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【ハーブ天然ものがたり】柿


日本の土地神様


柿の学名はDiospyros kaki
Diospyros(ディオスピロス)はギリシャ語の Dios(神)+ pyros(火、または穀物)が語源で、神の食べ物、あるいは神が与えし食べ物、という意味になります。

日本では縄文・弥生時代の遺跡から柿の種が見つかっており、一般的には渋柿が中国から流入してきたのがはじまりといわれています。
平安時代の法典「延喜式」(927年)に、干し柿・熟柿が祭礼時の供物だったと記され、奈良時代には日本各地で栽培されるようになります。
当時は渋柿しか実らなかったので熟柿や干し柿が主流だったそうです。
それが鎌倉時代にはいってから、突然変異で甘柿が誕生したといわれています。

日本にやってきた渋柿たちは、この風土なら渋みを感じるタンニンを点々にまとめて、実を全体甘くしたほうが鳥や動物たちに食べられるので広がりやすい、と思ったのでしょうか。
それとも日本の土地神様のなせるワザでしょうか。
甘柿は日本原産の果物とされています。

柿の葉もお茶として人気が高いですが、タンニンはもちろん、ビタミンCやルチンなど、抗酸化作用や血管を元気にする栄養価が高く、殺菌作用も高いので柿の葉寿司などの郷土料理も生まれました。

笹の葉、ホオノキ、柏の葉とならんで、冷蔵庫のない時代にはキッチンマスト・ハーブだったことは言うまでもありません。
柿の葉茶は胃腸にやさしくビタミンCが豊富なので、ファースティングをするときには、たくさん飲めるお茶として重宝しています。

北陸を旅した時、柿の若葉の天ぷらをいただいて、味も香りも強く印象にのこりました。
子ども時代を過ごした北海道では味わえない文化だったというのもありますし、柿の木を本州ではじめて見た時の感動もひとしおでした。
ぼうや~、よいこだ、ねんねしな♪  のメロディが浮かんできました。

柿の精霊とヒエラルキー


柿の民話は日本各地にあり、古人の生活に深く根づいていたことがうかがえます。

猿蟹合戦
鶴の恩返しのつる柿
辛子売りと柿売りの勉強になるお話
頭から柿の木が生えてくるお話

人々の生活のなかから生まれて民話となったお話は、道徳や教養を子供に伝えていく技が光る、ヒトの知恵が見え隠れするお話です。

柿のお話は日本古来の精霊たちが息づいている伝承ものこっており、柿坊主(入道男)が、自分の便(つまり柿なんですが)を食べさせるお話、おなじくタンタンコロリンという柿の木の妖怪も、神、あるいは精霊たちの排せつ物は人間界では滋養になる、という秘密を伝えているように思います。

人の糞尿が大地の肥やしになるように、神や精霊たちの排せつ物は雨風のなかに精妙に含まれて、果実や穀類に結実するのではないかな、と思っています。

柿本人麻呂(かきのもと の ひとまろ 660年 - 724年ごろ)は、万葉集の第1歌人と称され歌もたくさんのこされていますが、同時代の史書などに人麻呂に関する記載はなく、その生涯は謎に包まれた人物とされています。
柿から現れた神童、柿の木の精霊、という説もまことしやかに伝承されています。

日本の土地神様にとっての柿は、とくに親和性を保つことに成功した植物で、ヒト世界に深く介入できる植物界の神使しんしとして、広がってきたのかもしれません。

柿の民話に出てくる動物たちのなかで、神使しんしとされている動物たちの神社を上記ウィキから拾ってみました。

猿蟹合戦のハチ 二荒山神社
猿蟹合戦のカニ 金刀比羅宮 
猿蟹合戦のサル 日吉大社・浅間神社
つる柿のツル  諏訪大社(白蛇も)
つる柿のカラス  熊野三山・厳島神社

柿をひとり占めしたり、投げつけたりして争う動物たちのお話、サルとカニ、ツルとカラス。どちらも日本の神社の御使い、となっているのが面白いです。

柿がDios(神)+ pyros(火、または穀物)で、神の食べ物であるならば、神使しんしにとっても柿はご馳走です。
ハイヌウェレ型神話は、神の排泄物、あるいは神の分断された身体は、地上界で滋養あふれる恵みとなるシステムであることを伝えています。
それは自然的な階層構造ヒエラルキーについての示唆でもあると思います。

