オリュンポス十二神の一柱とされるが、本来のヘレーネス(古代ギリシア人)固有の神ではない。その名は古典ギリシア語を語源としていないと考えるのが妥当である。アルテミスは、ギリシアの先住民族の信仰を古代ギリシア人が取り入れたものと、現在の研究では考えられている。

ウィキペディア-アルテミス

過去記事オリーブのものがたりで所感を綴った女神アテネ同様、その土地に根づく古い神を継承しつつ、時代にそって色々な女神と習合されてきたアルテミス。
ギリシャ、クレタ島は言わずもがなですが、現トルコのアジア側からエーゲ海沿いの古代都市エフェソス(現在のトルコ西部)を中心に、あつく信仰されてきた女神で、その人気の高さは世界の七不思議、アルテミス神殿にまつわるさまざまな記録からも窺い知ることができます。

アジアとヨーロッパをつなぐアナトリア半島(現在のトルコ・アジア側)は、先史時代からたくさんの文明が生まれ、神殿遺跡や最古の定住遺跡などいにしえの遺物がたくさん発見されている地です。
その地で栄えたオスマン帝国、古代ギリシャ、ローマ帝国、マケドニア王国など、有名どころの強国文明は教科書にも載っていますが、BC12世紀からBC7世紀ころに栄えたといわれるフリュギア王国には、地母神キュベレという有名な神様がいました。
名前は「知識の保持者」という意味だそうですが、フリュギア語では「Kubabaクババ」と呼ばれていたそうです。

有名な女神キュベレは、元来フリュギアの山岳地帯で「山の母」(大地母神)として信仰されていた。 ウィキペディアーフリュギア

キュベレ神を継承したアルテミスは、もともと山の神で、獣たちを統べる神だったと伝えられていますが、のちに狩猟と貞潔の女神とされ、ギリシャ神話のセレネと習合、月の女神という役職が増えて、つぎに闇の女神ヘカテと同一視され、三通りに姿を変える女神となります。

もののけ姫にもありましたが、古い神を殺すことに使命を帯びているエボシ御前やジゴ坊のように、古代ギリシャからはじまった人間サイコー肉体美サイコーを追求した信仰は、現代人の集合意識をかたち作ってきた世界3大宗教を中心に、獣を統べる神である山の神を、獣を殺す狩猟の女神にして、信仰の中心軸を変化させたかったのかな、と思います。

アルテミスの出自はゼウスと豊穣の女神デメテル、あるいは冥府の女王ペルセポネの娘とされたり、魁神ディオニュソスと女神イシスとの間に生まれた娘、なんていう説もありますから、これはもう魔女の祖であることはまちがいないんでないかい、と思います。
魔女という概念もそうですが、とかく古い神々を融合してきた神様キャラクターには、マヌケなエピソードがもりこまれて、権威を失墜させる意図が見え隠れします。

アルテミスの場合、①トロイア戦争で負けた時ゼウスに泣きついた、②勢力をもたない一匹オオカミ的な女神、③ゼウスの正妻ヘラに殴られたとき小娘のように泣きながら逃げた、などのエピソードがあります。

アルテミスが融合したキュベレ神の前身は、両性具有の神アグディスティスで、ギリシャ神話では大地母神レアと習合されます。
女神レアはゼウスの母なので、アルテミスは神々の王の母の性質を受け継いだというわけです。
古代から多くの人々に畏れられ、崇められ、愛された女神であるほど、その信仰を貶める作戦は強固に進行しなければならず、薄ーくハムをスライスするように大地母神の威厳は削がれてきたのだろうと思います。


西洋ヨモギ、マグワートとワームウッド


ワームウッドは和名でいうとニガヨモギのことで、古くから健胃薬、また虫よけとして用いられてきた記述が残っています。
さらにニガヨモギといえばかの有名な緑の魔酒・アブサンです。

元々はスイスのヴェルト・トラ・ヴェルで作られていたニガヨモギを原料とした薬を医師ピエール・オーディナーレが蒸留を応用し独自の処方を発案、彼はその製法を1797年にアンリ・ルイ・ペルノーに売却。ペルノーが商品化した。特に、19世紀フランスの芸術家たちによって愛飲され、作品の題材とされた。安価なアルコールだったために多数の中毒者・犯罪者を出したことでも知られる。アブサン中毒で身を滅ぼした有名人としては、詩人ポール・ヴェルレーヌや画家アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、フィンセント・ファン・ゴッホがいる。

ウィキペディアーアブサン

ニガヨモギ&アニス&ウイキョウという、火元素と土元素を苛烈に交ぜ合わせたようなハーブを主役にしていることや、アルコール度数が70%前後と大変高いので、そのまま飲んでいた昔の人々はそうとうの呑み助だったんだろうと思います。
アブサンの流行は、時代背景もあると思いますが香気成分のツヨンで、超絶ハイになるのがくせになったのかもしれません。
居酒屋で毎夜、自作の詩を披露し互いの情熱エネルギーをやりとりしていた、かの時代の芸術家にとっては、身の内にたぎる情熱の炎が熱すぎて、アブサンくらいの刺激じゃないと、帳尻あわなかったのかもしれません。

後年飲みやすくしようと流行したスタイル、角砂糖にアブサン垂らして燃やす的な飲み方は映画でよく見る光景ですが、ほんとうに火をつけてしまうとハーブの香りが半減して、もったいなくない?と勝手に思ったりしています。
白ワインにニガヨモギなどを浸けた、チンザノ・ベルモットのほうが、香りを楽しめそうだなぁと。


マグワートはオウシュウヨモギ。
北欧神話が色濃くのこる、10世紀頃のイギリスの医学書に「九つの薬草の呪文」という治療方法が記されています。
そのひとつに Mucgwyrt という記載があり、これはマグワートだろうと推測されています。
「神がもたらした第1の薬草、もっとも古い薬草」という呪文つきです。

9つの聖なる薬草は、北欧神話のオーディン(ヴォータン)が、蛇的な魔物を打ち払ったときに9つに分かれて、それぞれに薬草の加護をもたらしたという神話がもとになっています。
もとは1なる蛇だったものを9つに分離したとなれば、オーディンの創造降下の御業と考えられますから、よもぎはオーディン神へのきざはしになるハーブでもあるのかなぁ、と。

アダムとイブがエデンの園から追い出されたとき、知恵を吹き込んだ蛇もエデンの園を出てゆきますが、ヨモギはそのとき蛇の這うあとに生えてきた植物という伝説もあります。
グリム童話でヘンゼルとグレーテルが道しるべに落とした白い石やパンのカケラのように、よもぎはエデンの園と地上世界をむすぶしるしなのかもしれません。

よもぎは中世ヨーロッパでは魔除けのハーブとして、また旅行者の疲労回に使われていました。ローマの兵士たちは、マグワートをサンダルに入れて疲労回復したとも。

サンダル作戦を知ってから、育ちすぎたハーブを洗濯ネットに入れて、足首の下において眠るというのを時々やっています。
控えめにいって、かなりよきです。

☆☆☆

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