現代では階層構造・ヒエラルキーということばに、さまざまな反感や怒り、嫌悪感がまとわりついているので、明快に説明している著書から要約してみます。

階層構造(ヒエラルキー)は今日、非常に評判が悪いのですが、それは支配者的階層構造と自然的階層構造を混同しているからです。

自然的な階層構造は、たんに全体性の増えていく順序です。

たとえば、素粒子から原子、細胞、生物体へ、または文字から言葉、文章、段落へ。あるレベルの全体は次のレベルの全体の部分になる。

人々をひどく憤慨させているのは、支配者的な階層構造です。

自然的階層構造の内、どれかのホロンがその位置を不法行使して全体を支配しようとすると、病理的、または支配者的な階層ができます。

病理的な階層の療法は、支配を目論む傲慢なホロンを捕まえて、自然的階層へと再び溶け込ませるか、またはそれを適所に収めることにあるのです。

ホーリズム(ホリスティック)に至る唯一の道は、階層構造(ヒエラルキー)を経ることです。

ある特定のホロンがいずれかの階層構造のなかで、その位置を不法行使するとき、つまりそれが、ひとつの全体だけであろうとし、部分でもあることを望まないとき、自然的・正常な階層構造が、病理的・支配者的階層構造へと退行します。

「万物の歴史」ケン・ウィルバー

心理学の範疇を超えたアメリカを代表する哲学者の一人ケン・ウィルバーは、ホリスティックであることは階層構造に溶け込むことだといいます。
文字通りなにひとつとして、つながりを持たず存在することはできないこの宇宙のなかにあって、思考やからだ、こころ、社会、文化、もちろん霊的なことも含め、階層的につらなる全体のなかの一部であることを拒むことはできない-存在できない-と。

私たちの地球世界は、いちホロンである人間が、階層構造のつらなりにあることを忘却して存在できる、特殊な次元だと思います。
人によってはそれを「自由」と呼ぶケースもあるのかな、と。

猿蟹合戦のお猿さんは、天界から柿へ浸透したエッセンスを独り占めして、ホリスティックな階層構造を支配しようと目論む象徴と考えています。
お山の大将は、自分のお山のことしか見えません。
全体性の循環より「いまだけ、オレだけ、金だけ」に目がくらんで目詰まり起こしちゃう役まわりです。

そんな元型を引き受けているお猿さんは、きっとヒエラルキーの上位存在にインド神話の神猿ハヌマーンや、孫悟空、日本神話の道の神・旅案内の神である猿田彦命がいらっしゃって、桁外れな神力をお持ちだったことから地球次元の開拓に抜擢され、パイオニア神使しんしとして一足先に地球へやってきたのではないかと。
階層構造・ヒエラルキーをひとまわり大きく広げた功労者だったのではないかと妄想しています。

お猿さん元型パワーは超絶なので、ひとたび手に入れるとたちまち酔いしれて、お山の大将支配による目詰まりを起こしてしまう。
世界的エンタメとして広がった「指輪物語」の建てつけは、猿蟹合戦によく似ているなぁと思います。

「指輪の力」然とした柿の力を手にして、お猿さんは自分中心の支配的ヒエラルキーを夢見てしまった。
蟹とその仲間たちは力を合わせて猿に対抗します。
指輪も柿も、超絶パワーを手に入れたときに陥りやすい、普遍的なプロットを思い出すための象徴的事物なのかもしれません。

ホロンとは部分であり、全体としての性質も持ち、上下のヒエラルキーと調和し、機能する単位のこと。
全体子とも言う。
例えば、人体という全体を構成する要素(部分)である細胞も、各々全体としての構造、機能をもっており、ホロンであると言える。

ウィキペディア-ホロン



衣食住のすべてに


柿渋塗料は、天然の仕上げ保護剤としてDIYのお助けツールです。
壁、床、食器類など、防水して腐りを抑え、漆とちがってかぶれにくいので使いやすいです。
防虫効果もあり、強度が増して撥水効果もあるので、古着を柿渋染めにしてリメイクするにも便利ですし、和紙にも使われています。

柿に含まれるタンニンはたんぱく質を除去して皮を革に変化させる剤として、あるいは撥水、防腐効果を活かして和傘や、柿渋紙、漆器の下塗りなどにも使用されてきました。

甘柿にあるゴマと呼ばれる黒い点々は、タンニンを含む細胞が黒く固まったものです。
渋柿はタンニンが水に溶ける状態で全体にうすく広がっています。

渋味を感じる食べものは、口のなかのたんぱく質と結合して、収れんする感覚なので、正確には味覚というより、収れん作用によって感じる刺激、触覚に近いものといわれています。

タンニンの収れん作用は粘膜の分泌を抑えるはたらきがあるので、止瀉ししゃ作用や整腸作用があります。
だらりんとなっているところをキュッとひきしめる力です。
このためタンニンを含む植物には薬用植物として用いられるものが多いです。

お庭に柿の木1本あれば、衣食住をたすけてくれる。
柿八年とはいっても、忍耐強い日本人の精神には逆に相性よかったんではないかと思います。

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お読みくださりありがとうございました。
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